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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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62/948

#61

――学生(がくせい)寮(りょう)から電気(でんき)仕掛(じか)け仔羊(こひつ)ニコを連れて来たジャズとウェディングは、再(ふたた)びミックスが入院(にゅういん)している病院(びょういん)へ向かっていた。


「ニコはモフモフだね~。羊(ひつじ)サイコ~!」


ウェディングはニコの体を覆(おお)っている豊(ゆたか)かな毛(け)の感触(かんしょく)を味(あじ)わいながら、実(じつ)に嬉(うれ)しそうに抱(だ)きしめている。


ニコは早くミックスに会いたいのか、ウェディングの胸(むね)の中で急(せ)かすように鳴(な)いていた。


「そんなに急(いそ)がなくてもあいつは逃げないわよ」


「とかなんとかいっちゃってぇ~、姉さんなんか朝から気になってしょうがなかったくせに」


「あんたねぇ……。またそうやってあたしのことをからかうならッ!」


「ひゃ~ッ! 締(し)め技(わざ)はッ! 頸動脈(けいどうみゃく)を止めるのだけはカンベンしてください~!」


二人が街中(まちなか)でそんなやり取りをしていると――。


突然(とつぜん)建物(たてもの)が崩(くず)れたような大きな音が聞こえてきた。


何事(なにごと)とかと思った二人は、その音が鳴(な)った方向(ほうこう)を見ると急(きゅう)にニコが激(はげ)しく鳴き始める。


ジャズはいったいどうしたのかと訊(たず)ねるが、ニコはただ音が鳴ったほうへ手を伸(の)ばして喚(わめ)き続けていた。


するとウェディングはニコをジャズへと預(あず)け、いきなり走り出していく。


「ちょっとウェディング!? どこへ行くのよッ!」


ウェディングはジャズの言葉に何も返さず、もの凄(すご)い速度(そくど)で音のする方向へと駆(か)けていった。


バイオニクス共和国(きょうわこく)のとある研究所(けんきゅうじょ)で行(おこな)われた増幅《アンプリフィケイション》計画の実験により、ウェディングの身体(しんたい)能力は一流(いちりゅう)のアスリートを軽(かる)く超(こ)える。


途中(とちゅう)にあった無人(むじん)の車(くるま)が走る道路(どうろ)を跳躍(ちょうやく)で越え、ビルからビルへと飛び移(うつ)っていく。


(この感じ……。なんかすごくイヤな感じがする……)


そして、ウェディングがたどり着いたのは図書館(としょかん)だった。


勘(かん)のいい彼女は、その直感(ちょっかん)の赴(おもむ)くまま外観(がいかん)を登(のぼ)って屋上(おくじょう)へと向かう。


そこで、登りきったときにウェディングが見たものは――。


「……クリーンッ!?」


傷(きず)だらけで倒(たお)れている友人の姿(すがた)だった。


ウェディングは慌(あわ)ててクリーンに駆け寄(よ)って声をかけたが、答えは返って来ない。


だが、息(いき)はある。


脈(みゃく)はある。


どうやら気を失(うしな)っているだけのようだ。


ウェディングは彼女の体を起こし、その顔を見た。


クリーンの顔には、何か鋭(するど)い刃物(はもの)のような切り傷と涙痕(るいこん)があった。


「スゲーなぁ。まさか屋上まで外から上(あが)ってきたのか?」


ウェディングは声がするを見て、その人物を睨(にら)みつけた。


そしてその声の主(ぬし)の姿を見て、誰なのかすぐに気が付く。


「あなた、まさかクリーンのお兄さん?」


「あん? だったらなんだよ」


ヘラヘラと笑っている人物の正体(しょうたい)は、クリーンの兄であるブレイク·ベルサウンド。


彼の手には、犬の姿(すがた)に戻(もど)った小雪(リトル スノー)が持たれていた。


ブレイクはウェディングの強張(こわば)った表情(ひょうじょう)を見ると、首(くび)根(ね)っこを掴(つか)んでいた小雪(リトル スノー)を投げ捨(す)てる。


そこへ屋上の扉(とびら)からジャズが現(あらわ)れた。


ウェディングを追ってきた彼女は、息を切らしながら投げ捨てられた小雪(リトル スノー)を抱きしめる。


ニコも彼女に続き、大慌てで寄り添(そ)う。


「その黒い刀(かたな)……。あんた、ブレイク·ベルサウンドなの……?」


「あん? うるせえなぁ。だったらなんだってんだよ」


「どうして妹(いもうと)にこんなことをしたのよッ!」


ジャズは抱いていた小雪(リトル スノー)をニコに渡(わた)すと、ブレイクの目の前に立った。


ブレイクは鋭い眼差(まなざ)し向けてくる彼女に対(たい)して、舌(した)打ちをしながら睨み返す。


「たとえどんな理由(りゆう)があったって、クリーンみたいな良い子に手を出すなんておかしいわよッ!」


ジャズがブレイクに怒鳴(どな)っていると、いつの間にかウェディングが立ち上がっていた。


その身体はダイヤモンドに覆われ、陽(ひ)の光(ひかり)を浴(あ)びて輝(かがや)いてる。


「……姉さんは下がっていてください」


そして一瞬(いっしゅん)のうちに、クリーンを抱(かか)えたままジャズの元(もと)へ行く。


それからクリーンをジャズへと渡したウェディングは、そのままブレイクに向かって歩きだしていた。

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