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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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78/948

#77


「ビャッハハ! フギャアアアハッハアアッ! 面白(おもし)れぇ、面白すぎんぞ機械(きかい)ヤロウゥゥゥッ!」


振り返ったブレイクは、立ち上がったミックスへと一直線(いっちょくせん)。


ジャズはすぐにでもインストガンを撃(う)とうとした。


あんなフラフラの状態(じょうたい)ではもう立っているのがやっとだ。


立ってくれたのは嬉(うれ)しいが、これ以上(いじょう)ミックスを戦わせるわけにはいかない。


だが、それよりも早く黒い刃(やいば)を振り落とされる。


「やめてぇぇぇッ!」


ジャズが叫(さけ)び声と同時(どうじ)に――。


ミックスの機械化した拳(こぶし)とブレイクの振り落とした刀(かたな)が重(かさ)なり合った。


すると、どういうことだろう。


突如(とつじょ)正体(しょうたい)不明(ふめい)の光(ひかり)がミックスとブレイクを包(つつ)んでいく。


傍(そば)で見ていたジャズが、いったい何が起きてのかがわからないでいると、その眩(まばゆ)い光はゆっくりと消えていった。


消えていく光の中――。


刀を弾(はじ)かれたブレイクに向かって、ミックスが右ストレートを放(はな)とうとしているのが見える。


こんな拳、たとえ目をつぶっていても避(よ)けられる。


ブレイクはそう思ったが、彼の身体はまるで地面(じめん)に押さえ付けられるかのように動かなくなっていた。


手足、全身が重(おも)い。


自分にだけ重力(じゅうりょく)をかけられたかのような、そんな感覚(かんかく)を味(あじ)わう。


「妹(いもうと)ためを想(おも)うなら……やり直してこい」


その呟(つぶや)きの後に放たれたミックスの拳からは、空間(くうかん)を歪(ゆが)めるような竜巻(たつまき)状(じょう)のものが現(あらわ)れていた。


ブレイクはまったく身体が動かせず、その拳が顔面(がんめん)へ向かってくるのを待っているしかなかった。


(なんでだッ!? なんでこいつは折(お)れねぇッ!? オレのほうが明(あき)らかに強いッ! 力(ちから)、速さ、技(わざ)、すべてにおいてオレがこいつに負けてる要素(ようそ)はねぇッ!)


向かってくる竜巻(たつまき)状(じょう)のものをまとった拳がスローモーションに見える。


ブレイクのその、実際(じっさい)は一瞬(いっしゅん)の間(あいだ)だった瞬間(しゅんかん)に思う。


さっきミックスとぶつかり合ったときに見えたものはなんだ?


奴(やつ)の子どもの頃(ころ)の映像(えいぞう)が頭(あたま)の中を流(なが)れていた。


これが幻(まぼろし)でないのなら、おそらく奴は――。


いや、それよりもこいつにも自分の過去(かこ)が見えたのだろうか。


そいつは最悪(さいあく)だと思いながらブレイクは、ミックスの拳を顔面へと受けて吹(ふ)き飛ばされていった。


(オレには……守(まも)れねぇのかよ……)


顔に受けたはずのダメージが全身を押し潰(つぶ)すような感覚(かんかく)へと変わり、ブレイクはその痛(いた)みを味(あじ)わいながら気が付いた。


誰かを守るということは、今こいつらがしていることだと。


長(なが)らく忘(わす)れていた自分と妹の幼(おさな)い頃の姿(すがた)を思い出しながら、ブレイクはコンクリートの地面(じめん)へと倒(たお)れた。


それと同時に、拳を放ったミックスもその場に倒れてしまう。


「あんた……? ちょっとしっかりなさいよッ!」


ジャズは大慌(あわ)てでミックスの元(もと)へと駆(か)け寄る。


ニコも抱いていた白い刀(かたな)――小雪(リトル スノー)を優(やさ)しくクリーンの傍(そば)に置くと、彼女の後に続いた。


ジャズは動かないミックスへ声をかけ続けた。


もちろんニコは鳴き続けて彼を起こそうとしていた。


そんな彼女たちの想いが通(つう)じたのか。


意識(いしき)ははっきりしていなかったが、ミックスはわずかな反応(はんのう)を見せる。


どうやら息はまだありそうだ。


「よかった……。ったく、心配(しんぱい)させんじゃないわよ。こんなムチャして……ホントにバカなんだから」


ジャズはミックスの頭(あたま)を自分の膝(ひざ)の上に乗せると、荒(あら)っぽい言葉を吐いていたかとは思えない穏(おだ)やかな表情(ひょうじょう)を浮(う)かべていた。


そのチグハグな態度(たいど)を見たニコは、彼女の本当の気持ちがよくわからないのか、首(くび)を大きく傾(かし)げている。


口では悪く言っているのに、頭を自分の膝に乗せて微笑(ほほえ)むなんておかしいなぁ、とでも思っているのだろう。


「これでもう……決着(けっちゃく)だよね……」


もう戦いは終わった。


そうジャズが安堵(あんど)していた瞬間(しゅんかん)――。


「おい、女。テメェ……たしかジャズとかいったな?」


後ろから男の声が聞こえた。


ジャズが振り返ると――。


そこには気を失(うしな)っているクリーンを抱きかかえ、小雪(リトル スノー)と小鉄(リトル スティール)を肩(かた)に担(かつ)いで立っているブレイクの姿があった。


あれだけやられてもまだ立つのか?


やはりハザードクラス――鉄(くろがね)のコードネームは伊達(だて)じゃない。


この男は正真(しょうめい)正銘(しょうめい)の怪物(かいぶつ)だ。


驚愕(きょうがく)するジャズと震えるニコへブレイクが口を開く。


「そいつが起きたらいっとけ。……テメェのツラァは、二度と見たくねぇってなぁ」


驚(おどろ)いていたジャズだったが、すぐにブレイクが重傷者(じゅうしょうしゃ)だということに気が付く。


もう立っていること、いや呼吸(こきゅう)するのさえしんどいはずだ。


「ちょっと待ちなさいよッ!? あんたもクリーンも一緒に病院(びょういん)に行かなきゃッ!」


「いいから……必(かなら)ずいっとけよ……」


ブレイクはそう捨て台詞(ぜりふ)を吐(は)くと、そのまま半壊(はんかい)した街へと姿を消すのだった。

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