⑭
あっという間に、日曜日になってしまった。
夏も昨日引っ越してきた。
あれから、肌を重ねられずにいた。
夏と冬は、それがなくなっただけで、一気にお互いがわからなくなっていた。
「俺、行くわな」
冬は、いつもよりお洒落な服装をしている気がする。
「うん、きいつけてな」
「夏もな!ほな」
冬が出て行ってしまった。
【結がいって10分後にでるわ】
と、里山さんからワンムがきていた。
夏も、服を着替え始める。
一方、冬は…。
「徒歩でよかったんかな?」
「ええよ、別に」
さっと、手を繋がれた。
「えっと」
「あっ、アカンかったね。ごめん」
篠村さんが、離そうとする手を強く握りしめた。
「好き」
繋いだ瞬間に、そう言った。
「うん」
篠村さんは、冬の手を強く握りしめてくれた。
「篠村さん」
「今日は、秋でええよ」
「秋……」
口に出したら、涙が流れてきた。
「なに?」
「好き、俺、秋が好き」
涙がどんどん流れてくる。
「うん。期待してるんやったら、最後までしたげるよ」
篠村さんは、優しく俺の頭を撫でる。
俺は、首を横に振った。
手繋いでるだけで、嬉しい、苦しい。
「好き」
「うん」
「好き」
「うん」
「好き」
22年分の好きと涙が止まらない。
「秋、好き」
「うん」
「ホンマに好き」
「うん」
「好き」
「うん」
延々好きを言い続けても、もういい、わかったから、何て言わない篠村さんの優しさに甘えてしまう。
篠村さんと俺したい。
スッてハンカチを差し出された。
「ありがとう」
「うん」
「なあー。成瀬さん、何て呼んだらいいん?」
「冬で」
「わかった。冬。」
「はい」
「冬の人生、取り戻そうや」
そう言って、篠村さんは笑った。
タクシーを拾った。
「秋さんと何したかったん?」
その言葉に、答えられんくて篠村さんは運転手さんに行き先を告げていた。
マンションについた。
「ジュースやな!18歳やったわけやから」
マンションの下の自販機で、ジュースを買ってる。
「行こう」
「何階?」
「5階」
「ここなに?」
「マンスリーで借りたんやで!」
篠村さんは、手を引いた。
「無理や、無理」
「上書きせな、なおらんって」
エレベーターで、五階を押された。
膝が、震える。吐きそうや…
それでも、篠村さんは五階に連れてきた。
マンションの鍵を開けて、部屋に入った。
クラっとした俺を支えてくれた。
「しの」
「秋やで」
そう言って、玄関で俺を置いてスタスタと進んでいく。
不思議と吐き気が止まった。
動悸はあるけど、さっきまでの気持ちが少し和らいだ。
俺も、部屋の中に入った。
篠村さんは、ベランダに立っていた。
「こんな感じやった?」
「秋」
下を覗いてる。
「五階も悪ないかもな」
「秋」
篠村さんじゃなくて、秋に重なっていく。
「冬、どないしたん?」
「秋、死なんで」
「大丈夫やで、おいで」
「秋、いなくならんで」
「気持ちいいで、来てみたら?」
俺は、ベランダに恐る恐る出る。
「おいでや。ほら、子供とかいるやん。見て」
腕を引っ張って、引き寄せて抱き締めた。
「冬」
部屋の中にいれた。
「どないしたん?」
もう、止められんかった。
「俺、秋が好きや。抱かせて」
篠村さんは、俺を見つめる。
「痛くせんといてくれる?」
「優しくするから」
「わかった。でも、ここではね。んんっっ」
夏にワンムをする前に、キスをしていた。
「待って、冬。待って、っっ」
「秋」
「ハァ、ハァ、ハァ、んんっっ」
「好きやで」
舌をねじ込んでた。
それでも、篠村さんは受け入れてくれる。
「ちょっと待って、ちょっと待って」
もう、止まられへん。
カチャカチャとベルトに手をかける。
「待って、待って。ホンマに待って」
ガタッって、押し倒した瞬間。
我に返った。
「ごめん。篠村さん」
「いや、ええんやけど。和には、話とるから」
「何で、ここまで」
「俺も事故で好きやった人亡くしてるからわかんねん。」
篠宮さんは、涙をボロボロ流した。
そして、「冬にソックリやった人」
そう言って、待ち受け画面の写真を見せられた。
俺は、その言葉に固まっていた。




