↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
PR
44/948

#43

それからウェディングがチョコレートケーキとドリンクバー、ニコとスノーは枝豆(えだまめ)を注文(ちゅうもん)。


ミックスとジャズはドリンクバーのみで、クリーンは天ぷらうどんを頼(たの)んだ。


「ニコはロボだからいいけど、スノーは枝豆なんか食べて大丈夫(だいじょうぶ)なの?」


「この子は特別(とくべつ)なんです。塩分(えんぶん)を抑(おさ)えればさして問題(もんだい)はないと思います」


メニュー表(ひょう)であるバーチャル画面(がめん)――宙(ちゅう)に浮(う)いているタッチパネルには塩分控(ひめ)えめという項目(こうもく)があった。


注文するときにこの表示(ひょうじ)を押せば、選(えら)ばれた品(しな)に反映(はんえい)されるのだろう。


それにしてもなぜ羊(ひつじ)と犬が枝豆を選んだのか。


ミックスは羊は草、犬は肉じゃないのかと考える。


(う~ん、俺が変(へん)なのかなぁ。動物のことはよくわかんないや)


結局(けっきょう)よくわからないまま彼はドリンクを取りに向かった。


そして、ジャズの分(ぶん)の紅茶(こうちゃ)と自分の分のココアを持って席(せき)へと戻(もど)る。


「ついでにジャズのも取ってきたよ。って、なんだこりゃッ!?」


席に戻ったミックスは驚愕(きょうがく)した。


なぜならば先ほどはなかったはずの鉢(はち)が、山のように積(つ)み上げられていたからだ。


「ごちそうさまでした」


丁寧(ていねい)におじきをして箸(はし)を置くクリーン。


どうやらこの鉢はすべて彼女の食べたうどんのもののようだ。


ミックスが顔を引きつらせながら、クリーンはいつもこんなに食べるのかと訊(たず)ねた。


するとクリーンが答(こた)える前に、ウェディングは嬉(うれ)しそうに声をあげる。


「クリーンの本気(ほんき)はこんなもんじゃありませんよッ! この子はこんなレストランくらい余裕(よゆう)で閉店(へいてん)にできますッ!」


「そうなのか……。俺(おれ)はそうとは知らずに、いくらでも食べていいとかいっちゃったよ……」


「いや~たくさん食べる女の子って最高(さいこう)にカワイイですよねッ!」


ミックスは思う。


大人(おとな)しそうに見えてもやはりウェディングの友だちだ。


このくらいのことは予測(よそく)しておくべきことだった。


「ああ……これでまたほしかった調理(ちょうり)器具(きぐ)が買えなくなっちゃったよぉ……」


「ふん、見栄(みえ)を張(は)るからよ」


ジャズはそういった後に、さりげなく紅茶を持ってきてくれたことをお礼を伝えたが、今のミックスの耳には入っていなかった。


テーブルの上に積み上げられた空(から)のうどん鉢を見ながら、今にも魂(たましい)が抜(ぬ)けてしまいそうになっている。


「でもまあ、こんなもんだよね……ハハハ……」


そして、呟(つぶや)くようにそう言い、いつもの乾(かわ)いた笑みを浮(う)かべる。


そんな彼を見ていたジャズは、またふんっと鼻(はな)を鳴(な)らすのであった。


それから今さらながら、ようやくクリーンとスノーの自己(じこ)紹介(しょうかい)に入る。


彼女のフルネームはクリーン·ベルサウンドといい、ウェディングとは今の通(かよ)っている中等部(ちゅうとうぶ)で一年生の頃(ころ)からの付き合いらしい。


「彼女との出会いは、爆弾(ばくだん)が落っこちたときみたいに大事件(だいじけん)だったんですよ!」


ウェディングは声を張(は)り上げ、彼女との出会ったときのことを話し始(はじ)めた。


ジャズはすでにクリーンのことを聞いていたようで、「また話すのか」という顔でウェディングを見ている。


――それは今から約(やく)二年前、ウェディングが今も住(す)む寮(りょう)でのことだった。


寮には、屋内(おくない)プールがあり、コンピューターが管理(かんり)しているのもあって、二十四時間使用(しよう)可能(かのう)のなのだそうだ。


ウェディングは寮での消灯(しょうとう)時間後に、誰もいないプールで思いっきり楽しみたいと考え、こっそりと泳(およ)ぎにいった。


さすがに照明(しょうめい)は消されていて薄暗(うすぐら)い灯(あか)りだけの状態(じょうたい)だったが、むしろナイトプールみたいだとウェディングは喜(よろこ)んで水面(すいめん)へと飛び込(こ)む。


それから一人で楽しんでいると、目の前にうつぶせになって浮(う)いている人間が見えたそうだ。


それはまったく微動(びどう)だにせず、ただそのまま水面をプカプカと漂(ただよ)っていた。


ウェディングは全(まった)く動かないそれを見て死体(したい)だと勘違(かんちが)いし、共和国(きょうわこく)の治安(ちあん)を維持(いじ)する組織(そしき)――監視員(バックミンスター)に通報(つうほう)。


だが、それは死体ではなく、この寮――ウェディングと同じ学校に通うこととなったばかりのクリーンだった。


勘違いだったことを安心していたウェディングだったが。


当然(とうぜん)そんな時間にプールを使用していた彼女はクリーンと共に大目玉(おおめだま)を喰(く)らい、それがきっかけでよく話すようになったそうだ。


「う~ん、とてもウェディングらしいそそっかしいエピソードだなぁ……」


「前に聞いてあたしが気になったのは、プールで泳がずにただ浮いていたクリーンのほうだったわ……」


話を聞いたミックスは、ジャズと共に乾いた笑みを浮かべていた。


「いや~そういわれる照(て)れますな~」


「あたし、ぜんぜん褒(ほ)めてないんだけど……」


「うん……なぜ今の反応(はんのう)ので自分が照れたのかを考えてみよう、ウェディング……」


クリーンはそんな三人のやりとりを、実(じつ)に楽しそうに見ているのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。