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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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30/948

#30

ミックスの言葉を聞いたブロードがフンッと鼻(はな)で笑う。


「ハッピーエンドだと? じゃあ俺(おれ)がこのまま帝国(ていこく)へ帰れば、貴様(きさま)がいう皆(みな)が笑って終われるということになるのか?」


「ああ、少なくとももうジャズが泣くことはないと思うけど」


「笑わせるなッ!」


すかした笑みを浮(う)かべていたブロードがいきなり怒鳴(どな)りあげた。


効果装置(エフェクト)で機械化(きかいか)させた拳(こぶし)を強(つよ)く握(にぎ)りながら、ミックスのことを睨(にら)みつける。


「この共和国(きょうわこく)の豊(ゆた)かな科学(かがく)技術(ぎじゅつ)はどこから手に入れたと思っているんだッ! 我々(われわれ)ストリング帝国からだぞッ!」


それからブロードは激(はげ)しい感情(かんじょう)をあらわにした。


そして、今から七年前のアフタークロエからさらに昔(むかし)のことを話し出す。


コンピューターの暴走(ぼうそう)により、合成種(キメラ)と呼ばれる異形(いぎょう)の化け物が現(あらわ)れ、文明(ぶんめい)社会(しゃかい)が崩壊(ほうかい)した。


その後、何者かがコンピュータ―を止めることに成功(せいこう)したが、世界は膨大(ぼうだい)な数の合成種(キメラ)と荒廃(こうはい)した大地(だいち)に覆(おお)いつくされる。


そんな中、わずかに生き残(のこ)った人々は国を作った。


その国々の中で、唯一(ゆいいつ)高度(こうど)な科学力を持っていたのがストリング帝国。


世界は帝国によって平和(へいわ)になるはずだった。


だが、帝国のやり方に異(い)を唱(とな)える者――バイオという男を中心(ちゅうしん)に、反(はん)帝国組織(そしき)バイオナンバーを結成(けっせい)される。


激(はげ)しい戦争が続く中で帝国は優勢(ゆうせい)に戦いをすすめ、リーダーであったバイオは戦死(せんし)した。


その後さらに激化(げきか)する戦いの渦中(かちゅう)で、高度な知能(ちのう)と特殊(とくしゅ)能力(のうりょく)を持つ合成種(キメラ)を引き連れたコンピューターが再(ふたた)び現れ、ストリング帝国の皇帝(こうてい)レコーディー·ストリングは志(こころざし)半(なか)ばにして倒(たお)れる。


その脅威(きょうい)は世界中を襲(おそ)い、もはや誰もが人類(じんるい)は滅(ほろ)ぼされると思っていた。


そのコンピューターから世界を救(すく)ったのが、後(のち)にヴィンテージと呼ばれることとなるアン·テネシーグレッチたちだ。


だがその後に、先ほどいったアフタークロエが起こり、ストリング帝国はバイオナンバーからバイオニクス共和国へと名を変えた国に敗(やぶ)れ、和平(わへい)協定(きょうてい)を結(むす)ばされ現在(げんざい)に至(いた)る。


「アリアからそれとなく聞いてるよ。でも、もう戦わなくていいなら、それほど良(い)いことはないじゃないか」


「良いことなどあるかッ! 貴様はバイオニクス共和国が我が国に何をしたか知らんからそう言えるのだッ!」


ブロードの話では――。


戦勝(せんしょう)国であるバイオニクス共和国は、ストリング帝国の科学技術を世界中の国へ与(あた)えるようになった。


そのから今まで富(とみ)を独占(どくせん)していた帝国は廃(すた)れ、今までその科学技術に頼(たよ)り、ろくに労働(ろうどう)をしたことがなかった国民(こくみん)は苦(くる)しい思いをすることになる。


「でも、それは当然だよ! あたしたちの国はそれだけのことをしてきたんだッ! そこは受け入れなきゃいけない」


聞いていて堪(こら)えきれなくなったのか、ジャズが口を挟(はさ)む。


ブロードは、「たしかにそうだ」と彼女へ返事をした。


だがその表情(ひょうじょう)を見るに、とても納得(なっとく)がいっているようには見えない。


「お前の言う通りだ……。だがな、共和国はそれ以上のものを我々から奪(うば)ったんだ」


強張(こわば)っていた表情から、悲(かな)しみに満(み)ちた顔へと変わったブロード。


そして彼の口から、バイオニクス共和国の恐(おそ)るべき真実(しんじつ)が明(あ)かされた。


「さっき合成種(キメラ)のことは話したな?」


「高度な知能(ちのう)と特殊(とくしゅ)能力(のうりょく)を持ったやつだっけ……?」


「共和国はな。帝国に住むマシーナリーウイルスの適合者(てきごうしゃ)候補(こうほ)を集(あつ)めさせ、合成種(キメラ)とマシーナリーウイルスを組み合わせるための人体(じんたい)実験(じっけん)を始めたんだ」


バイオニクス共和国は、かつて合成種(キメラ)を凌駕(りょうが)し、世界を恐怖(きょうふ)に陥(おとし)れた暴走コンピューターを倒したアン·テネシーグレッチを超(こ)える人間を造(つく)ろうと――。


すでにマシーナリーウイルスに侵(おか)されている帝国の住民(じゅうみん)を使って、適合者の力(ちから)と合成種(キメラ)の特殊能力を組み合わせた“神をも超える人間”を生み出そうとした。


「だが、実験は失敗(しっぱい)した。合成種(キメラ)の細胞(さいぼう)がマシーナリーウイルスと混(ま)ざると、体内(たいない)で拒否(きょひ)反応(はんのう)が出て、身体の穴(あな)という穴から血を流して死んでしまうからだ」


実験は中止になり、このことを隠蔽(いんぺい)するために関わった帝国の者たちは処分(しょぶん)された。


その実験の被験者(ひけんしゃ)の中には、ブロードの妻(つま)もいたそうだ。


それは彼の妻だけではない。


ストリング帝国の強硬派(きょうこうは)の多くが、その実験で大事(だいじ)な人を殺(ころ)されている。


「我々の国は、過去に非(ひ)人道的(じんどうてき)なことをしてきたのかもしれない。だが、ストリング皇帝はそれでも自国の国民にも他国の国民にも差(さ)をつけなかった」


かつてストリング帝国はたしかに世界を蹂躙(じゅうりん)したが、それは合成種(キメラ)によって荒廃した世界を変えたかったからだった。


そのために、ストリング皇帝は自国の者すべてにマシーナリーウイルスを注入(ちゅうにゅう)した。


その中で適合者になれた者は少なく、完全なる機械へと変わる者のほうが多く――。


ジャズやブロードのような全く変化のない者もいた。


ブロードは身を震(ふる)わせ、ミックスに向かって言う。


「ところが共和国のイカれた科学者たちは、俺たちだけにそれを強(し)いた。やはり人を統(す)べる才(さい)のない者らが力を持つと、こういう結果(けっか)になるのだ!」


「ブロード大佐(たいさ)……」


ミックスは、ブロードの話を聞いているうちに、自分がどうしていいかわからなくなっていた。

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