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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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67/948

#66

その後――。


クリーンはミックスが入院(にゅういん)している病院(びょういん)へと運(はこ)ばれた。


幸(さいわ)いなことに見た目よりは傷(きず)が浅(あさ)く、精密(せいみつ)検査(けんさ)の結果(けっか)も特(とく)に異状(いじょう)はみられなかった。


「ミックスくんといい、なんで私が関(かか)わる子はこんな病院にお世話になってばかりなんですかねぇ……」


「すみません。アミノさんしか頼(たよ)れる人がいないので」


クリーンに付き添(そ)っていたジャズとウェディングは、成人(せいじん)の保護者(ほごしゃ)としてミックスの担任(たんにん)教師(きょうし)であるアミノを呼び出していた。


クリーンはウェディングとクラスメイトなので、彼女やジャズの通(かよ)う学校の教師に頼めばよかったのだが、気心(きごころ)の知れた人物というとやはりアミノにしか頼めなかったのだ。


アミノは、そんな申(もう)し訳(わけ)なさそうにいうジャズとウェディングを見て微笑(ほほえ)むと、ドンと自分の胸(むね)を叩(たた)く。


「ジャズちゃんもウェディングちゃんも気にせずに、これからもガンガン先生に頼っちゃってください」


「ありがとうございます。アミノさん」


「いえいえ、それが私のやりたいことですから。……ですがぁ~。ちゃんとあとで事情(じじょう)を聞かせてくださいねッ!」


アミノは笑っていたかと思えば、突然(とつぜん)プンプンと怒(おこ)り始(はじ)めた。


それも当然(とうぜん)だろう。


彼女が知っている生徒(せいと)から連絡(れんらく)を受けたときは、いつも入院の雑務(ざつむ)を任(まか)されることが多いからだ。


そのせいか最近(さいきん)は、自分のエレクトロフォンが鳴(な)り出すたびに、今度は何事(なにごと)かと一人大慌(あわ)てしてしまっている状態(じょうたい)だった。


「先生はイヤなんです! わけがわからず知っている子が大ケガするなんてッ! このところは心配(しんぱい)でろくに眠(ねむ)れないせいで、お肌(はだ)が荒(あ)れてきちゃってるんですよぉ」


「ご、ごめんなさい……」


「それにストレスでお酒(さけ)の量(りょう)も増(ふ)え、炭水化物(たんすいかぶつ)を食べる量まで増量(ぞうりょう)……。このままでは心配太(ぶと)りしてしまいますぅ……」


「アミノさん……。それはあたしたちのせいでしょうか……?」


そして、散々(さんざん)喚(わめ)いた後にアミノは泣き出してしまった。


ジャズは、彼女をなだめながら落ち着いたら事情を話すことを伝(つた)え、ウェディング、ニコと共にクリーンがいる病室へと向かうことにする。


アミノは入院の手続きなどがあるため、ジャズたちとは分かれて病院の受付(うけつけ)へといくことに。


ジャズは、病院の廊下(ろうか)を歩いていると、いつもと比(くら)べて元気のないウェディングに気が付いた。


きっとブレイクと揉(も)めたときのことを気にしているのだろう。


ウェディングは覇気(はき)のない顔をして、ガックリと肩(かた)を落としながら歩いていた。


ジャズは、そんな彼女の背中(せなか)をポンと叩(たた)く。


「ほらほら、あんたがそんな顔をしてたらクリーンが元気にならないでしょ」


「でも……私……」


「あぁ~もうッ! あのときも似(に)たようなこと言ったけど。あんたがどうなったってあたしがまた止めてあげるから!」


「姉さん……」


「そりゃなんの能力もないあたしなんかじゃ、頼りにならないかもだけどさ」


「そんなことないです……」


立ち止まったウェディングは顔を上げ、ジャズのことを見つめた。


そのときの彼女の顔はいつもの笑みを取り戻(もど)していた。


「ジャズ姉さんに特別(とくべつ)な力(ちから)はないかもしれないけど……。姉さんは誰よりも強い人です」


笑顔でいうウェディングに続き、ニコも自分も同じ意見(いけん)だといっているように大きく鳴いた。


それからクリーンの病室に到着(とうちゃく)すると――。


中では、包帯(ほうたい)だらけのミックスが彼女と談笑(だんしょう)してる。


二人の傍(そば)には白い犬――小雪(リトル スノー)も寝そべっていた。


「なんだ、あんたもいたんだ」


「アミノ先生から連絡が来たんだよ。だいたいの話は先生とクリーンから聞いたよ。それにしても、ウェディングとあのブレイクの間(あいだ)に割って入るなんて……。相変(あいか)わらず無茶(むちゃ)なことするな、ジャズは」


「そんなこと、あんたに言われたくないつーのッ!」


「なんで怒るんだよ? 俺(おれ)はただ心配(しんぱい)してるだけじゃないか?」


「うっさいッ! ふん、あんたなんかに心配されるほど落ちぶれちゃいないわよ」


顔を突(つ)き合わせた途端(とたん)に言い争(あらそ)うミックスとジャズ。


そんな二人を見たウェディングとクリーンは笑ってしまっていた。


ミックスとジャズ二人は、何もおかしなことを言っているわけはない。


だがウェディングとクリーンにとって、ミックスとジャズのやり取りは、いつもの何気(なにげ)ない日常(にちじょう)を思い出させてくれるものだった。


クリーンにとってはまだ日が浅い光景(こうけい)だが、ウェディングから二人の話をずっと聞かされていた。


またここに戻って来れた――。


二人はそう思うと、つい嬉(うれ)しくなって笑ってしまうのだ。


「ちょっとあんたたちッ! なにを笑ってるのよッ!? もしあたしをからかってるなら容赦(ようしゃ)しないわよッ!」


「別にいいじゃないか、二人とも楽しそうだし。まったく、ジャズはすぐにそうやって大声を出すんだから」


「あんたはちょっと黙(だま)ってろッ!」


「ギャァァァッ! 眉間(みけん)がッ! 眉間がぶち抜かれたッ!」


ジャズのヘッドバットがミックスにヒット。


彼はあまりの痛(いた)みにのたうちた回《まわ》る。


それからその叫び声のせいで、介護(かいご)ドローンが部屋にやってきたりと、クリーンの病室は大騒(さわ)ぎになる。


しかし、それでも皆楽しそうにしていた。


特にクリーンが一番よく笑っていた。


「今すぐ病院へ連れてってくれぇぇぇッ!」


「ここは病院よバカッ!」


そんな、すっかりと騒がしくなった病室の中――。


ニコはそっと小雪(リトル スノー)に寄りかかり、その体を抱(だ)きしめるのだった。

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