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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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42/948

#41

ジャガーがいなくなった後。


ウェディングがミックスをファミリーレストランに行かないかと誘(さそ)った。


ちょうどこれからジャズとそのお店で合流(ごうりゅう)するそうで、時間があるならぜひ来てほしいという。


「いいよ。それにしてもジャズはどうして一緒(いっしょ)じゃないの? 寮(りょう)で同室(どうしつ)だから、いつも一緒に登下校(とうげこう)してるって言ってたじゃん」


「それがですね……。ジャズ姉さんは……」


それからウェディングがいうに――。


ジャズは校則(こうそく)違反(いはん)を繰(く)り返したため、放課後(ほうかご)に教師(きょうし)たちから厳重(げんじゅう)注意(ちゅうい)を受けているらしい。


ウェディングやジャズが籍(せき)をおく学校は、このバイオニクス共和国(きょうわこく)の中でも優秀(ゆうしゅう)な者しか入れないエリート校である。


さらに幼稚園(ようちえん)から大学までエスカレーター式(しき)であり、将来(しょうらい)的(てき)には国の重要(じゅうよう)なポジションが約束(やくそく)されている学校だ。


彼女は現在(げんざい)その学校の中学生で、いわば勝ち組である(ちなみにジャズは高等部(こうとうぶ)でストリング帝国(ていこく)からの留学生(りゅうがくせい))。


ミックスが通(かよ)っている戦災孤児(せんさいこじ)のための学校と比(くら)べると、授業(じゅぎょう)内容(ないよう)も将来性も雲泥(うんでい)の差(さ)だ。


そのため校則は厳(きび)しく、本来(ほんらい)なら他校(たこう)の生徒と話をするだけでも校則違反なのだが、この校則だけはあまり守(まも)られていない。


ミックスがジャズがどんな校則違反をしたのかを訊(たず)ねると、ウェディングは言いづらそうに答(こた)えた。


ジャズはスカートの下にスパッツを穿(は)き、おまけにナイフや小型(こがた)の電磁波(でんじは)放出(ほうしゅつ)銃(じゅう)などの武器(ぶき)を身に付けて学校へ登校(とうこう)していたそうだ。


ミックスはスパッツはまだしも、さすがに武装(ぶそう)して学校へ行くジャズの神経(しんけい)を心配(しんぱい)する。


「でも、姉さんはストリング帝国からの留学生で元々(もともと)軍人(ぐんじん)さんですし、先生たちもしょうがないとは思わないんですかね?」


「うん、思わないと思うよ。ウェディングはなぜ思わないかをよ~く考えてみよう」


ミックスは教師たちのジャズに対(たい)する態度(たいど)に、不思議(ふしぎ)そうにしているウェディングに呆(あき)れた。


(この子は、相変(あいか)わらず常識(じょうしき)がないなぁ……。まあ、そこが良(よ)いとこだったりもするんだけど)


ミックスはそう内心(ないしん)で思いながら考えてみる。


たしかに、ミックスたちが住(す)むバイオニクス共和国と、ジャズの住んでいたストリング帝国とでは、現在(げんざい)和平(わへい)協定(きょうてい)を結(むす)んではいるが、戦勝国(せんしょうこく)である共和国側(がわ)に優位(ゆうい)な条件(じょうけん)での協定である。


そんな緊張(きんちょう)状態(じょうたい)での留学など、入学早々(そうそう)に他(ほか)の生徒から何をされるかわからないと、身構(みがま)えてしまうのはわからないでもないのだが。


それでも銃やナイフはやり過(す)ぎだと、ミックスは大きくため息(いき)をついていた。


「まあ、ジャズらしいといえばジャズらしいね」


「ですよね~。帰りぎわに高等部の職員室(しょくいんしつ)をのぞいてきましたけど。姉さんは真面目(まじめ)に学校での武装の必要性(ひつようせい)について説(と)いてましたよ~。いや~ホントにジャズ姉さんらしいです!」


「なに、そこで討論(とうろん)しちゃうの……」


武装の必要性を教師に問(と)うジャズ。


ミックスはさらに彼女の将来(しょうらい)が心配になっていた。


だがしかし、ストリング帝国ではそれが当たり前なのかもしれない。


両国の文化(ぶんか)の違いは、これからのジャズにとって大変な苦労(くろう)することが多いだろう。


なら、少しで彼女の負担(ふたん)を減(へ)らすことができればいいなと、ミックスは考えていた。


そのとき、ウェディングがエレクトロフォンを手に取って何やら確認(かくにん)している。


「あッ、ジャズ姉さんから連絡(れんらく)が来てました。どうやらもうファミレスにいるみたいですよ」


「じゃあ、待たせちゃまずいなぁ。ちょっと急(いそ)ごうか」


「はいのはいのは~い~!」


そして、ミックスとウェディングの後ろを、何も言わずについて行く白い髪(かみ)の女子学生。


その髪には鐘(かね)を模(も)した髪飾(かざ)りが見える。


ウェディングは彼女のことを忘(わす)れてしまったのか、ミックスに紹介(しょうかい)すらしていないままだ。


普通(ふつう)なら怒(おこ)るか会話に割って入っていくだが、彼女はそんなことはせずにただ静観(せいかん)していただけだった。


「大丈夫(だいじょうぶ)ですよスノー。きっとうまくいきます。そんな気がするんです……」


彼女はいつの間(ま)にか現(あらわ)れた真(ま)っ白(しろ)な犬の頭(あたま)を撫(な)でながら、二人の背中(せなか)を見てそう呟(つぶや)いた。

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