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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
44/948

#43

それからウェディングがチョコレートケーキとドリンクバー、ニコとスノーは枝豆(えだまめ)注文(ちゅうもん)


ミックスとジャズはドリンクバーのみで、クリーンは天ぷらうどんを(たの)んだ。


「ニコはロボだからいいけど、スノーは枝豆なんか食べて大丈夫(だいじょうぶ)なの?」


「この子は特別(とくべつ)なんです。塩分(えんぶん)(おさ)えればさして問題(もんだい)はないと思います」


メニュー(ひょう)であるバーチャル画面(がめん)――(ちゅう)()いているタッチパネルには塩分(ひめ)えめという項目(こうもく)があった。


注文するときにこの表示(ひょうじ)を押せば、(えら)ばれた(しな)反映(はんえい)されるのだろう。


それにしてもなぜ(ひつじ)と犬が枝豆を選んだのか。


ミックスは羊は草、犬は肉じゃないのかと考える。


(う~ん、俺が(へん)なのかなぁ。動物のことはよくわかんないや)


結局(けっきょう)よくわからないまま彼はドリンクを取りに向かった。


そして、ジャズの(ぶん)紅茶(こうちゃ)と自分の分のココアを持って(せき)へと(もど)る。


「ついでにジャズのも取ってきたよ。って、なんだこりゃッ!?」


席に戻ったミックスは驚愕(きょうがく)した。


なぜならば先ほどはなかったはずの(はち)が、山のように()み上げられていたからだ。


「ごちそうさまでした」


丁寧(ていねい)におじきをして(はし)を置くクリーン。


どうやらこの鉢はすべて彼女の食べたうどんのもののようだ。


ミックスが顔を引きつらせながら、クリーンはいつもこんなに食べるのかと(たず)ねた。


するとクリーンが(こた)える前に、ウェディングは(うれ)しそうに声をあげる。


「クリーンの本気(ほんき)はこんなもんじゃありませんよッ! この子はこんなレストランくらい余裕(よゆう)閉店(へいてん)にできますッ!」


「そうなのか……。(おれ)はそうとは知らずに、いくらでも食べていいとかいっちゃったよ……」


「いや~たくさん食べる女の子って最高(さいこう)にカワイイですよねッ!」


ミックスは思う。


大人(おとな)しそうに見えてもやはりウェディングの友だちだ。


このくらいのことは予測(よそく)しておくべきことだった。


「ああ……これでまたほしかった調理(ちょうり)器具(きぐ)が買えなくなっちゃったよぉ……」


「ふん、見栄(みえ)()るからよ」


ジャズはそういった後に、さりげなく紅茶を持ってきてくれたことをお礼を伝えたが、今のミックスの耳には入っていなかった。


テーブルの上に積み上げられた(から)のうどん鉢を見ながら、今にも(たましい)()けてしまいそうになっている。


「でもまあ、こんなもんだよね……ハハハ……」


そして、(つぶや)くようにそう言い、いつもの(かわ)いた笑みを()かべる。


そんな彼を見ていたジャズは、またふんっと(はな)()らすのであった。


それから今さらながら、ようやくクリーンとスノーの自己(じこ)紹介(しょうかい)に入る。


彼女のフルネームはクリーン·ベルサウンドといい、ウェディングとは今の(かよ)っている中等部(ちゅうとうぶ)で一年生の(ころ)からの付き合いらしい。


「彼女との出会いは、爆弾(ばくだん)が落っこちたときみたいに大事件(だいじけん)だったんですよ!」


ウェディングは声を()り上げ、彼女との出会ったときのことを話し(はじ)めた。


ジャズはすでにクリーンのことを聞いていたようで、「また話すのか」という顔でウェディングを見ている。


――それは今から(やく)二年前、ウェディングが今も()(りょう)でのことだった。


寮には、屋内(おくない)プールがあり、コンピューターが管理(かんり)しているのもあって、二十四時間使用(しよう)可能(かのう)のなのだそうだ。


ウェディングは寮での消灯(しょうとう)時間後に、誰もいないプールで思いっきり楽しみたいと考え、こっそりと(およ)ぎにいった。


さすがに照明(しょうめい)は消されていて薄暗(うすぐら)(あか)りだけの状態(じょうたい)だったが、むしろナイトプールみたいだとウェディングは(よろこ)んで水面(すいめん)へと飛び()む。


それから一人で楽しんでいると、目の前にうつぶせになって()いている人間が見えたそうだ。


それはまったく微動(びどう)だにせず、ただそのまま水面をプカプカと(ただよ)っていた。


ウェディングは(まった)く動かないそれを見て死体(したい)だと勘違(かんちが)いし、共和国(きょうわこく)治安(ちあん)維持(いじ)する組織(そしき)――監視員(バックミンスター)通報(つうほう)


だが、それは死体ではなく、この寮――ウェディングと同じ学校に通うこととなったばかりのクリーンだった。


勘違いだったことを安心していたウェディングだったが。


当然(とうぜん)そんな時間にプールを使用していた彼女はクリーンと共に大目玉(おおめだま)()らい、それがきっかけでよく話すようになったそうだ。


「う~ん、とてもウェディングらしいそそっかしいエピソードだなぁ……」


「前に聞いてあたしが気になったのは、プールで泳がずにただ浮いていたクリーンのほうだったわ……」


話を聞いたミックスは、ジャズと共に乾いた笑みを浮かべていた。


「いや~そういわれる()れますな~」


「あたし、ぜんぜん()めてないんだけど……」


「うん……なぜ今の反応(はんのう)ので自分が照れたのかを考えてみよう、ウェディング……」


クリーンはそんな三人のやりとりを、(じつ)に楽しそうに見ているのだった。

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