↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
PR
77/948

#76

ジャズは電磁波(でんじは)放出(ほうしゅつ)装置(そうち)――インストガンの銃口(じゅうこう)をブレイクへと向ける。


「動かないでッ!」


だがジャズが声を張り上げても、ブレイクは彼女のことを気にも留(と)めていなかった。


まるでキャンキャン吠(ほ)える野良犬(のらいぬ)でも見るような視線(しせん)で一瞥(いちべつ)すると、すぐにミックスのほうを向く。


「や、やめろ……ジャズ……」


ミックスは倒(たお)れたままジャズへと声をかけた。


それは巻き起こる風の中に消え去ってしまいそうなか細(ぼそ)いものだったが、彼の声を聞けたジャズは内心(ないしん)で安堵(あんど)していた。


「兄様(にいさま)ッ!」


そこへクリーンも姿(すがた)を現(あらわ)す。


彼女はジャズの勇気を見て自身(じしん)を奮(ふる)い立たせた。


何も特別(とくべつ)な力(ちから)を持たないただ少女が――。


ミックスのために。


そして自分のために、命(いのち)の危険(きけん)も顧(かえり)みずに立ち上がっている。


それなのに、巻き込んでしまっている自分がじっとなどしていられない。


この場で兄を――ブレイク·ベルサウンドを止めるのだ。


「ジャズさん……。あなたは私たち以上の特別な力を持っているのかもしれませんね」


「こんなときになにいってんのッ!? 下がってなさいッ! あんたは戦えるような体じゃないッ!」


「いえ、たとえ刀(かたな)を振るわずとも、兄を――小鉄(リトル スティール)を止める方法(ほうほう)はあります」


クリーンがそういうと、ニコに支(ささ)えられていた小雪(リトル スノー)が日本刀(にほんとう)へと変化(へんか)し、彼女の腕(うで)に握(にぎ)られた。


そして小雪(リトル スノー)を両手(りょうて)に持ち直し、まるで祈(いの)るように刀を立てる。


「ジャズさん、そしてミックスさんには勇気をもらいました。もう……誰も傷(きず)つけさせないッ!」


――ジャズとクリーンのことなど無視(むし)し、ミックスへと近づいたブレイクは彼を踏(ふ)みつけながら高笑う。


「スゲェッ! スティールが自分の一部(いちぶ)にでもなったみてぇだッ! アハッ! ババアがいってたおふくろの秘技(ひぎ)ってのこいつのことかぁッ! 感謝(かんしゃ)してやるよ機械(きかい)ヤロウッ! テメェのおかげでオレは最強(さいきょう)になれたんだッ! その礼(れい)にこのままスクラップにして……ッ!?」


ミックスに止(とど)めを刺(さ)そうとしたブレイクだったが、自分の身体から小鉄(リトル スティール)の気(オーラ)が消えていくことに気が付いた。


いったい何が起こったのだと、彼が周囲(しゅうい)を見渡(みわた)すと――。


「テメェか……クリーンッ!」


クリーンが持つ小雪(リトル スノー)から凄(すさ)まじい気(オーラ)が放(はな)たれていた。


彼女は小雪(リトル スノー)を通(つう)じて小鉄(リトル スティール)へとアクセスし、その力を抑(おさ)えようとしていたのだ。


小雪(リトル スノー)と小鉄(リトル スティール)は、元々(もともと)産土神(うぶすながみ)の加護(かご)による妖犬(ようけん)。


クリーンはそのことを思い出し、制御(せいぎょ)を失(うしな)った小鉄(リトル スティール)をなんとかできないかと考えて行動を起こした。


その結果(けっか)、ブレイクの狂気(きょうき)に支配(しはい)された小鉄(リトル スティール)は解放(かいほう)され、その力を失っていく。


だが、その反動(はんどう)なのか。


祈(いの)り続けていたクリーンはその場に倒(たお)れてしまった。


ジャズが彼女を抱き起すと、目の前には表情(ひょうじょう)をこれでもかと歪(ゆが)めたブレイクの姿(すがた)が。


「クリーンに何をするつもりなの? あんたの妹(いもうと)でしょッ!?」


「わからねぇ……。あそこで転がってる機械ヤロウも、そうやってクリーンを庇(かば)うテメェも、どうしてここまでする?」


「理由(りゆう)なんて簡単(かんたん)よ。この子が友だちだからに決まってるでしょ!」


「そういうのはいらねぇんだよ……。英雄(ヒーロー)なんてもんはいるはずがねぇ……。まあいい、腕(うで)の一、二本斬り落とせばそんなフザけてことも言わなくなるだろ。手足をぜんぶ失くせば、そこから本音(ほんね)が出るってもんだ。テメェが本音をいえば楽に殺してやるよ。わたしが強がってました。ごめんなさい、もう二度と他人(たにん)を助けようなんて思いませんってな」


「やってみなさい! あたしじゃあんたに歯(は)が立つはずもないけど。それでもこの子だけは守ってみせる!」


抱いていたクリーンを優(やさ)しく地面へと寝かし、ジャズはブレイクと向かい合う。


そこへ走ってきたニコは、そんなクリーンの寄り添(そ)いながら、ブレイクに向かって力強く鳴いていた。


刀へと変化している小雪(リトル スノー)を抱き、震(ふる)えながらも彼のことを睨(にら)みつける。


「くだらねぇ、くだらねぇんだよ……。テメェみてぇな凡人(ぼんじん)が、そもそも呪(のろ)われたオレたちと関(かか)わってんじゃねぇッ!」


ブレイクは苛立(いらだ)ちながらも口角(こうかく)をあげていた。


おそらくその内面(ないめん)では、渦巻(うずま)く感情がごちゃごちゃなってしまっているのだろう。


もはや本人すら何を思っているのかもわからそうだった。


「テメェなんかじゃ壁(かべ)にもなりゃしねぇッ! それじゃ守れねぇ……弱(よわ)い奴(やつ)はなにも守れやしねぇんだぁぁぁッ!」


ブレイクがジャズへと襲(おそ)いかかろうとしたとき、ふと彼の背後(はいご)から物音(ものおと)がした。


それはブリキが玩具(おもちゃ)が軋(きし)んできるようなそんな音だった。


ジャズはその音の方向(ほうこう)を見て、嬉(うれ)しそうに両目を見開ている。


ニコもはしゃぎながらその場でぴょんぴょん飛んでいる。


ブレイクはすぐにその音の正体に気が付き、振り向く。


「テメェ……」


そこには血塗(ちまみ)れの姿で立っているミックスがいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。