【欠けたピースは戻らない】⑨
25歳の冬ー
母親が二年前に亡くなった俊之は、お酒に溺れるようになっていた。
いつも、いつも、母方の親戚から父親の悪口を聞かされていた。
たまたま、見つけたbarに入った俊之。
「昌也、飲みすぎな!」
「先、帰って下さい」
「いいのか?」
「大丈夫ですから」
昌也は、3ヶ月前に母親を亡くし毎日お酒を飲んでいた。
あんなんでも、自分にとっては親だったのだ。
「じゃあ、先。帰るぞ、昌也」
「はい、お疲れ様でした」
「また、明後日な」
「はい」
昌也は、先輩に頭を下げる。
もう、頭がグラグラしてた。
ビールを飲もうとグラスに触れる。
「危ない」
グラスを落としそうになった、昌也の手を掴んだのは、俊之だった。
「すみません」
「大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
「なら、いいけど。」
「あの、お会計」
「はい」
「12000円です」
「はい」
「えっと…。」
昌也は、財布が無い事に気づいた。
「あー。っと、ちょっと待って下さい」
「二万円ですね」
俊之は、昌也のお金を払っていた。
「何で?」
「財布無くしたんでしょ?」
「違う」
財布を亡くしたのではない。
ポケットに現金だけしかいれてなかったのだ。
身元がバレないように、現金だけしかもってこなかったのだ。
「お金落としたのは、変わらないよね」
そう言って、俊之は昌也のお金を払ってくれた。
「返すから」
「えっ、ちょっと待って」
今から、注文しようとした俊之の手を引っ張って昌也は出ていく。
「お金、いつでもいいから」
「そんなの、無理」
フラフラの足取りの昌也に、俊之は引っ張られて行く。
手を上げて、タクシーを停める昌也
乗り込んで、運転手さんに行き先を告げてる。
暫く走って、マンションについた。
「ごめん」
「ああ、うん」
俊之は、2000円を払った。
タクシーを降りる。
昌也は、腕を引っ張っていく。
五階にやってきた。
昌也は、階段近くの部屋の鍵を開けてる。
ガチャ
「入って」
「お邪魔します」
俊之は、部屋に上がる。
ワンルームだった。
小さなダイニングテーブルの上に【さよなら】と書かれたメモや財布やスマホなどの貴重品類が置かれていた。
あー。この人死ぬつもりだったんだ。
俊之は、自分と同じで驚いていた。
自分は、有り金を使い終わったら死のうと思っていた。
財布に30万を入れて、街をさ迷いながらブラブラ使っていた。
さっさと使い切ればいいのに、なかなか使いきれなかった。
こんな命でも、惜しがる自分に腹を立てていた。
「14000円だよな!はい」
昌也は、ダイニングテーブルの財布からお金を取り出して俊之に渡した。
「死ぬの?」
「えっ?!」
「さよならって書いてるから」
「他人なんだし、ほっとけよ」
「どうせ、死ぬなら未開発な分野試してみたいと思わないか?」
「はっ?」
「俺、意外にいけるかもよ。どう?してみたくない?」
酒の勢いがなければ、こんな事いえなかった。
「冗談やめろよ。俺は、そんな趣味ないから…。」
昌也は、冷静になりかけてる頭で俊之の手にお金を握りしめさせる。
俊之の手首の傷がチラッと見えた。
「じゃあ、ありがとう」
昌也は、俊之を後ろから抱き締めていた。
「なに?」
「未開発の分野してもいいよ」
童貞のくせによくそんな言葉が言えたと思う昌也。
でも、お酒が入ってたから言えたんだと思う。
「いいの?」
「うん」
俊之は、昌也の方を向いてコートを脱いだ。
その下は、喪服だった。
「葬式帰り?」
「回忌だっただけ」
昌也も、コートを脱いだ。
「そっちも、喪服?」
「たまたま、お墓参り行ってただけ。三ヶ月前にあいつが死んだから。あっ、あいつは母親」
その言葉に、俊之は昌也が同じ傷を持っているのにすぐに気づいた。
「こっち来て」
昌也は、俊之をベッドに連れてくる。
男同士のやり方なんか知らなかった。
どうすればいいかわからなかった。
俊之は、昌也をベッドに押し倒した。
「どうしたらいい?」
昌也は、俊之に聞いた。
「わかんないけど、女とやるのと同じだろ?」
そう言って、俊之は昌也のネクタイを外した。




