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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
17/948

#17

ミックスは(ちから)づくで(あし)退()かして立ち上がる。


それでもアリアは彼と間合(まあ)いを取ろうとはしなかった。


取っ組み合いになってもミックスを(たお)自信(じしん)があるのだろうが。


それ以外(いがい)にも何か理由(りゆう)がありそうで、彼から(はな)れずに一定(いってい)距離(きょり)(たも)っていた。


(たず)ねても(こた)えないアリアへミックスは言葉を続ける。


「その気になれば俺なんか簡単(かんたん)(ころ)せるだろ? それなのにどうして()らないんだよッ!?」


「それは先ほど(もう)したでしょう。あなたにはジャズちゃんを……」


「友だちのことを考えるなら、今すぐテロなんかやめなよ!」


ミックスが(さけ)び返すとアリアの無表情(むひょうじょう)(くず)れた。


彼女は忌々(いまいま)しそうな顔で、目の前にいる彼のことを(にら)みつけ始める。


だが、それでもミックスは退()かない。


アリアの(するど)眼差(まなざ)しを()(すぐ)ぐに見返す。


「キミにはまだ友だちのことを考える(やさ)しさがあるんだろッ!? なら、どうしてその友だちが(かな)しむことをするんだよッ!?」


それからミックスは、ジャズがどんな思いでバイオニクス共和国(きょうわこく)へ来たのかを話した。


ヘルキャットとアリアを止めるために行動(こうどう)したが、自国(じこく)強硬派(きょうこうは)にうやむやにされ――。


慎重派(しんちょうは)である上司(じょし)の言うことも聞かずに、一人勝手(かって)に飛び出してきた。


あの真面目(まじめ)頑固(がんこ)そうな彼女が、上からの命令(めいれい)無視(むし)してまで友人を止めようとしているのだ。


それなのに、どうしてジャズの気持ちがわからないのだと。


ミックスの言葉を聞いたアリアは、(ふる)えながら(あと)ずさりしていた。


彼女もわかっていたのだろう。


ジャズがけして命令違反(いはん)をするような人間ではないことを。


そこまで自分たちのことを(おも)ってくれているということも。


「まだ間に合うよ! 今からもうひとりの子を説得(せっとく)して、アーティフィシャルタワーの破壊(はかい)なんてやめてジャズと一緒(いっしょ)に国へ帰るんだ!」


「あなたになにがわかるんですか……」


アリアはそう返事(へんじ)をすると、身体(からだ)()(まわ)してミックスの側頭部(そくとうぶ)()りを見舞(みま)う。


遠心力(えんしんりょく)の付いた(すさ)まじい回し蹴りを()らったミックスは、その場から()き飛んでいった。


戦争(せんそう)も知らず……共和国(きょうわこく)でのうのうと()らすあなたに……。私たちのなにがわかるんですかッ!?」


倒れているミックスへアリアは叫んだ。


それは、今までの冷静(れいせい)な彼女とは思えぬほどの(はげ)しい(こころ)(さけ)びだった。


「ヘルキャットもジャズちゃんも……私の大事な友人なんです! どちらかを(えら)ぶなんてできません! だから……私は……」


アリアは今にも泣き出しそうなほど目に(なみだ)()めていた。


そして彼女は、これまで(うち)()めていた想いを()き出し始める。


ヘルキャットは両親(りょうしん)を七年前の戦争で(うしな)い、帝国と共和国の和平(わへい)協定後(きょうていご)に軍へと入隊(にゅうたい)した。


元々(もともと)事情(じじょう)があったアリアはすでに軍に入っており、二人はそのときに出会う。


そして、当時(とうじ)内気(うちき)だったアリアにはジャズくらいしか話し相手がいなかったが、ヘルキャットのおかげで(ほか)仲間(なかま)とも()()けるようになったようだ。


それでも三人はいつも一緒で、それがずっと続くことをアリアは(ねが)っていた。


だが、ヘルキャットは強硬派(きょうこうは)へと参加(さんか)したことで、すべてが(くる)っていった。


慎重派(しんちょうは)だったジャズとは疎遠(そえん)になり、同世代(どうせいだい)の仲間たちは全員、強硬派へと参加したヘルキャットのことを批判(ひはん)するようになった。


今までの友人から孤立(こりつ)してしまったヘルキャットのことを、アリアは(ほう)っておけず、彼女と共に今回の作戦を行うことになる。


しかし、彼女はジャズが追いかけてきているとは思わなかった。


自分はいい。


もうヘルキャットと共に死ぬ覚悟(かくご)はできている。


一緒に地獄へ行こうと約束(やくそく)をしたのだ。


それはヘルキャットも同じだ。


だが、ジャズは(ちが)う。


彼女まで死ぬことはない。


いや、ここで彼女に死んでほしくないのだ。


だからこうやって、ミックスへお願いしようとしていたのだった。


「少し話し()ぎましたね……。でも、話せてすっきりしました。それだけは(れい)を言います。あと……ここでのことは(わす)れてください」


そして、アリアは冷静さを取り戻し、その場を()ろうとしたが――。


「ちょっと待ってよ……」


倒れていたミックスが、ゆっくりと立ち上がって来るのだった。

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