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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
21/948

#21

(にぎ)ったその右手首(みぎてくび)には、金属(きんぞく)腕輪(バングル)が見えた。


そして、ブロードはその腕輪(バングル)に付いているスイッチをオンにする。


適合者(てきごうしゃ)はたしかに強い。だが、同じような(ちから)さえ身に付ければ、お前のような子どもには負けんよ」


その言葉と共に――。


突然ブロードの右(うで)機械化(きかいか)した。


「そんなッ!? ブロード叔父(おじ)さんも適合者だったのッ!?」


勘違(かんちが)いするな。これは効果装置(エフェクト)と呼ばれる適合者の力を再現(さいげん)するものだ」


それを見てジャズが(さけ)ぶと、ブロードは彼女を(はな)で笑いながら説明(せつめい)を始める。


この効果装置(エフェクト)と呼ばれる腕輪(バングル)は、エレクトロハーモニー社の製品(せいひん)だそうだ。


エレクトロハーモニー社とは、一般(いっぱん)家電(かでん)製品から子どもの玩具(おもちゃ)――。


さらには軍需(ぐんじゅ)産業(さんぎょう)分野まで乗り出している世界で(もっと)有名(ゆうめい)な会社である。


しかもただの会社ではない。


かのハザードクラスの一人であるフォクシーレディが経営(けいえい)しているのもあって、ストリング帝国(ていこく)以外すべての国が加盟(かめい)国であるバイオニクス共和国(きょうわこく)ですら口が出せない企業(きぎょう)なのだ。


そのうえ報酬さえもらえば要人警護からボディーガードまでにも手を出し、争いがあればどちらにも武器を売るという社訓のためか。


社長であるフォクシーレディは死の商人(デスマーチャント)ととも呼ばれていた。


「少々お(しゃべ)りが()ぎたな。ともかくこいつさえあれば適合者だろうがハザードクラスだろうが(おく)れをとることはない」


ジャズはブロードの言葉に表情(ひょうじょう)(ゆが)めるとインストガンから電磁波(でんじは)発射(はっしゃ)


無駄(むだ)だ。今の私は適合者と同じような(ちから)()ていると言っただろう」


だが、ブロードの機械の腕がそれを弾き飛ばす。


マシーナリーウイルスが体内から人間を機械化させるのとは反対に、効果装置(エフェクト)は体外から機械化させる機器(きき)である。


いわば極薄(ごくうす)のパワードスーツを身に付けているようなものだ。


「今度はこちらから行くぞ」


さらに電動(でんどう)アクチュエーターや人工(じんこう)筋肉(きんにく)などのプログラミングにより、適合者と同じく使用者の身体能力を向上(こうじょう)させる。


ジャズが気づくと、いつの()にかブロードが目の前にいた。


普通(ふつう)の人間では、今の彼の動きを目で追えないのだ。


だがジャズの(そば)には普通ではない人間がいた。


「やらせるかッ!」


そう、適合者である少年――ミックスだ。


ミックスにはブロードの動きが見えているようだ。


いつの間にか(あらわ)れたブロードに(おどろ)くことなく、彼を吹き飛ばそうと(こぶし)を振り抜く。


だがブロードはその拳を軽く(かわ)し、まるで見下すような視線(しせん)でミックスのことを見ていた。


「こちらの動きに対応(たいおう)はできるようだな」


ミックスは続けて右、左と拳を振るうが、ブロードにはかすりもしない。


ジャズは二人の動きを見て割って入ることができずにいた。


それは、ミックスとブロードの動きを目で追うことさえできなかったからだった。


当然、それはヘルキャットとアリアにもいえた。


彼女たちもジャズと同じように唖然(あぜん)としてその場に立っているだけだ。


「くそッ! なんで当たらないんだよッ!」


所詮(しょせん)は子ども。効果装置(エフェクト)によって適合者との差がなくってしまえば、こうも容易(たやす)くなるか」


「うるさいッ! 俺はあんたたちを止めるんだッ!」


「いくら止めると息巻(いきま)いたところで、路上(ろじょう)でやる喧嘩(けんか)のような攻撃では私を(とら)えることなど不可能(ふかのう)だ」


しばらく攻撃を避けていただけのブロードだったが、当然躱した瞬間(しゅんかん)にミックスのボディへアッパーを突き入れた。


「ぐはッ!」


「ミックスッ!?」


ミックスはジャズの叫び声を聞きながら、胃液(いえき)を吐いて吹き飛ばされていく。


そして鉄筋(てっきん)コンクリートへとその身を(たた)きつけられる。


ジャズがミックスのほうを見ると、()き出しの鉄筋が彼の身体に突き刺さっていた。


「ふん、子ども相手にやり過ぎたか。だか、その怪我(けが)ではもう戦えまい。もう貴様(きさま)に我々を止めることは無理だな」


倒れるミックスを見下ろし、ブロードは彼から離れるとジャズのほうへと歩き出すのだった。

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