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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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91/948

#89

それからアイスランディック·グレイは、白衣(はくい)の男に引き続きサービスを監視(かんし)するようにいうと通話(つうわ)を切る。


彼がいる場所(ばしょ)はどこかの会議室(かいぎしつ)だろうか。


真(ま)っ黒な円卓(えんたく)があり、並(なら)べられた椅子(いす)には、連絡(れんらく)を取っていた男と同じ白衣姿(すがた)の男女が無表情(むひょうじょう)で座(すわ)っている。


もちろんアイスランディックも白衣姿だ。


彼はかなりの高齢(こうれい)だが、座っている者たちの誰よりも快活(かいかつ)に動き、その口角(こうかつ)をあげていた。


その場で小さくスキップをし、鼻歌(はなうた)を口ずさみながら嬉(うれ)しそうにしている。


老人であるとは思えないほどの無邪気(むじゃき)さだ。


「ほう……ほうほう。ほうほうほう~♪」


まるで鳥綱(ちょうこう)フクロウ目(もく)フクロウ科(か)フクロウ属(ぞく)の鳥類(ちょうるい)の鳴(な)き声のようなものを口から発(はっし)し、窓(まど)から雨雲(あまぐも)に覆(おお)われた空を眺(なが)め始(はじ)めた。


そのときの彼の顔は先ほどと同じく楽しそうだ。


「ほうほう。これは年(とし)甲斐(がい)もなく心(こころ)躍(おど)ってしまうね。なあ、君たちもそうだろう?」


アイスランディックに訊(たず)ねられた椅子に座っていた男女は、何も答えずにただコクッと頷(うなづ)いている。


それを見た彼は、さらに口角(こうかく)を上げてその大きな目をギョロギョロと動かしていた。


「ルーザーリアクターが動き出したことで、それに呼応(こおう)して天空神(てんくうしん)まで干渉(かんしょう)してきたッ! 人工物(じんこうぶつ)が自我(じが)持つ刺激(しげき)に加(くわ)えて科学(かがく)では説明(せつめい)できない力(ちから)を観測(かんそく)できるとはッ! これは分析(ぶんせき)できる者を総動員(そうどういん)して観察(かんさつ)を行(おこ)わなければいけないなッ!」


興奮(こうふん)状態(じょうたい)のアイスランディックは空に向かって捲(まく)し立てる。


愛(いと)おしそうに表情を蕩(とろ)けさせ、まで恋(こい)する乙女(おとめ)にでもなってしまったかのようだ。


悲願(ひがん)であった神を超(こ)える力(ちから)。


かつて世界を滅亡(めつぼう)させようとしたコンピューターが持つエネルギー。


自分はまさにその域(いき)に近づいている。


アイスランディックはそう思うと湧(わ)き出る高揚感(こうようかん)を抑(おさ)えることなどできなかった。


バイオニクス共和国(きょうわこく)のためだとか、人々の生活がより良くなることだとかは、彼にとってどうでもいいのだ。


それはあくまで自分の目的を叶(かな)えるための表(おもて)の顔でしかない。


アイスランディックはただ科学(かがく)では解明(かいめい)できないコンピュータークロエの力に恋(こい)い焦(こ)がれている。


それはこの共和国に住む科学者たちの多くがそうであるようだ。


「それではまずは戦闘(せんとう)データから調(しら)べるとしようか。諸君(しょくん)、ラムズヘッド君から貰(もら)ったナノクローンがまだあっただろう。あれはまだ使えるかね?」


白衣姿の男女は先ほどと同じように何も言わずに頷(うなづ)く。


彼らの返事を受け取ったアイスランディックは、早速(さっそく)サービスの元(もと)へエレクトロハーモニー社製(しゃせい)の戦闘用ドローン――ナノクローンを向かわせるように告(つ)げた。

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