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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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69/948

#68

眠(ねむ)っていたブレイクは目を覚(さ)ました。


仮眠(かみん)でもしていたのだろう、時刻(じこく)はまだ陽(ひ)が落ちたばかりだった。


苦(くる)しそうなブレイクは、真っ青で汗(あせ)まみれの顔を右手で覆(おお)う。


「クソッたれ、あの女がおふくろのことなんかいうからだ……」


ブレイクのベットの傍(そば)には黒い犬――小鉄(リトル スティール)がいて、心配(しんぱい)そうにその身を震(ふる)わせている。


どうやら彼が悪い夢をみたことに気が付いているようだ。


ブレイクはそんな小鉄(リトル スティール)に離(はな)れるようにいうと、冷蔵庫(れいぞうこ)を開けてペットボトルの緑茶(りょくちゃ)を口にする。


一気(いっき)に飲み干(ほ)すと、急(きゅう)に吐(は)き気がし、飲んだばかりの緑茶をすべて嘔吐(おうと)してしまう。


「オエェェェッ……。ゴッホ、ゴホゴホ……。ダメだ……止まらねぇ……止まらねぇんだよッ!」


ブレイクは胃(い)の中にあるものをすべて吐き出すと、部屋にあるものを破壊(はかい)し始(はじ)めた。


テーブルや椅子(いす)を蹴(け)り飛ばし、壁(かべ)に向かって拳(こぶし)を打ち付ける。


小鉄(リトル スティール)がそんなブレイクに寄り添(そ)うと、彼は不気味(ぶきみ)な笑みを浮(う)かべてその黒い毛で覆われた体を掴(つか)んだ。


「ビャッハハ! フギャアアアハッハアアッ! 止まらねぇんなら、止まるまで殺(ころ)しやるよぉぉぉッ!」


――その頃(ころ)クリーンは、病院(びょういん)の待合室(まちあいしつ)にあるソファーに座(すわ)りながら、ぼんやりと外を眺(なが)めていた。


彼女の傍(かたわ)らには白い犬小雪(リトル スノー)と電気(でんき)仕掛(じか)け仔羊(こひつじ)ニコが仲良(なかよ)く寄りかかり合って眠っている。


すでにジャズ、ウェディング、アミノは帰っていたが、今夜はニコを小雪(リトル スノー)の傍においてあげてほしいと言われ、クリーンは二匹と一緒(いっしょ)にいた。


待合室には立体(りったい)映像(えいぞう)によるテレビ――子供向けのクイズ番組(ばんぐみ)が映(うつ)し出されていたが、クリーンに興味(きょうみ)なさそうだ。


「部屋に戻(もど)らないの?」


そこへミックスがやってきて、彼女の側(そば)にあった自動(じどう)販売機(はんばいき)に持っていたエレクトロフォンをかざした。


ガランという音が続けて鳴(な)り、ミックスは購入(こうにゅう)した緑茶のペットボトルをクリーンへと渡(わた)し、自分は炭酸(たんさん)飲料水(いんりょうすい)に口をつける。


受け取ったクリーンはコクッと頭(あたま)を下げると、なんだかこのまま眠ってしまうのがもったいない気がするのだと返事(へんじ)をした。


それを聞いたミックスは、笑みを浮かべたと思ったら急(きゅう)にしかめっ面(つら)となる。


「明日はウェディングがケーキを作って来るっていってたから、そんなこといっていられなくなるよ」


「……? それはどういう意味(いみ)でしょうか?」


「いや、ケーキはいいんだけど……。ウェディングは巨大(きょだい)なホールを持ってくるからさ。とても一人じゃ食べ切れないんだよ」


「それは楽しみですね。私、ホールケーキを一人で食べたことないから嬉(うれ)しいです」


目を輝かせていうクリーン。


ミックスは彼女と初(はじ)めて会ったときのことを思い出していた。


ファミリーレストランでうどん鉢(はち)が、山のように積(つ)み上げられていたことを。


「クリーンの本気(ほんき)はこんなもんじゃありませんよッ! この子はこんなレストランくらい余裕(よゆう)で閉店(へいてん)にできますッ!」


その記憶(きおく)の中で、嬉しそうに叫ぶウェディングの姿(すがた)も浮(う)かんでいた。


「そういえばクリーンはたくさん食べる子だったよね……。そりゃホールケーキくらい楽勝(らくしょう)かぁ」


「はい」


そんな満面(まんめん)の笑みを見せるクリーンを見たミックスは、顔を引きつらせつつもほころんでいた。


二人が誰もいない夜の待合室で笑い合っていると、当然先ほどまで映っていたテレビ番組が切り替わる。


「番組を中断(ちゅうだん)して、これより臨時(りんじ)ニュースをお知らせします」


ミックスとクリーンは何気なくテレビの映像へと目をやっていたが、その内容を知ると驚愕(きょうがく)した。


現在(げんざい)、バイオニクス共和国(きょうわこく)の中心街(ちゅうしんがい)に、真っ黒な日本刀(にほんとう)を持った少年が無差別(むさべつ)に通行人(つうこうにん)を襲(おそ)っているらしい。


今のところ死者(ししゃ)は出ていないようだが、軽(けい)重傷者《じゅうしょうしゃ》はかなりの数(かず)のようだ。


「兄様(にいさま)……」


クリーンはそう呟(つぶや)くと、眠っていた小雪(リトル スノー)を起こしてソファーから立ち上がる。

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