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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
28/948

#28

ブロードは、片耳(かたみみ)に付けていたインナーイヤーヘッドホンタイプの通信(つうしん)デバイスに手をやった。


「ラムズヘッドか? こちらの準備(じゅんび)(ととの)った」


誰かと連絡(れんらく)を取っているブロードの姿(すがた)に、ヘルキャットとアリアは両眉(りょうまゆ)を下げて(いぶか)しげな表情(ひょうじょう)をする。


ストリング帝国(ていこく)にいる同胞(どうほう)連絡(れんらく)でもしているのか。


それとも自分たち以外(いがい)にも、このバイオニクス共和国(きょうわこく)へ来ていた者がいたのか。


どちらにしても、そんな話を二人はブロードから聞いていなかった。


それにラムズヘッドというのは、たしか共和国からハザードクラスに認定(にんてい)されているフォクシーレディの会社――エレクトロハーモニー社の科学者(かがくしゃ)の名前だが――。


「あの、ブロード大佐(たいさ)? 何か作戦(さくせん)変更(へんこう)があったのですか?」


「それにラムズヘッドって……。まさかエレクトロハーモニー社が協力(きょうりょく)してくれるという話なのですか?」


ヘルキャットとアリアが(たず)ねると、ブロードは通信を切った。


そして、二人と向かい合ってその口を開く。


「協力とは少し(ちが)うな。ラムズヘッドの(やつ)は、(おれ)効果装置(エフェクト)を買ったときに、追加(ついか)商品(しょうひん)をサービスしてくれただけだ」


「追加の商品……?」


「それはなんなのでしょう……?」


ヘルキャットとアリアが(ふたた)びブロードに質問(しつもん)した瞬間(しゅんかん)――。


広場にあった木々(きぎ)から人型(ひとがた)のドローンが集団(しゅうだん)(あらわ)れ、二人の身体(からだ)拘束(こうそく)した。


その無骨(ぶこつ)金属(きんぞく)(うで)(つか)まれ、ヘルキャットとアリアが(さけ)んでいる。


「これは一体(いったい)ッ!? まさか共和国(きょうわこく)兵器(へいき)かッ!?」


「くッ!? ブロード大佐(たいさ)だけでも作戦を続行(ぞっこう)してくださいッ!」


「ああ、最初(さいしょ)からそのつもりだ」


(あわ)てている彼女たちへブロードが言う。


今ヘルキャットとアリアを(つか)まえているドローンは、エレクトロハーモニー社の製品(せいひん)


その名を『ナノクローン』というラムズヘッドが発明(はつめい)した人型(ひとがた)戦闘(せんとう)(よう)ドローンである。


全高(ぜんこう)3.5m 重量(じゅうりょう)2.2t。


その金属(きんぞく)装甲(そうこう)には、ブルーのカラーリングが(ほどこ)されている。


さらにスモールコーラスというビーム兵器(へいき)搭載(とうさい)し、通信装置(そうち)もある。


「奴が何を考えてこいつらをくれたのかはわからんが、せいぜい使わせてもらう」


ナノクローンのことを説明(せつめい)したブロードは、そのまま言葉を続ける。


ブロードは(はじ)めからヘルキャットとアリアを死なせるつもりはなかった。


二人が、今回のストリング帝国の強硬派(きょうこうは)(くわだ)てたテロ行為(こうい)のことを知ったのはあくまで偶然(ぐうぜん)であり、無理に止めて(さわ)がれるよりは作戦に同行(どうこう)させたほうがいいと彼は考えたのだ。


「戦場で(こま)となって死ぬよりは、共和国の象徴(しょうちょう)であるアーティフィシャルタワーを破壊(はかい)したかったのだろうが、お前たちをここで死なせるわけにはいかん」


「私たちを(だま)していたのですか……?」


アリアが(つぶや)くように訊くと、ヘルキャットが怒鳴(どな)り始めた。


その小柄(こがら)な体を(ふる)わせ、必死(ひっし)にナノクローンの手から(のが)れようとしている。


「ふざけるなッ! 大佐は私たちの覚悟(かくご)()みにじるつもりですかッ!? 早くこの拘束を解いてくださいッ! 私はここへ死に来たんですよッ! このまま国へ帰れるかッ!」


「悪いな、ヘルキャット。いくら俺でも(めい)の数少ない友人を道連(みちづ)れにはできんよ。せいぜい腕を上げてこの後の戦争で活躍(かつやく)してくれ」


「大佐ッ! そんなのって……ないですよぉぉぉッ!」


ヘルキャットが大声を出すと、ブロードはナノクローンへ指示(しじ)し、彼女とアリアの気を(うしな)わせた。


それを(たお)れながら見ていたジャズが、(ふる)えながらも顔を上げる。


「最初から一人で死ぬつもりだったなんて……。ブロード叔父(おじ)さんらしい……」


「まあ、聞いての(とお)りだ。これでお前の友人は助かり、この後はナノクローンに帝国へ(はこ)ばせるようにしている。もちろんジャズ、お前も一緒(いっしょ)にな」


「そう……。なんか安心(あんしん)しちゃった……」


ジャズはそう言いながら笑みを()かべると、(ふる)えながらも立ち上がった。


そして、落ちていたインストガンを(ひろ)い、銃口(じゅうこう)をブロードへと向ける。


「でも……それでもあたしは……あなたを止めるッ!」

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