表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
60/948

#59

それからクリーンの話の続きを聞き、ファミリーレストランから出た三人。


クリーンはてっきりジャズとウェディングに()められる覚悟(かくご)で話をしたのだが、二人にそんなつもりはなさそうだ。


いたたまれなくなったクリーンは、思いきってそのこと(たず)ねると――。


「なんであたしたちがクリーンを責めるのよ?」


「そうだよ。クリーンはぜんぜん悪くないよ。ただミックスせんぱいならお兄さんを止めてくれるって思ったから(たの)んだんでしょ?」


クリーンはウェディングの言葉に、それはそうだなのだがと返事(へんじ)をすると、二人はミックスのこと話し出した。


あのお人好(ひとよ)しが(くび)()()みそうなことだ。


後輩(こうはい)の友人――ましてや可愛(かわい)い女の子にお(ねが)いされて(はな)の下でも()ばしていたのに(ちが)いないと、彼をからかうようなことを言い(はじ)めている。


クリーンはそんな二人の発言(はつげん)(おどろ)き、言葉を(うしな)っていると、ジャズがすっと彼女に顔を突き付けてきた。


「ともかく、今回(こんかい)のことであんたが罪悪感(ざいあくかん)(おぼ)える必要(ひつよう)はこれっぽっちもないの。わかった?」


そのあまりの迫力(はくりょく)にクリーンは思わず(うなづ)いてしまう。


ジャズはわかればよろしいといい、(ふたた)び前を歩き出す。


ウェディングはそんな彼女の後を(うれ)しそうに追いかけていく。


「だいたい、あのバカが負けるのが悪いのよ。いくら女の前でいいカッコしたいからってさ。ハザードクラスのしかもクリア·ベルサウンドの息子(むすこ)相手に勝てる思ってたわけ? ったく、ホンット考えなしなんだから」


「うんうん。いや~心配(しんぱい)裏返(うらがえ)しってやつですなぁ~。ジャズ姉さんは今日もブレがないです」


「だ、誰があんなのを心配してるって言うのよッ! あんた、あたしの話聞いてた? あたしは(えら)そうに引き受けたくせの負けたことを、ただ(なさ)けないっていってんのッ!」


「うんうん、ジェラシーですなぁ~。姉さんは、(ほか)の女の子に(やさ)しくするミックスせんぱいがイヤなんですね」


「ちょっとウェディングッ! さっきから人のことおちょくってんじゃないわよ!」


顔を真っ赤にしてウェディングを追いかけるジャズ。


ウェディングそんな彼女へ素直(すなお)になるように言いながら逃げていく。


クリーンは、そんな二人の背中(せなか)を見ながらクスッと上品(じょうひん)に笑うと、気持ちを切り替えた。


祖母(そぼ)()くなってから兄が変わってしまい、バイオニクス共和国(きょうわこく)へ来てからというもの人との(つな)がりというものが消えかけていた。


彼女は生来(せいらい)大人しい性格(せいかく)というのもあって、新しい環境(かんきょう)で友人を作れなかったのだ。


それでも今は、こんな優しい人たちとの繋がりができた。


この(えん)を大事にしなければ――。


彼女はそう思ったのだった。


その後、三人はミックスのいる病院(びょういん)へと向かうことに。


クリーンは、このときジャズとウェディングと話していなければ、こんなに早く彼のところへお見舞(みま)いに行くつもりにはなれなかっただろう。


だが、彼女は二人のおかげでミックスに直接(ちょくせつ)(あやま)ることができた。


「そんな謝らないでよ。(おれ)のほうこそ(やく)に立てなくてごめんね」


包帯(ほうたい)だらけの体で反対(はんたい)(あたま)を下げるミックス。


そんな彼にウェディングは買ってきた大量(たいりょう)(いた)チョコレートをドサッと(ほう)り投げる。


ミックスはベットの上でチョコレートの山に(つぶ)されてしまった。


そのチョコレートの山の中で(かわ)いた笑みを()かべている彼にジャズがいう。


「それよりもあんたね。(つぎ)はちゃんとあたしにも言いなさいよ。こんな大ケガして、生きてるのが奇跡(きせき)じゃないの」


「でも、(きゅう)だったしさ」


「いいからッ! 」


「は、はい……」


(すご)まれたミックスは弱々(よわよわ)しい返事をした。


クリーンの祖母と暮らしていた国では考えられない、強い女性の姿(すがた)がそこにあった。


いや、(ちが)う。


二人は対等(たいとう)なのだ。


たとえ国も文化(ぶんか)も違っていようと、人間らしい付き合いをしているだけ。


それを理解(りかい)したクリーンは、なんだか微笑(ほほ)ましく思うと、挨拶(あいさつ)をして病室(びょうしつ)から出て行く。


なんでもこれから小雪(リトル スノー)散歩(さんぽ)をしなければならないそうだ。


「やっぱ動物を()うって大変よね。って、あぁぁぁッ!」


(きゅう)(さけ)び出したジャズに、ミックスとウェディングが何事(なにごと)かと(たず)ねると――。


「ニコも連れてきてあげればよかった……」


「今からでも(おそ)くないですよ。一度(りょう)(もど)ってまた来ましょう」


「そうね。じゃあ、またすぐ来るから」


「私も行きます~」


「あんたは待ってていいのよ。面倒(めんどう)でしょ」


「なんのなんの。ジャズ姉さんとなら一日中病院と寮を往復(おうふく)しても楽しいですよ」


「よくわからないけど……。じゃあ、(いそ)ごうっか」


それからジャズとウェディングは、ニコを連れてくるために寮へと戻っていた。


(のこ)されたミックスは、チョコレートの山に(うず)もれながら(つぶや)く。


「その前に、こいつをなんとかしてほしいかったなぁ……」


ミックスはまあこんなもんかと思いながら、病室にあったテーブルの上に大量のチョコレートを片付(かたづ)けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ