↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
PR
59/948

#58

それは昨日(きのう)にファミリーレストランで別(わか)れた後のこと――。


さらにミックスが病院(びょういん)へ担(かつ)ぎ込(こ)まれたことと、クリーンのその後の用事(ようじ)は何か関係(かんけい)があったのかということを。


いつもならここで茶々(ちゃちゃ)を入れるはずのウェディングも、ただ黙(だま)ったまま何も言わずに耳を傾(かたむ)けていた。


彼女もジャズと同じように、クリーンに訊(たず)ねるつもりだったのだろう。


いつになく真剣(しんけん)な表情(ひょうじょう)をしている。


「すでに、お気づきになられているようですね。ならばもう隠(かく)しておく必要(ひつよう)もなさそうです」


ジャズとウェディングの顔を見たクリーンは、少し俯(うつむ)くと昨夜(さくや)のことを話し始(はじ)めた。


二人と別れた後、ファミリーレストラン前でミックスの実力(じつりょく)を試(ため)すため彼と戦ったこと。


そしてミックスの適合者(てきごうしゃ)としての力(ちから)を知り、彼に兄を止めてほしいとお願(ねが)いしたことを、申(もう)し訳(わけ)なさそう口にする。


「じゃあ、ミックスせんぱいはクリーンのお兄さんにやられたんだね」


ウェディングの言葉に頷(うなづ)くクリーン。


その表情は酷(ひど)く悲(かな)しそうだった。


だが、それでもジャズは質問(しつもん)を続ける。


「ねえクリーン。実(じつ)はこれと別に、前からずっと訊(き)きたいことがあったんだけど」


「なんでしょう? 私に答(こた)えられることならなんなりと」


「あんたの母親の名前って、もしかしてクリア·ベルサウンドじゃない?」


「母をご存(ぞん)じなのですかッ!?」


驚愕(きょうがく)するクリーンへジャズは答える。


それはまだジャズが少女兵として双子(ふたご)の弟(おとうと)と共に、ストリング帝国(ていこく)にいた頃(ころ)――。


とある戦場(せんじょう)でたった一人で一万(いちまん)もの大軍と戦っていた、約七年前に暴走(ぼうそう)したコンピューターから世界を救(すく)った救世主(きゅうせいしゅ)ことアン·テネシーグレッチを助けるために現(あらわ)れた、クリーンの母であるクリア·ベルサウンドを見た。


そのクリア·ベルサウンドの両手(りょうて)には、白と黒の日本刀(にほんとう)が握(にぎ)られており、およそ人間とは思えぬ力で大軍へと向かって行った。


「あたしはあんたの名前と雰囲気(ふんいき)から、ずっとクリア·ベルサウンドと関係があるんじゃないかと思ってたんだけど。まさかあの人の娘(むすめ)だったなんてね」


「えぇぇぇッ!? クリーンがヴィンテージの娘さんッ!?」


「ちょっとウェディング、落ち着きなさい」


「だってだってッ! えッ、ということは……? ジャズ姉さんはヴィンテージを直接(ちょくせつ)知っているんですかッ!?」


テーブルをバンッと叩(たた)いて突如(とつじょ)喚(わめ)き出すウェディング。


ジャズはそんな彼女をなだめながら持ってきていた紅茶(こうちゃ)に口をつける。


ヴィンテージとは、いまから七年前に起きた戦争(せんそう)――。


アフタークロエ前に起きたコンピューターの暴走を止めた救世主のことである。


その中でも現在(げんざい)でも生存(せいぞん)しているのは、先ほど出てきたアン·テネシーグレッチと、彼女の妹(いもうと)であるストリング帝国の女将軍(しょうぐん)ローズ·テネシーグレッチ。


そして、ジャズの帝国での上司(じょうし)であるノピア·ラシック将軍の三人だけだ。


クリーンの母であるクリア·ベルサウンドは、アン·テネシーグレッチたちと同じくかつて世界を救うためにその命(いのち)を落とした英雄(えいゆう)なのだ。


そんな人物の娘がまさか自分の友人だったとは思いもしなかったのだろう。


ウェディングはその場でパニックを起こし、あわわと動き回(まわ)っている。


「ったく、あんただってハザードクラスでしょうが。ホントっとそういうとこの感性(かんせい)はズレてるわよね……」


ジャズはウェディングの過剰(かじょう)な慌(あわ)てぶりに辟易(へきえき)していた。


それをいうならウェディングも、ハザードクラスというバイオニクス共和国(きょうわこく)から最(もっと)も優秀(ゆうしゅう)な人間と認定(にんてい)されている最高クラスの能力を持つ五人の中の一人なのだ。


どうもこのいつも騒(さわ)がしい娘は、自分を棚(たな)に上げる癖(くせ)がある。


「しかし、だからこそ……そんな彼女だからこそ、私と仲良(なかよ)くなってくれたのかもしれません」


そう呟(つぶや)くようにいうクリーン。


ジャズはそんな彼女を見て微笑(ほほえ)むと、喚くウェディングを押さえ込む。


「コラッ! いつまで騒がしくしているつもりよッ! あんたのせいで話が進まないでしょうッ!」


「ね、姉さん……。の、喉(のど)はマズいです。息が……できなく……な……」


笑いながらウェディングの首(くび)を絞(し)めるジャズ。


クリーンは、そんな彼女もまたウェディングと同じところがあると思い、ついクスッと笑ってしまっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。