【温度】④
家に帰宅した一輝。
リビングのテーブルの上に置かれた離婚届けをビリビリに破いた。
洗面所で、歯磨きをして、パジャマに着替える。
スマホを開いて、花香さんにメッセージを送る。
【明日、七時に。今日のbarの前で待ってます。】
不思議な程に、同じ温度だった。
ベッドを2つ買って置けばよかった。
寝室に入って、桜の隣に横になった。
「一輝、おかえり」
「ごめん、起こした?」
「ううん、トイレ行ってくる」
桜は、トイレに行った。
俺は、スマホを見つめるけど花香さんからのメッセージはなかった。
サイドテーブルに、スマホを置いた。
目を瞑る。
「なんで?能力ないのに、最後まで出来ないのよ」
「ごめん、疲れてるんだ」
「ちゃんと私の中でっていってるじゃん」
「わかった、次は頑張るから」
「今日、排卵日だって言ったよね!ただでさえ、一輝はうっすいんだから、何の為に我慢させてると思ってんのよ」
「わかってる。ごめん」
「役立たず、もう何回目よ」
「ごめん」
自分の体に自分も、ガッカリしてたんだよ。
「私、罵ったの。流産して、だから、離婚されるの仕方ない事だと思うの。一輝さんが、奥さんに言われたような事、私も彼に言ったのよ。だから、私も酷い人間だよ。」
花香さん………。
俺は、起き上がってメッセージを見る。
【わかりました。宜しくお願いします。】
それでも、傷ついてる。今は、花香さんが傷ついてるのが俺にはわかった。
【はい!おやすみなさい】
【おやすみなさい】
おやすみなさいを言い合えるだけで、救われた。
「一輝、まだ起きてた?」
カタン…。スマホを置いた。
「もう、寝るよ」
「ねー。しよう」
「えっ!いらないだろ?」
「離婚したら、しちゃ駄目なの?まだ、出してないんだから」
「いや、いいよ。寝るから」
布団に潜りこんだ、俺のに触れる桜。
触るなって言えない。
まだ、俺に愛があるのがわかってる桜は、布団に潜りこんできた。
「やめて、桜」
「いや」
それを、花香さんの旦那さんにもやったんだろ?
花香さんを傷つけたんだろ?
避妊せずにしてるんだろ?
もう、妊娠してるんじゃないのか?
俺は、目を閉じる。
「花香さん、俺が慰謝料とってあげるから」
握りしめた手は、同じ体温だった。
「一輝さん、頑張りましょうね」
涙を拭ってあげたかった。
淡いブルーの服が、よく似合っていた。
「もう、苦しむのやめましょう。お互いに…。」
「はい。勿論です」
俺は、泣いていた。
「凄いね、一輝にしたら…。まだ、出来るね」
「えっ?」
あっ、俺。
今、花香さんの事考えてたか…。
桜とは違って、声も体温も同じ場所にあった。
「凄いよ、一輝」
滑稽だな。
目を瞑ると花香さんが、出てきてしまった。
最低だな、俺…。
「最後まで、いけたね。」
「おやすみ」
「一輝」
「おやすみ」
離婚する旦那としてどうするんだよ。
何がしたいんだよ、桜
俺は、何考えてんだよ。
「一輝、冷たいね。また、凄いよ。もっかい出来るね」
「いらない」
「いや、私がいるの」
だから、何がしたいんだよ。桜
何で?そうなるんだよ、俺
「ここ、払いますよ」
「あっ!ごめんなさい」
花香さんと手が触れ合った。
心地いい体温だった。
桜みたいに熱くなくて…。
もっと、手を絡ませてみたかったかも…。
俺は、花香さんに触れた手を自分の口に入れた。
綺麗だった。
凄く綺麗だった。
桜とは、違った。
なんで?
あんな綺麗な人、手放せるんだろう?
男なら、絶対抱きたいって思うような綺麗な人だった。
「一輝、また凄いよ」
まだ、やってんのかよ
「こんなの新婚の時、いらいだね。凄いよ」
桜の事なんか、考えてなかった。
ごめん、俺は桜の浮気知った日から、少しずつ嫌いになってた。
ごめん、桜。
それで、ズルいよ。
まだ、俺の奥底に好きな気持ちあるの知ってるんだろ?
セフレにでもしようと思ってるのか?




