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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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31/948

#31

この人は悪い人間ではない。


むしろストリング帝国とバイオニクス共和国の被害者(ひがいしゃ)なのではないか。


ミックスはそう思うと、ブロードと戦う気持ちが萎(な)えていく。


「もう、こんなことは……我々(われわれ)の代(だい)で終わりにしなければならない。共和国(きょうわこく)の実験(じっけん)を終わらせるには、もはや戦争を起こすしかないのだ」


「そんなの間違(まちが)ってるよッ!」


ブロードの話を聞き、俯(うつむ)いていたミックスの後(うし)ろからジャズが叫(さけ)ぶ。


「たしかにブロード叔父(おじ)さんのいうこともわかるよッ! 共和国がしたことはあたしも許(ゆる)せない……。だけど、そこまでしようと思った元々(もともと)の理由(りゆう)は、大事(だいじ)な人を失(うしな)いたくなかったからでしょッ!? それなのに戦争なんて起こしたら、もっと人が死んじゃうよッ!」


ジャズはゆっくりと前へ歩き出すと、ミックスの隣(となり)に並(なら)んだ。


「あたしはこの国へ来て知ったよ! 共和国の人間は良(い)い人たちだって! あたしが困(こま)っているときに、何の得(とく)もしないのに手を差(さ)し伸(の)べてくれた……。だからあたしは、ミックス(こいつ)もアミノさんのことも、ヘルキャットとアリア、そして叔父さんと同じくらい失いたくないッ!」


ジャズは必死(ひっし)に――まるで吠(ほ)えるように言葉を続ける。


「お願(ねが)いッ! 戦争なんて起こさせないでッ! あたしから大切(たいせつ)な人を奪(うば)わないでッ!」


「それは子どもの理屈(りくつ)だな。しょせん帝国(ていこく)と共和国が心(こころ)を通(かよ)わすなど不可能(ふかのう)だ。俺(おれ)は自分の信念(しんねん)に従(したが)うのみ……」


ブロードがそういうと、止まっていた人型(ひとがた)の戦闘用(せんとうよう)ドローン――ナノクローンの集団(しゅうだん)が動き出した。


ナノクローンの集団はジャズを捕(と)らえようと、彼女にその手を向ける。


だが、手を伸(の)ばした数体(すうたい)のナノクローンが突然(とつぜん)吹(ふ)き飛ばされた。


「決めた……。いや違(ちが)うな。最初(さいしょ)から決めてたんだった……」


ナノクローンを吹き飛ばしたのは――。


「俺はみんなが笑えあえるような、そんな終わり方にするって決めてたんだッ!」


マシーナリーウイルスにより身体(からだ)を機械化(きかいか)――装甲(アーマード)されたミックスだ。


ミックスは萎えていた気持ちを、再(ふたた)び奮(ふる)い立たせていた。


彼の気持ちを変えたのは、ジャズの言葉に他(ほか)ならない。


自分やアミノのことを失(うしな)いたくない人間だといってくれた彼女のために――。


戦う理由なんてそれだけで十分(じゅうぶん)だ。


じっくりと深呼吸(しんこきゅう)をしたブロードはミックスの前に立つ。


「では、決着(けっちゃく)をつけるか、小僧(こぞう)」


「もう迷(まよ)わない! 俺は絶対(ぜったい)にあんたを止めるぞ。ブロード大佐(たいさ)ッ!」


ブロードはナノクローンの動きを止めると、ミックスに襲(おそ)いかかった。


手首(てくび)に付けた腕輪(ハングル)――効果装置(エフェクト)で機械化させた拳(こぶし)を握(にぎ)り、彼へと殴(なぐ)りかかる。


ミックスもブロードと同じように構(かま)え、両者(りょうしゃ)の機械の拳が激(はげ)しくぶつかり合った。


その衝撃(しょうげき)で凄(すさ)まじい火花(ひばな)と風(かぜ)が巻(ま)き起こり、近(ちか)くにいたジャズは吹(ふ)き飛ばされてしまう。


「国のために自爆(じばく)テロなんて、あんたは脇役(わきやく)でいいのかッ!? そんな死んでやるくらいの気持ちがあるなら、もっと別(べつ)の戦い方を考えろよッ!」


「小僧にはわからん大人(おとな)の事情(じじょう)があるんだよッ!」


「なら俺にはわからなくていいよ。自己(じこ)犠牲(ぎせい)のつもりなのかなんなのか知らないけど、俺はそんなの全然(ぜんぜん)カッコいいと思わないぞッ!」


「いい格好(かっこう)を見せようとするだけで命(いのち)を懸(か)けられるかッ!」


そして、その強烈(きょうれつ)な衝突(しょうとつ)の後、ミックスとブロードはもう再度(さいど)拳をぶつけ合う。


「死なないでくれって泣いて止めている人がいるのに、それでも死のうとするなよッ!」


ミックスの拳と受けたブロードの身体が地面(じめん)へとめり込(こ)み、機械化した腕と手首に付いた効果装置(エフェクト)にヒビが入る。


「やはりこいつッ!? 適合者(てきごうしゃ)と合成種(キメラ)の力(ちから)をッ!?」


「いけぇぇぇッ! シャドォォォーッ!」


ミックスの拳はブロードを地面へと叩(たた)きつけ、彼の身体はその場に深(ふか)く突(つ)き刺(さ)さった。

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