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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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61/948

#60

――ジャズとウェディングが寮(りょう)へと向かっているとき。


クリーンは一人図書館(としょかん)にいた。


昨夜(さくや)のミックスとブレイクの戦いにより、館内(かんない)はもちろん外観(がいかん)も半壊(はんかい)状態(じょうたい)。


当然(とうぜん)立ち入り禁止(きんし)のトラテープがそこら中(じゅう)にあり、侵入(しんにゅう)してはいけないのだが。


クリーンは図書館内の階段(かいだん)をゆっくりと上(あが)っていく。


その表情(ひょうじょう)は今は亡(な)き彼女の母――クリア·ベルサウンドに似(に)て儚(はかな)いものだった。


クリーンが屋上(おくじょう)への扉(とびら)までたどり着くと、いつの間(ま)にか傍(そば)に白い毛(け)の犬――小雪(リトル スノー)が現(あらわ)れていた。


小雪(リトル スノー)は悲(かな)しそうにくぅーんと鳴(な)くと、クリーンは小雪(リトル スノー)を抱(だ)きしめる。


そして、よしよしと撫(な)でながら小さく呟(つぶや)いた。


「あなたを付き合わせてしまってごめんなさい……。でも、もうこれですべて終わりにしますから……」


今にも泣きだしそうなほどの震(ふる)える声。


小雪(リトル スノー)は、そんなクリーンを元気づけようとしているのか、力(ちから)強(づよ)く鳴き返す。


クリーンは立ち上がり、小雪(リトル スノー)へお礼(れい)をいうと屋上への扉を開いた。


強い陽射(ひざ)しが、彼女の雪(ゆき)のような白い肌(はだ)へと降(ふ)り注(そそ)ぐ。


眩(まぶ)しさに目を細(ほそ)めながら、クリーンがそこで見たものは――。


「あん? なんだお前か」


彼女と同じく真っ白な髪(かみ)をした和服(わふく)姿(すがた)の少年――兄のブレイク·ベルサウンドだった。


彼の傍(そば)には、いつものように黒い犬――小鉄(リトル スティール)が眠(ねむ)っている。


ブレイクの手には紙(かみ)の本――『ストリッパー』というタイトルの漫画(まんが)が持たれていた。


それは、ずいぶんと古(ふる)い物のようでところどころ痛(いた)んでいるものだった。


クリーンは兄へ頭(あたま)を下げると、屋上にあった無数(むすう)のアンテナに寄(よ)りかかっているブレイクのほうへと歩いていく。


「またロウルおじ様の本ですか? 兄(にい)様は本当にその本がお好きなのですね。時間があれば読み返していて」


「あん? 別(べつ)にそんなじゃねえ。ヒマつぶしだ、ヒマつぶし」


「あの人は優(やさ)しい人でしたね。こんな呪(のろ)われている私たちにすら……」


「もう死んじまったみてえにいってんじゃねえぞ。ロウルのおっさんはまだ生きてんだろうが」


「そうでしたね……」


クリーンがそう答(こた)えると、二人から会話(かいわ)がなくなった。


小鉄(リトル スティール)は寝息(ねいき)をたて、小雪(リトル スノー)は静(しず)かにクリーンの傍に座(すわ)っている。


屋上に風が吹(ふ)き、ベルサウンド兄妹(きょうだい)二人の白い髪を揺(ゆ)らす。


しばらくすると、ブレイクのほうが口を開いた。


あの自分にけしかけてきた適合者(てきごうしゃ)は元気か?


それとも死んじまったか?


――と、まるで相手を小馬鹿(こばか)にするような笑顔で訊(たず)ねてくる。


「あんなヨエーのどこで見つけたんだよ。いくら適合者だからつってもよぉ。そもそも闘争心(とうそうしん)ねえヤツを連れて来てんじゃねえぞ」


「そのことに関(かん)しては、すべて私の責任(せきにん)です」


「謝(あや)るくらいなら最初(さいしょ)っからやんなよ」


「私は兄様に謝ったのではありません。ミックスさんにです」


「あん?」


クリーンの言葉が癇(かん)に障(さわ)ったのか。


ブレイクは読んでいた本を置いて彼女のほうを向いた。


すると、彼女の手にはいつの間(ま)にか刃(やいば)が真っ白な日本刀(にほんとう)――小雪(リトル スノー)が変化した刀(かたな)が握(にぎ)られていた。


そしてクリーンは小雪(リトル スノー)を持って、アンテナに寄りかかっているブレイクに向かって振り落とす。


「おい、なんのマネだよ?」


だが、ブレイクはそれを両手(りょうて)の掌(てのひら)で左右から挟(はさ)み、見事(みごと)に止めてみせる。


それから彼は受けた刃を放(はな)し、クリーンの体を突き飛ばす。


軽(かる)く突き飛ばされたクリーンは俯(うつむ)いていた。


そんな彼女を見ているブレイクには、特(とく)に怒(おこ)った様子(ようす)はない。


むしろ心配(しんぱい)そうにしている。


そんな兄へクリーンは顔を上げて答える。


「最初からこうすればよかったのです……」


「あん? なにいってんだクリーン?」


「これで終わりにしましょう。私が兄様を止めてみせます」

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