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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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92/948

#90

――ジャズは突然(とつぜん)サービスへと襲(おそ)いかかった警備(けいび)ドローンのことで、監視員(バックミンスター)から事情(じじょう)聴取(ちょうしゅ)を受けていた。


今彼女は現場(げんば)となった研究(けんきゅう)施設(しせつ)の庭(にわ)で、監視員(バックミンスター)の副隊長(ふくたいちょう)であるエヌエーと向き合っている。


「ではあなたは、このドローンがあの子に向かっていったっていうのね?」


他(ほか)の隊員から警備ドローンの状態(じょうたい)を確認(かくにん)してもらったエヌエーは、特(とく)に異常(いじょう)のなかったことをジャズに伝(つた)えてから訊(たず)ねた。


訊(き)かれたジャズのほうは、少し不満(ふまん)そうな顔をしている。


「はい、この警備ドローンは明(あき)らかに彼女を狙(ねら)ってました」


「うーん、でも、どこも異常がないんだよねぇ」


「あたしがいっていることを疑(うたが)うんですか?」


「別(べつ)に疑っているわけじゃないんだけど。ほら共和国(きょうわこく)にあるドローンって、購入者(こうにゅうしゃ)以外(いがい)から通信(つうしん)命令(めいれい)を受けないようにされてるから」


エヌエーのいう通(とお)り――。


バイオニクス共和国にあるドローンすべては、外部(がいぶ)からハッキングして操作(そうさ)できないように処置(しょち)されている。


もしジャズのいうことが本当なら、サービスを狙ったのは目の前にある研究施設の人間ということになるのだが。


どうもその動機(どうき)がわからない。


何故ならばサービスは、この研究施設は何の関係(かんけい)もないのだから。


彼女がこの施設のテストチルドレンでないことは、すでに知っているエヌエーには、一体何の目的があって幼女――サービスを襲ったのかが理解(りかい)できないでいた。


伝(つた)えていることが信用(しんよう)してもらえないと思ったジャズは、エヌエーのことを睨(にら)みつけていた。


自分の言葉に嘘(うそ)がないことは、施設に設置(せっち)されているの監視(かんし)カメラの映像(えいぞう)を見ればわかるはずだと。


ジャズは声を荒げてエヌエーにいう。


「でも、そのときの映像が消えちゃってるんだよね」


「そんなことがあるんですか?」


「うん、たぶんだけど。ここか他(ほか)の施設の実験(じっけん)でね。最近(さいきん)よく監視カメラの映像が一瞬(いっしゅん)だけ途切(とぎ)れちゃうことがあるんだよね」


「なッ、そんなの大問題(だいもんだい)じゃないですか!」


「とりあえず、ここはあたしに任(まか)せて、あの子を落ち着かせてあげたほうがいいと思うよ」


ジャズがエヌエーに喰(く)ってかかろうとしたとき。


サービスは何かに怯(おび)えているのか、その身を震(ふる)わせてミックスの体にしがみついていた。


ミックスはそんな彼女に、先ほど目を離(はな)してしまったことを謝(あやま)りながら、そのびしょ濡(ぬ)れの体をタオルで拭(ふ)いている。


必死(ひっし)に謝っているミックスを見たジャズは、自分の責任(せきにん)でもあると思い、自分の唇(くちびる)を噛(か)んでいた。


(違(ちが)う……。あいつだけのせいじゃない……。あたしも迂闊(うかつ)だった……。あいつなら濡れたサービスのためにタオルを借りに行くことくらいやりそうだったのに……)


握(にぎ)っていた拳(こぶし)に、さらに力(ちから)を込(こ)めるジャズ。


そんな彼女を見たエヌエーは、自分のポケットからエレクトロフォンを取り出す。


そして、ミックスとサービスのほうを見て、表情(ひょうじょう)を強張(こわば)らせているジャズの前へと差し出した。


「連絡(れんらく)先(さき)を交換(こうかん)しておこうか。何かあったらあなたにも知らせられるように」


「……いいんですか? あたしはただ学生ですよ。それなのに監視員(バックミンスター)の副隊長であるあなたが、そこまでする理由(りゆう)があるんですか?」


「イヤなら無理(むり)にとはいわないけどぉ」


「くッ、わかりました……。お願(ねが)いしますッ!」


ジャズには、どうして監視員(バックミンスター)の人間がここまでしてくれるのかが不可解(ふかかい)だったが、エヌエーの厚意(こうい)を受け取ることにした。


そして連絡先を交換し、彼女に頭(あたま)を下げたジャズは、足早(あしばや)にミックスたちの元(もと)へ向かう。


「ごめんよぉ、ホントにごめんサービス……。一人にしてごめんよぉ……」


今にも泣き出しそうにいうミックス。


そしてニコも彼と同じように、サービスの体に自分の豊(ゆた)かな毛(け)をこすりつけて謝っているようだ。


震えていたサービスだったが、そんなミックスとニコのおかげか、その顔に笑みが戻(もど)っていた。


彼らのことを慰(なぐ)めるように、だいじょうぶだよぉ、とその頭を撫(な)でている。


「もう、あんたらは……」


ジャズはそんなミックスたちを見て、強張っていた体がゆるんでいくのを感じていた。


何故警備ドローンがサービスを狙っていたのか――。


今は考えてもしょうがない。


これからは彼女から目を離さなければ良いだけだ。


「ほら雨も弱(よわ)まってきたし、今のうちに行きましょう」


サービスは、ジャズのその言葉を聞くと彼女にいきなり抱きついた。


そして、コクッと嬉(うれ)しそうに頷(うなづ)くのだった。

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