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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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45/948

#44

それからしばらくの間(あいだ)、ミックスたちは他愛(たあい)もない会話(かいわ)を続けた。


ミックスがジャズにこの国へ留学(りゅうがく)してみてどうか? とか。


ウェディングがミックスとジャズは付き合っているのかを本当のところを教(おし)えてほしい、とか。


その質問(しつもん)に大慌(おおあわ)てした二人を見て、皆(みな)が楽しそうに笑ったりとか。


そんな時間をレストランで過(す)ごした。


その後、店を出ることに決めた一行(いっこう)。


ジャズとウェディングは寮(りょう)へ帰ると言い、クリーンは用事(ようじ)があるのでとミックスと共(とも)に二人を見送(みおく)ることに。


「それじゃクリーン、またね。それからあんたも」


「うん。またなにかあればニコのことを預(あず)かるよ。そのときは前みたいにうちでご飯(はん)でも食べよう」


「だからぁ……そういうこというから誤解(ごかい)されるんだろうがッ!」


「ぎゃぁぁぁッ!」


ミックスは挨拶(あいさつ)ていどにいったつもりだったのだが。


ジャズは彼の発言(はつげん)に顔を真(ま)っ赤(か)にしてゴンッと頭突(ずつき)きを喰(く)らわせた。


ジャズはその後にプンプン怒(おこ)りながら、さっさとその場を立ち去(さ)っていく。


「な、なんで……俺(おれ)がこんな目に……?」


たった一撃(いちげき)でボロボロになったミックスは、呻(うめ)きながら不条理(ふじょうり)だと呟(つぶや)いていた。


「う~ん、ミックスせんぱいが乙女心(おとめごころ)を理解(りかい)するのはとうぶん先みたいですね」


そんなミックスを見たウェディングは、嬉(うれ)しそうにそういうと、ニコを抱(だ)いてジャズの背中(せなか)を追いかけて行った。


残(のこ)されたミックスは、頭(あたま)の痛(いた)みから立ち直(なお)るとクリーンのほうを向く。


なんだかボーとしていそうだったが、その顔には笑みがこぼれていた。


「えーと、クリーンはこの後に用事(ようじ)があるんだっけ?」


クリーンは黙(だま)ったままコクッと頷(うなづ)くと、彼女の隣(となり)にいたスノーも同じように首(くび)を上下(じょうげ)させた。


ミックスは思う。


こんな可愛(かわい)らしい女の子が天ぷらうどんを三十杯(ぱい)以上(いじょう)も食べるとは。


あの量(りょう)の麺(めん)は一体(いったい)身体のどこに入っているんだろう?


(それよりも、その大食いのせいでの今月も節約(せつやく)しなきゃだなぁ……)


「あの……うどん、ごちそうさまでした」


ミックスが一人しょげているとクリーンが声をかけてきた。


彼女はお礼(れい)をいうと丁寧(ていねい)にその頭(あたま)を下げ、スノーもそれに続いていた。


クリーンが頭を下げたため、彼女の白い髪(かみ)がバサッと揺(ゆ)れる。


(キレイな髪だなぁ。真(ま)っ白(しろ)で、まるで雪(ゆき)みたいだ)


ミックスはクリーンの髪を見ながら、顔を上げた彼女を見て思わず頬(ほお)を染(そ)めてしまう。


よく見るとジャズやウェディングと違(ちが)って、全(まった)く化粧(けしょう)っ気(け)がない(二人もそんなに濃(こ)いメイクはしていないが)。


表情(ひょうじょう)もどこかぼんやりとしていて、ぱっと見はどこにでもいそうな脱力系(だつりょくけい)女子(じょし)なのだが。


クリーンの持つ雰囲気(ふんいき)には、どこか今にも消えてしまいそうな儚(はかな)さがあった。


「いいよいいよ。でも、今回だけかなぁ。正直(しょうじき)あんな量(りょう)をおごり続けたら俺が破産(はさん)しちゃうからね」


ミックスが少し照(て)れながら返事をすると、クリーンはクスッと上品(じょうひん)に笑った。


ジャズやウェディングも礼儀(れいぎ)作法(さほう)はしっかりしていたが、クリーンとはまた別(べつ)だ。


きっとこの子は良いところのお嬢(じょう)さんなのだろう。


こうして佇(たたず)まいを見ているだけで、訓練(くんれん)ではなく生活から礼儀(れいぎ)を重(おも)んじている――そんなことを思わせる仕草(しぐさ)や態度(たいど)である。


「って、こんなことをジャズの前でいったらまた頭突きを喰らいそうだけど……」


「どうかしましたか?」


「いや!? なんでもないよッ!」


慌てて誤魔化(ごまか)そうとするミックスを見たクリーンは、またクスリと上品に笑い、右手をスノーのほうへと伸(の)ばす。


ミックスはそんな彼女を見て、なぜ手を伸ばしているのだろうと不思議(ふしぎ)に思っていた。


「でも、よかったです。話に聞いていた“適合者(てきごうしゃ)”さんがこんなに優(やさ)しい人で……」


そう呟(つぶや)くように言ったクリーン。


すると、犬のスノーの身体が日本刀(にほんとう)へと変化(へんか)し、彼女の手へと握(にぎ)られた。

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