#33
それを見たジャズはナノクローンへ向かって走り出した。
ミックスもすぐに追いかけようとしたが、開いた傷口から血が噴き出てその場でうずくまってしまう。
「ムチャだよジャズッ!」
「いいからあんたは早くこの場から逃げなさいッ!」
ゆっくりと動くナノクローンに追いついたジャズは、拾っていた銃剣タイプのインストガンでその装甲を突き刺す。
だが、ナノクローンは全く怯むことなくそのまま進んでいく。
人間が蟻に噛まれたようなものなのか、ジャズの攻撃などまるでなかったことのようだ。
「思っていた以上に固いわね。ならッ!」
ジャズは傷ついた身体の痛みに表情を曇らせながらも、ナノクローンに飛びついてその頭上まで登っていく。
そしてドローンの頭部までたどり着くと、その頭へインストガンの電磁波を放った。
しかしナノクローンは、撃たれて損傷した箇所など気にせずに歩き続けている。
「これくらいで壊せないのはわかってる。だけど、これならどうッ!」
ジャズは叫びながら、インストガンの先端部に付いたナイフで、頭部の損傷した部分を突き刺した。
それによってナノクローンが激しく揺れ始め、やがてその動きは完全に沈黙。
三体のナノクローンのうち、一体の止めることに成功する。
「これであと二体ッ! 絶対に止めてみせるッ!」
自分に気合を入れるように叫んだジャズは、残りのナノクローンを追いかけて再び駆け出す。
ミックスは傷ついた腹部を押さえながら驚いていた。
まさかジャズがナノクローンを止められるとは。
いくら軍人として厳しい訓練を積んできているとはいっても、彼女は特別な力を持たない普通の女の子。
ミックスはそんなジャズに戦闘用ドローンを止めるなど、絶対に無理だと思っていた。
「やっぱ甘く見ちゃダメだね。女の子ってさ……」
安堵ような困ったような複雑な表情を浮かべたミックス。
だがそのとき、急に二体のナノクローンから、緊急事態を知らせるようなサイレンの音が鳴り始める。
《任務続行の危機を感知しました。これより警戒レベルを引き上げます。繰り返します。これより警戒レベルを引き上げます》
音声合成――機械的な声が聞こえたかと思うと、二体ナノクローンは突如走り出した。
そしてそのまま進みながらも、追いかけてくるジャズに向かって、その手から高出力のレーザーを放ち出す。
ナノクローンを開発したエレクトロハーモニー社の科学者が、ブロードに譲るとき自慢していたスモールコーラスというビーム兵器だ。
「ジャズッ! 避けてッ!」
ミックスが彼女のことを心配して叫ぶ。
ジャズはスモールコーラスをなんとか避けてはいたが、先ほどのように近づけないでいた。
ナノクローンの進む速度が上がっただけではなく、反撃もしてくるようになったのだ。
もはや止める術はない。
もう間に合わない。
だが、それでもジャズは――。
「ここまであたしを助けてくれた人のためにも……あいつのためにも……、絶対にあきらめるもんかぁぁぁッ!」
放たれるビームを避けながらも近づいていく。
しかし、二体のナノクローンから狙われれば避けきれるはずもなかった。
「ジャズゥゥゥッ!」
ジャズに向かって二方向から飛んできたスモールコーラス。
このまま彼女は高出力のビームによって焼かれてしまうと思われたが。
「お姉さんカッコいいッ! 私、惚れちゃいそうですッ!」
そのビームはいきなり現れた少女によって弾かれたのだった。




