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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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59/948

#58

それは昨日(きのう)にファミリーレストランで(わか)れた後のこと――。


さらにミックスが病院(びょういん)(かつ)()まれたことと、クリーンのその後の用事(ようじ)は何か関係(かんけい)があったのかということを。


いつもならここで茶々(ちゃちゃ)を入れるはずのウェディングも、ただ(だま)ったまま何も言わずに耳を(かたむ)けていた。


彼女もジャズと同じように、クリーンに(たず)ねるつもりだったのだろう。


いつになく真剣(しんけん)表情(ひょうじょう)をしている。


「すでに、お気づきになられているようですね。ならばもう(かく)しておく必要(ひつよう)もなさそうです」


ジャズとウェディングの顔を見たクリーンは、少し(うつむ)くと昨夜(さくや)のことを話し(はじ)めた。


二人と別れた後、ファミリーレストラン前でミックスの実力(じつりょく)(ため)すため彼と戦ったこと。


そしてミックスの適合者(てきごうしゃ)としての(ちから)を知り、彼に兄を止めてほしいとお(ねが)いしたことを、(もう)(わけ)なさそう口にする。


「じゃあ、ミックスせんぱいはクリーンのお兄さんにやられたんだね」


ウェディングの言葉に(うなづ)くクリーン。


その表情は(ひど)(かな)しそうだった。


だが、それでもジャズは質問(しつもん)を続ける。


「ねえクリーン。(じつ)はこれと別に、前からずっと()きたいことがあったんだけど」


「なんでしょう? 私に(こた)えられることならなんなりと」


「あんたの母親の名前って、もしかしてクリア·ベルサウンドじゃない?」


「母をご(ぞん)じなのですかッ!?」


驚愕(きょうがく)するクリーンへジャズは答える。


それはまだジャズが少女兵として双子(ふたご)(おとうと)と共に、ストリング帝国(ていこく)にいた(ころ)――。


とある戦場(せんじょう)でたった一人で一万(いちまん)もの大軍と戦っていた、約七年前に暴走(ぼうそう)したコンピューターから世界を(すく)った救世主(きゅうせいしゅ)ことアン·テネシーグレッチを助けるために(あらわ)れた、クリーンの母であるクリア·ベルサウンドを見た。


そのクリア·ベルサウンドの両手(りょうて)には、白と黒の日本刀(にほんとう)(にぎ)られており、およそ人間とは思えぬ力で大軍へと向かって行った。


「あたしはあんたの名前と雰囲気(ふんいき)から、ずっとクリア·ベルサウンドと関係があるんじゃないかと思ってたんだけど。まさかあの人の(むすめ)だったなんてね」


「えぇぇぇッ!? クリーンがヴィンテージの娘さんッ!?」


「ちょっとウェディング、落ち着きなさい」


「だってだってッ! えッ、ということは……? ジャズ姉さんはヴィンテージを直接(ちょくせつ)知っているんですかッ!?」


テーブルをバンッと(たた)いて突如(とつじょ)(わめ)き出すウェディング。


ジャズはそんな彼女をなだめながら持ってきていた紅茶(こうちゃ)に口をつける。


ヴィンテージとは、いまから七年前に起きた戦争(せんそう)――。


アフタークロエ前に起きたコンピューターの暴走を止めた救世主のことである。


その中でも現在(げんざい)でも生存(せいぞん)しているのは、先ほど出てきたアン·テネシーグレッチと、彼女の(いもうと)であるストリング帝国の女将軍(しょうぐん)ローズ·テネシーグレッチ。


そして、ジャズの帝国での上司(じょうし)であるノピア·ラシック将軍の三人だけだ。


クリーンの母であるクリア·ベルサウンドは、アン·テネシーグレッチたちと同じくかつて世界を救うためにその(いのち)を落とした英雄(えいゆう)なのだ。


そんな人物の娘がまさか自分の友人だったとは思いもしなかったのだろう。


ウェディングはその場でパニックを起こし、あわわと動き(まわ)っている。


「ったく、あんただってハザードクラスでしょうが。ホントっとそういうとこの感性(かんせい)はズレてるわよね……」


ジャズはウェディングの過剰(かじょう)(あわ)てぶりに辟易(へきえき)していた。


それをいうならウェディングも、ハザードクラスというバイオニクス共和国(きょうわこく)から(もっと)優秀(ゆうしゅう)な人間と認定(にんてい)されている最高クラスの能力を持つ五人の中の一人なのだ。


どうもこのいつも(さわ)がしい娘は、自分を(たな)に上げる(くせ)がある。


「しかし、だからこそ……そんな彼女だからこそ、私と仲良(なかよ)くなってくれたのかもしれません」


そう(つぶや)くようにいうクリーン。


ジャズはそんな彼女を見て微笑(ほほえ)むと、喚くウェディングを押さえ込む。


「コラッ! いつまで騒がしくしているつもりよッ! あんたのせいで話が進まないでしょうッ!」


「ね、姉さん……。の、(のど)はマズいです。息が……できなく……な……」


笑いながらウェディングの(くび)()めるジャズ。


クリーンは、そんな彼女もまたウェディングと同じところがあると思い、ついクスッと笑ってしまっていた。

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