表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
PR
79/948

#78

――後日談(ごじつだん)


ブレイクの無差別(むさべつ)襲撃(しゅうげき)事件(じけん)は、バイオニクス共和国(きょうわこく)上層部(じょうそうぶ)によって、まるで何事(なにごと)もなかったかのように()まされた。


彼に(おそ)われた重軽傷者(じゅうけいしょうしゃ)当然(とうぜん)たくさんいたのだが。


ろくにニュースにもならずに、街は(ふたた)平穏(へいおん)な生活へと(もど)る。


「おかしい、ぜぇ~たいにおかしいわ。この国はいったいどうなってるのよ……」


ジャズはその事実(じじつ)を知って、共和国に住む人間のあまりの無関心(むかんしん)さに顔をしかめていた。


あれだけのことがあったというのに、この国の住民(じゅうみん)たちはどういう神経(しんけい)しているのか。


もしかして集団(しゅうだん)洗脳(せんのう)でも受けているのか。


ジャズが(あらた)めてこの国は得体(えたい)が知れないと思っていると、(よこ)を歩いているクリーンが、(こま)りながらも兄ブレイクのその後のことを話し始める。


その後、ブレイクの消息(しょうそく)は完全に途絶(とだ)え、いつも連れていた小鉄(リトル スティール)すらもクリーンの(もと)へ置いて消えてしまった。


今兄が何をしているのかはまったく見当(けんとう)がつかないが、彼女はあまり心配(しんぱい)はしていないという。


そのことを疑問(ぎもん)に思ったジャズが(たず)ねると、クリーンはニッコリと微笑(ほほえ)み返した。


「あの後、二人で(ひさ)しぶりに話したんです……」


クリーンはそれ以上(いじょう)のことは何も言わなかった。


ジャズは彼女の態度(たいど)から、(くわ)しいことを言いたくないのとは少し(ちが)うと思ったが、それ以上追求(ついきゅう)するのを止めた。


きっとクリーンが安心(あんしん)できることをブレイクは言ったのだろう。


もうあのときのように(あば)れるようなことはないはずだと、ジャズも笑みを()かべる。


二人は、これからミックスのお見舞(みまい)いに向かうところだ。


下校中(げこうちゅう)にニコも連れて行こうということになり、先ほど(りょう)へと戻ったウェディングとは、後でミックスが入院(にゅういん)している病室(びょうしつ)合流(ごうりゅう)する予定(よてい)だ。


ちなみにウェディングには、小雪(リトル スノー)小鉄(リトル スティール)の二匹もついていっている。


どうやらリトルたちはニコと会うのが楽しみだったようだ。


ジャズは事件後にすぐにでもミックスの様子(ようす)を見に行きたかったが、今回の怪我(けが)はかなり(ひど)く、彼は三日間(みっかかん)ずっと(ねむ)り続けていたらしい。


その(あいだ)のいろいろな手続きや世話(せわ)は、ミックスの担任(たんにん)教師(きょうし)であるアミノがいつも(どおり)りやってくれていたようだ。


そして、ようやく面会(めんかい)謝絶(しゃぜつ)()けたことをアミノに聞いた彼女たちは、早速(さっそく)ミックスに会いに行こうとなった。


「あっ、私としたことが。お見舞いの(しな)(わす)れていました」


「いいって、そんなこと気にするような(やつ)じゃないよ」


「そういうわけにはいきません。ちょっと店に寄ってくるので、ジャズさんは(さき)に行っていてください」


クリーンと(わか)れたジャズは、しょうがなく一人でミックスの元へ向かうことに。


それから彼女は問題なく病院(びょういん)へと到着(とうちゃく)


受付でミックスの病室の場所を()き、ちゃんと許可(きょか)()てから彼のいるところへと向かう。


「ここだな」


コンコンコンと聞いていた病室の(とびら)にノックをしたが、返事がない。


ジャズは次に声をかけてみたが、やはり返事がないので勝手(かって)に入ることにした。


「お~い、あたしよ。入るからね」


彼女が中へ入ると、ミックスはベットの上で(ねむ)っていた。


スヤスヤと寝息(ねいき)を立てながら、(じつ)(おだや)やかな寝顔を見せている。


(結局(けっきょく)……最後(さいご)に立ったのはブレイクのほうだった)


ジャズはミックスの寝顔を見ながら、ブレイクとの戦いを振り返っていた。


もしあのとき、ブレイクがミックスを攻撃してきたとしたら?


自分に彼を(まも)ることはできただろうか。


いや、たとえ(かな)わなくても立ち向かわなければいけない。


このお人好(ひとよ)しの男は、他人(たにん)とは(ちが)特別(とくべつ)な力があっても、けして完璧(かんぺき)ではない。


だがそれに()りずに、また誰か(こま)った人を見つけては今回のような無茶(むちゃ)をするに決まっている。


そして、いつものように「でもまあ、こんなもんだよね」と、(かわ)いた笑み浮かべ、それで(みな)と笑い合って事を終わらせるのだ。


もっと自分がしっかりせねば。


少なくとも何かあったときに、こいつの負担(ふたん)(かる)くしてやるくらいのことはしてあげたい。


ジャズがそう思いながら、ぼんやりとその顔を見ていると――。


「うぅ~ん……。あれ? ジャズかぁ」


ミックスが体を伸ばしながら目を覚ました。


ジャズは彼の顔を見つめていたのもあって、つい顔をそらしてしまう。


そして、あれから街がどうなったかと、クリーンから聞いた話を彼に伝えた。


「そっか……。また負けちゃったんだね、(おれ)……」


笑いながらいうミックス。


だがその態度を見て、彼が落ち込んでるのがジャズにはわかった。


彼女はなんとか(はげ)ましてやろうと思うのだが、言葉がうまく口にできない。


「カッコ悪いよね……。もう、いつもこんなんだよ」


そんなことない、今回だってカッコよかったよ。


ジャズは(こころ)の中で(さけ)んだが、当然ミックスに伝わることはなかった。


「あ、あのさぁ……。あたしはね……」


「うん? なに?」


「だからッ! あたしは今回も前のときも……あんたのこと……」


ジャズが心の中で思っていたことを言いかけた瞬間(しゅんかん)、病室の扉が開く。


そして、(あらわ)れたニコとリトルたちがミックスへと飛びついた。


その後ろからは、ウェディングやクリーンの姿も見える。


クリーンは、ニコとリトルたちが嬉しそうにミックスにじゃれついているところに出てきて、いきなり頭を下げた。


「ミックスさん、ジャズさん、それにウェディングも……。今回のこと……ありがとうございました」


それからクリーンは皆に(れい)を言い始めた。


たくさん迷惑(めいわく)かけて申し訳なく思う反面(はんめん)


皆のしてくれたことに(よろこ)びが止まらないのだと。


彼女は(なみだ)ながらそのことを伝えていた。


そんなクリーンに合わせるように、小雪(リトル スノー)小鉄(リトル スティール)姿勢(しせい)を正してお辞儀(じぎ)をする。


すると、なぜかニコまで頭を下げだしていた。


「でも、よかったよね。お兄さんとちゃんと話せて」


前に出てきたウェディングは、クリーンにハンカチを渡してなだめると、なぜかミックスのことを(にら)みつけた。


じーと怒りのこもった視線(しせん)を送りながら、ゆっくりと彼のほうへと近づいていく。


「ウェディング……? ど、どうしたのかなぁ~?」


「私……今回かんぺきにのけ者でした……」


「いや~そんなことないんじゃない? だってほら、クリーンのためにブレイクに飛びかかったって聞いてるし……」


「どうして呼んでくれなかったんですか?」


「なんでだろ? ど、どうしてかなぁ~?」


「忘れてたんでしょ?」


「いや、そ、そんなことは……」


「キィィィッ! みんなはいたのに私だけあの場にいなかったなんて(ひど)いッ! 酷すぎますよせんぱいッ!」


「ちょっと待てってッ!? それは俺のせいじゃッ! うぎゃぁぁぁッ! やめろウェディングッ! 今回のはマジでヤバいんだってッ!」


ウェディングは力任せにミックスの体を(つか)んで振る。


その(いた)みでミックスは絶叫(ぜっきょう)


だが、それでもミックスとウェディング以外は皆楽しそうにしていた。


「ハハハ、こいつのハッピーエンドっていつもこんな感じよね」


ジャズがそう言い、その中で誰よりも一番嬉しそうにしていたクリーンの顔には、もう涙は流れていなかった。


もうあの頃の――。


何も考えず、ただ兄の背中について行っていた頃の自分とは違う。


自分で考えて自分で行動できるのだ。


それに今の自分には体を張ってくれる仲間もいる。


クリーンはそう思うと、本気で痛がっているミックスを見ても笑いが止まらなかった。


「ぎゃぁぁぁ傷口が開いたッ! 医者をッ! 誰かはやく医者を呼んでくれぇぇぇッ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ