#41
ジャガーがいなくなった後。
ウェディングがミックスをファミリーレストランに行かないかと誘った。
ちょうどこれからジャズとそのお店で合流するそうで、時間があるならぜひ来てほしいという。
「いいよ。それにしてもジャズはどうして一緒じゃないの? 寮で同室だから、いつも一緒に登下校してるって言ってたじゃん」
「それがですね……。ジャズ姉さんは……」
それからウェディングがいうに――。
ジャズは校則違反を繰り返したため、放課後に教師たちから厳重注意を受けているらしい。
ウェディングやジャズが籍をおく学校は、このバイオニクス共和国の中でも優秀な者しか入れないエリート校である。
さらに幼稚園から大学までエスカレーター式であり、将来的には国の重要なポジションが約束されている学校だ。
彼女は現在その学校の中学生で、いわば勝ち組である(ちなみにジャズは高等部でストリング帝国からの留学生)。
ミックスが通っている戦災孤児のための学校と比べると、授業内容も将来性も雲泥の差だ。
そのため校則は厳しく、本来なら他校の生徒と話をするだけでも校則違反なのだが、この校則だけはあまり守られていない。
ミックスがジャズがどんな校則違反をしたのかを訊ねると、ウェディングは言いづらそうに答えた。
ジャズはスカートの下にスパッツを穿き、おまけにナイフや小型の電磁波放出銃などの武器を身に付けて学校へ登校していたそうだ。
ミックスはスパッツはまだしも、さすがに武装して学校へ行くジャズの神経を心配する。
「でも、姉さんはストリング帝国からの留学生で元々軍人さんですし、先生たちもしょうがないとは思わないんですかね?」
「うん、思わないと思うよ。ウェディングはなぜ思わないかをよ~く考えてみよう」
ミックスは教師たちのジャズに対する態度に、不思議そうにしているウェディングに呆れた。
(この子は、相変わらず常識がないなぁ……。まあ、そこが良いとこだったりもするんだけど)
ミックスはそう内心で思いながら考えてみる。
たしかに、ミックスたちが住むバイオニクス共和国と、ジャズの住んでいたストリング帝国とでは、現在和平協定を結んではいるが、戦勝国である共和国側に優位な条件での協定である。
そんな緊張状態での留学など、入学早々に他の生徒から何をされるかわからないと、身構えてしまうのはわからないでもないのだが。
それでも銃やナイフはやり過ぎだと、ミックスは大きくため息をついていた。
「まあ、ジャズらしいといえばジャズらしいね」
「ですよね~。帰りぎわに高等部の職員室をのぞいてきましたけど。姉さんは真面目に学校での武装の必要性について説いてましたよ~。いや~ホントにジャズ姉さんらしいです!」
「なに、そこで討論しちゃうの……」
武装の必要性を教師に問うジャズ。
ミックスはさらに彼女の将来が心配になっていた。
だがしかし、ストリング帝国ではそれが当たり前なのかもしれない。
両国の文化の違いは、これからのジャズにとって大変な苦労することが多いだろう。
なら、少しで彼女の負担を減らすことができればいいなと、ミックスは考えていた。
そのとき、ウェディングがエレクトロフォンを手に取って何やら確認している。
「あッ、ジャズ姉さんから連絡が来てました。どうやらもうファミレスにいるみたいですよ」
「じゃあ、待たせちゃまずいなぁ。ちょっと急ごうか」
「はいのはいのは~い~!」
そして、ミックスとウェディングの後ろを、何も言わずについて行く白い髪の女子学生。
その髪には鐘を模した髪飾りが見える。
ウェディングは彼女のことを忘れてしまったのか、ミックスに紹介すらしていないままだ。
普通なら怒るか会話に割って入っていくだが、彼女はそんなことはせずにただ静観していただけだった。
「大丈夫ですよスノー。きっとうまくいきます。そんな気がするんです……」
彼女はいつの間にか現れた真っ白な犬の頭を撫でながら、二人の背中を見てそう呟いた。




