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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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41/948

#40

春が終わり、すっかり陽射(ひざ)しが強くなってきた午後(ごご)。


居残(いのこ)り授業(じゅぎょう)を受けさせられていたミックスは、友人でありクラスメイトでもあるジャガーと共(とも)に帰宅(きたく)していた。


二人ともさすがに暑(あつ)くなってきているので、いつも着ている学校指定(してい)の作業用(さぎょうよう)ジャケットは身に付けてはいない。


「うぅ、一生(いっしょう)懸命(けんめい)やってるのになぁ……」


たとえどんなに成績(せいせき)が悪くとも、真面目(まじめ)に授業を受けている自分がなぜ居残りをさせられているのか。


ミックスは、そんな不条理(ふじょうり)を一人嘆(なげ)きながらトボトボ歩く。


「まあ、そういうなミックス。居残りもそう悪いもんじゃないさ」


ジャガーがそんなミックスを見て彼の肩(かた)をポンポンと叩(たた)く。


そして、今にも眠(ねむ)りそうだった目が急(きゅう)に輝(かがや)き出した。


「なんてったってアミノ先生と放課後(ほうかご)に残(のこ)れるんだぞ! 今日だってお前が問題(もんだい)を解(と)けないだけで泣き出してさ。最高(さいこう)じゃないかッ!」


「何がどう最高なの……?」


「わかんねえかな~。よし、説明(せつめい)してやろう。女の涙(なみだ)ってのは、メイド服(ふく)やバニースーツ並(な)みの破壊力(はかいりょく)があるんだぞ」


「いや、俺(おれ)は泣いている女性(じょせい)を見てると、自分が悪いわけでもないのに申(もう)し訳(わけ)なくて、すっごくいたたまれなくなるけど……」


「ああッ神よ! こんなわかっていない奴(やつ)に恋人など与(あた)えず、どうかこのジャガーにドジっ子泣き虫クールビューティーツンデレで、さらにメシマズ属性(ぞくせい)のツルペタ金髪(きんぱつ)ロリの彼女を与えたまえッ!」


「ジャガーって、性癖(せいへき)が偏(かたよ)ってるね……。その上、範囲(はんい)も狭(せま)いようで広い」


「なにをいうッ! これでもまだかなり妥協(だきょう)しているんだぞッ!」


ミックスは、なぜ自分はこの男を友人にしているのかわからなくなっていた。


趣味(しゅみ)も性格(せいかく)も、学校での話題(わだい)さえ合わない。


そんな合わないづくしだというのに、いつも一緒(いっしょ)にいる。


人同士(どうし)の縁(えん)とはまこと不思議(ふしぎ)なものだと、また眠たそうな顔に戻(もど)ったジャガーの横顔(よこがお)を見て思う。


「でもまあ、こんなもんだよね……ハハハ……」


そして、ミックスが考えた結果(けっか)。


呟(つぶや)くようにそう言い、いつもの乾(かわ)いた笑みを浮(う)かべるのであった。


それからミックスがふと前を見てみると、前方(ぜんぽう)から学生服姿(すがた)の女子が二名こちらに向かって来ていた。


そのうちの一人は、これでもかというほどミックスへ大きく手を振(ふ)っている。


「せんぱ~い! いま帰りですか?」


「ああ、居残りでね。ウェディングもそうなの?」


二人の女子うちの一人の名はウェディング。


ミックスたちとは違(ちが)う学校だが、あることがきっかけで彼を慕(した)うようになった中等部(ちゅうとうぶ)の女子生徒(せいと)だ。


ウェディングが友だちとブラブラしていた答えると、ジャガーがミックスの肩に手を回(まわ)す。


そして、非常(ひじょう)に響(ひび)く低音(ていおん)でミックスに耳打(みみう)ちをしてきた。


「おいミックス。お前……こないだいってたメシマズ彼女の他(ほか)にも、まさか女がいたのか?」


「なにを誤解(ごかい)してんだよ!? ウェディングはただの後輩(こうはい)で、そのメシマズの子もただの友だちだよ!?」


「うるさいこのリア充(じゅう)めッ! 爆発(ばくはつ)しろッ!」


二人が言い合っていると、ウェディングがなぜかジャガーの顔をじっと覗(のぞ)き込(こ)んでいた。


彼女はジャガーの顔を見て、何か思い出そうとしているような態度(たいど)だ。


「ジー」


「ん、なにかな~? まさかオレに惚(ほ)れちゃったとか?」


「ジー」


「おいおい、初対面(しょたいめん)の男をそうジロジロ見るもんじゃないぜ。さすがのオレも恥(は)ずかしくなってきちまうだろ?」


「ジー」


ウェディングはジャガーが何を言おうが、彼のことを見続(みつづ)けていた。


ジーと口にしながら見られ続け、さすがのジャガーも困(こま)ってしまっている。


しまいには、冷(ひ)や汗(あせ)まで出て顔色(かおいろ)も悪くなっていた。


「お兄さんはミックスせんぱいの同級生(どうきゅうせい)ですか?」


「そ、そうだけど……それがどうしたのかなぁ~?」


「う~ん、お兄さんの顔ってどこかで見たことある気がするんですよね。しかもよ~く知っている感じぃ」


「ま、まあオレの顔って、よくいる顔っちゃよくいる顔だからなぁ~。そ、それじゃ邪魔者(じゃまもの)はこの辺(へん)で帰ることするわ。また明日(あした)なミックス」


ジャガーはそういうと、その場からあり得(え)ないほどの速(はや)さで消えていった。


(逃(に)げたなジャガー。お前もしょせんは俺と同じ男子高校生よ)


そんな彼の背中(せなか)を見たミックスは、何やらよくわからないがウェディングには――いや女の子にはジャガーでも勝てないと深(ふか)く頷(うなづ)くのであった。

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