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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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29/948

#29

フラフラながらもインストガンを構(かま)えるジャズ。


その姿(すがた)は、もはや満身(まんしん)創痍(そうい)というよりも重症(じゅうしょう)患者(かんじゃ)のようだった。


ブロードはそんな彼女を一瞥(いちべつ)すると、すぐに背(せ)を向けてアーティフィシャルタワーのほうへと歩(ある)き出す。


「待ちなさいよッ!」


「ジャズ、それ以上(いじょう)動(うご)くな。傷(きず)に響(ひび)くぞ。いや、もうその心配(しんぱい)はいらんか」


ブロードへ向かって電磁波(でんじは)を撃(う)とうとしたジャズだったが、人型(ひとがた)戦闘(せんとう)ドローン――ナノクローンの集団(しゅうだん)が彼女の目の前に立ちはだかる。


その三メートルはあるナノクローンに囲(かこ)まれ、彼女はブロードを撃つことも追(お)うこともできなくなった。


しかし、それでもジャズは諦(あきら)めない。


インストガンで電磁波に撃ちながら、隙間(すきま)を抜(ぬ)けてブロードを追いかけようとする。


「敗北(はいぼく)を知る良(い)い機会(きかい)だ。努力家(どりょくか)で信念(しんねん)の強いお前なら、俺(おれ)と違(ちが)って心(こころ)が折(お)れることもないだろう。これからいくらでも成長(せいちょう)できるさ」


「ブロード叔父(おじ)さんッ! イヤッ! 死んじゃイヤだよぉぉぉッ!」


「さらばだ、ジャズ。お前の弟(おとうと)にもよろしく言っておいてくれ」


ブロードが穏(おだ)やかな笑みを浮(う)かべたとき。


突然彼の側(そば)をナノクローンの巨体(きょたい)が吹(ふ)き飛ばされていった。


何故こんなことが?


ブロードはジャズにこんな真似(まね)ができるはずもないと、後(うし)ろを振(ふ)り返(かえ)ってみると――。


「泣いてる姪(めい)っ子のいうことくらい、聞いてあげなよッ!」


そこには作業用(さぎょうよう)ジャケットを着た少年――ミックスの姿があった。


ミックスの腕(うで)はすでに機械化(きかいか)しており、その装甲(アーマード)が顔の近くまで覆(おお)っている。


(ここまで力があるのか? やはり効果装置(エフェクト)では適合者(てきごうしゃ)ほどのパワーは発揮(はっき)できないようだな。それと、あの重力(じゅうりょく)を直接(ちょくせつ)かけたような攻撃(こうげき)の謎(なぞ)は解(と)けていない。油断(ゆだん)はできんな……)


振り返ったブロードはそう思うと、そのままミックスの元(もと)へと歩き出した。


「そんなボロボロの身体でよく来たな、小僧(こぞう)。だが、能力(のうりょく)頼(だよ)りの貴様(きさま)では俺には勝てんと、こないだの戦闘(せんとう)で理解(りかい)できなかったのか?」


「俺はただみんなが心(こころ)から笑えるような終わりを迎(むか)えたいだけだよ」


ミックスは自分のほうへと歩いてくるブロードへ話を始めた。


前にアリアと話していたとき。


彼女が本気でジャズのことを好きなのがわかった。


そして、それと同じくらいヘルキャットも好きでしょうがないことも知った。


「それなのに、彼女たちがハッピーエンドならないのはおかしいだろ。お互(たが)いのことを大事(だいじ)に想(おも)いあっているのにさ」


「ああ、それには賛成(さんせい)する。安心(あんしん)するがいい。ジャズを含(ふく)めた三人にはこれから帝国(ていこく)へ帰す手筈(てはず)となっている」


ブロードはそれからミックスへ説明(せつめい)をし出した。


ヘルキャットアリアに自爆(じばく)テロなどさせないこと。


二人をストリング帝国へ無事(ぶじ)に帰すことを。


「これで貴様の心配はなくなっただろう。わかったら早く消えてくれ。こっちはもう時間がないんだ」


「ヘルキャットもアリアも死なないのはいいんだけどさ。じゃあ、なんでジャズが泣いてあんたを止めているんだよ」


ミックスはそう言いながら、こちらへ向かってくるブロードのところへ歩きだした。


「それはさ。やっぱジャズにとって、あんたも生きてなきゃハッピーエンドにならないからだろ」


そして二人は立ち止まり、互いの顔を突き合わせるのだった。

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