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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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43/948

#42

それから三人と一匹(いっぴき)はジャズがいるファミリーレストランへと到着(とうちゃく)。


少し待たされたせいなのか、それとも校則(こうそく)違反(いはん)の話がうまくいかなかったの、相変(あいか)わらず不機嫌(ふきげん)そうな顔をしているジャズと電気(でんき)仕掛(じか)け仔羊(こひつじ)ニコが店の出入り口の前に立っていた。


すると、今まで大人(おとな)しくしていた真(ま)っ白(しろ)な犬が、ニコに向かって飛び出していく。


そして、その身体を覆(おお)っている豊(ゆた)かな毛(け)にじゃれながら嬉(うれ)しそうに鳴(な)いていた。


そのあまりのはしゃぎっぷりに、ニコも困(こま)っていそうだ。


「こらこら、ダメですよスノー。いきなり飛びつくなんてお行儀(ぎょうぎ)が悪いです」


それを見て、今まで静観(せいかん)していたウェディングの友人と思われる白い髪(かみ)の女子学生が、そのスノーと呼ばれた白い犬をなだめる。


ミックスはといえば、そんな彼女と白い犬を見て首(くび)を傾(かし)げていた。


この子とこの犬は何者?


そんな表情(ひょうじょう)で彼女たちを見ている。


「あれ? キミは……ニコの知り合い?」


ミックスがそう訊(たず)ねると、ジャズが彼に鋭(するど)い眼差(まなざい)しを向けた。


それでビクッと仰(のけ)け反(ぞ)ったミックスを見たジャズは、次(つぎ)にウェディングのほうを向く。


「そんな怖(こわ)い顔しないでくださいよ~。遅(おく)れたことはちゃんとあやまりますから~」


「そうじゃなくてさ。ウェディング、あんた。ちゃんとクリーンのことをこいつに紹介(しょうかい)したのよね?」


ジャズに睨(にら)まれたウェディングは首を左右(さゆう)に振(ふ)りながら、難(むずか)しい顔をして思い出そうとしている。


「あれ~どうだったかな~? ごめんなさい、忘(わす)れてました」


「忘れてんじゃないわよッ! 今日だってクリーンがこいつに会ってみたいっていうからこうやって集(あつ)まったんでしょうがッ!?」


どうやらジャズがいうに――。


ミックスをファミリーレストランに誘(さそ)った理由(りゆう)は、この白い髪の少女に会わせるためだったようだ。


それからもジャズは、目的(もくてき)をすっかり忘れていたウェディングを注意(ちゅうい)した。


だが、彼女は悪(わる)びれる様子(ようす)もなくのほほんとしている。


暖簾(のれん)に腕(うで)押しとはこのことだと思ったジャズは、大きくため息(いき)をついてとりあえず店に入ろうと言った。


扉(とびら)を開けたジャズに続いてウェディング、白い髪の少女――クリーン、そしてニコとスノーも店に入って行く。


「そういえばあの白い髪の子……。ずっと後ろからついて来てたもんな……。まあ、紹介をし忘れるってウェディングらしいけど……」


そう独(ひと)り言(ごと)を呟(つぶや)くと――。


乾(かわ)いた笑みを浮(う)かべたミックスは、彼女たちの後を追って店へと入った。


ちなみにジャズたちがよく来るこのファミリーレストランには、愛玩(あいがん)動物(どうぶつ)を連れて入ることが可能(かのう)である。


それは店内(てんない)に敷居(しきい)を設(もう)け、ペットあり席(せき)とペットなし席で分けているからだ。


アフタークロエ以前から人口(じんこう)が少なったこの世界では、動物や動物型(がた)ロボを家族としている者が多いため、世界中でどの国でもこのようなエリア分けが当たり前にされている。


ミックスたちは当然(とうぜん)ペットありエリアの席へ。


六人がけのテーブル席に座(すわ)る。


「あ~お腹(なか)空(す)いた~。早速(さっそく)ジャンジャン食べましょう!」


「いや、別(べつ)に食べるのが目的(もくてき)でここへ来たじゃないから……。それに、今から食べると夕食(ゆうしょく)が胃(い)に入らなくなるわよ」


「ダイジョブダイジョブッ! 夜ごはんと午後のごはんは別腹(べつばら)なんですよ~」


「それ、別腹の使い方が間違(まちが)ってない?」


ジャズの言葉を無視(むし)したウェディングは、テーブルから浮(う)かび上がったバーチャル画面(がめん)――タッチパネルで注文(ちゅうもん)するメニューを眺(なが)め出していた。


ジャズもニコとタッチパネルを見せて、何を食べたいかを訊いている。


そんな中、クリーンだけは何もせずにただ浮かび上がったタッチパネルを見ているだけだった。


気になったミックスが彼女に訊ねると――。


「実は、エレクトロフォンの残金(ざんきん)がもうないんです。だから何も頼(たの)めません」


申(もう)し訳(わけ)なさそういうクリーン。


そんな彼女につられてか、犬のスノーまで心(こころ)苦(ぐる)しそうに呻(うめ)いていた。


バイオニクス共和国(きょうわこく)では通貨(つうか)や紙幣(しへい)はなく、すべてデジタルで支払いを行(おこうな)う。


基本的には誰もが持っている携帯端末――エレクトロフォンを使って料金を支払うシステムだ。


したがってエレクトロフォン内の残金がなくなれば、再び増やさないと何も買うことができない。


クリーンとスノーを見ていられなくなったミックスは、彼女たちの分(ぶん)は自分が払(はら)うから、いくらでも好きなものを注文するようにと伝(つた)えた。


「さっすがミックスせんぱい! クリーンも気にせずここはせんぱいにおごってもらいましょう!」


「ふん、相変わらず女の子に弱(よわ)い奴(やつ)……」


「まあまあジャズ姉さん。妬(や)かない妬かない」


「なッ!? だれが妬いてるのよ! そういう誤解(ごかい)されるようなこと言うのやめてくんないッ!」


「いやいや、姉さんはいつも通(とお)りカワイイですな~」


ミックスの発言(はつげん)にムッとしたジャズをからかうウェディング。


その様子を見てクリーンはつい笑ってしまい、ニコを懐(ふところ)に抱(だ)いているスノーも喜(よろこ)びでワンと吠(ほ)える。


そんな微笑(ほほえ)ましい光景(こうけい)をミックスも見ていた。


(あまり無駄(むだ)遣(づか)いはしたくないけど、まあファミレスの料理くらい大した額(がく)じゃないよね)


だが彼は、彼女におごると言ってしまったのを、これから後悔(こうかい)することになる。

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