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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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63/948

#62

自分へと向かってくるウェディングを見たブレイクは不敵(ふてき)に笑った。


ウェディングはブレイクとは反対(はんたい)に、物凄(ものすご)い形相(ぎょうそう)で彼のことを睨(にら)みつけている。


「身体がダイヤに変わった? そうか、テメェがあの|舞う宝石《ダンシング·ダイヤモンド》か」


ウェディングは、目の前にいるブレイクと同じく――。


ハザードクラスと呼ばれるバイオニクス共和国(きょうわこく)から認定(にんてい)された最高クラスの能力を持つ者だ。


彼女の能力は超復元《グレート·リストレーション》。


実質的(じっしつてき)にどんな重傷(じゅうしょう)を負(お)おうが、どんなウイルスに感染(かんせん)しようがすべて正常(せいじょう)な状態(じょうたい)に治(なお)してしまう治癒(ちゆ)能力である。


彼女はその能力があるがゆえに、バイオニクス共和国(きょうわこく)のとある研究所(けんきゅうじょ)で行(おこな)われた実験(じっけん)――。


増幅《アンプリフィケイション》計画(けいかく)と呼ばれた人体(じんたい)実験の被験者(ひけんしゃ)であった。


その全身の骨格(こっかく)には分子(ぶんし)レベルでダイヤモンドを結合(けつごう)され、自分の意思(いし)で全身のどこからでも武器として露出(ろしゅつ)可能(かのう)(皮膚(ひふ)を突き破(やぶ)ってダイヤモンドにするなど)。


だが、彼女の能力の本当に恐(おそ)ろしいところは、たとえ心臓(しんぞう)を潰(つぶ)されようが頭(あたま)を吹き飛ばされようが、瞬時(しゅんじ)に蘇生(そせい)できることに他(ほか)ならない。


実験により身体能力も向上(こうじょう)され、人間離(ばな)れしたスピードと宝石を使って戦うその姿(すがた)から、科学者たちは彼女に舞う宝石《ダンシングダイヤモンドというコードネームを付けた。


「まさかクリーンのダチにハザードクラスがいるとはなぁ」


ヘラヘラと笑うとブレイク。


ウェディングの素性(すじょう)に気が付いても、その余裕(よゆう)は変わらない。


対(たい)するウェディングは、ゆっくりと歩いていたかと思えば、突然手の甲(こう)から剣の形(かたち)をした宝石(ほうせき)――ダイヤモンドが表(あらわ)れる。


手から生(は)えた宝石の剣。


彼女はそのダイヤモンドの剣でブレイクへと斬(き)りかかった。


その休みのない連撃(れんげき)は凄(すさ)まじく、いつも笑顔のウェディングとはまるで別人(べつじん)のような鬼気(きき)迫(せま)る攻(せ)めをみせる。


そんな激(はげ)しい斬(ざん)撃を繰(く)り出しながらも、ただ無言(むごん)でいる彼女に、ニコはすっかり怯(おび)えてしまっていた。


「ウェディングッ! 待って、待ってよッ!」


ジャズはそんなウェディングを止めようと大声をあげていた。


だが、何かスイッチが入れられた機械(きかい)にのように、ウェディングは淡々(たんたん)とブレイクに剣を振るっている。


「ベルサウンド流、モード小鉄(リトル スティール)。鉄城門(てつじょうもん)」


ブレイクが剣を受けながら刀(かたな)を構(かま)えると、突如(とつじょ)現(あらわ)れた黒い結界(けっかい)が彼の身を守(まも)る。


ジャズは、ダイヤモンドの剣でも破壊(はかい)できない結界を見て驚愕(きょうがく)していたが、ウェディングは気にすることなく攻撃を続けていた。


ただ淡々とブレイクのことを斬り裂(さ)こうと、手の甲から出ているダイヤの剣を振り回(まわ)している。


その間(あいだ)にもジャズは、どうすればこの事態(じたい)を止められるかを考えていた。


あんな姿(すがた)のウェディングなど見たことがない。


おそらく大事(だいじ)な友人を傷(きず)つけられ、我(われ)を失(うしな)っているのだろう。


言葉で止められないなら二人の間に割って入るか?


いや、そんなことをすれば何の力(ちから)もな持たない自分など、踏(ふ)みつけられる蟻(あり)のように殺(ころ)されてしまうだけだ。


どうする、どうすればいい?


ジャズは思考(しこう)を巡(めぐ)らせながらも自分の無力(むりょく)さを呪(のろ)う。


「あたしはどうして……どうしてこんなに弱(よわ)いのよ……」


クリーンを抱きながら俯(うつむ)くジャズ。


自分はいつも肝心(かんじん)なときに役(やく)に立てないと、溢(あふ)れ出しそうな悔(くや)し涙(なみだ)を堪(こら)えていた。


ニコはそんな肩を落としている彼女へ鳴きかけた。


それがどういう意図(いと)があったかはわからないが、ジャズは顔をあげてニコのほうを見る。


「そうだよね。たとえ力がなくたって、あたしがやらなきゃ……」


そして、ニコへ微笑(ほほえ)みかけたジャズは、クリーンを優(やさ)しく地面へと寝かすと立ち上がる。


その手には鉄(てつ)パイプが握(にぎ)られていた。


おそらくブレイクとクリーンの戦闘(せんとう)で壊(こわ)れた屋上(おくじょう)にあったアンテナの一部(いちぶ)だろう。


こんなものでハザードクラスの戦いに割ってはいるなど自殺(じさつ)以外の何者でもない。


だがそれでもジャズは、ウェディングとブレイク二人の間へと飛び込んでいった。

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