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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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13/948

#13

結局(けっきょく)――。


ミックスはジャズを泣かせたことをアミノに説教(せっきょう)をされただけで、詳(くわ)しいことは何も訊(き)かれなかった。


それは、女の子を泣かせたことを怒(おこ)って忘(わす)れてしまったのか。


それともアミノが気を遣(つか)ったのかはわからないままだったが、ミックスたちはそのまま彼女のアパートで一泊(いっぱく)することになった。


なんとか事情(じじょう)を話さずにしようとしていたミックスとってはよかったことだったのだが、これからに起(お)こることを考えれば、アミノへ伝(つた)えていたほうがよかったのかもしれない。


次(つぎ)の日の朝(あさ)――。


ミックスが目を覚(さ)ますと、布団(ふとん)にはまだ眠(ねむ)っているアミノとニコの姿(すがた)が見えた。


昨夜(さくや)には、たしかジャズも彼女たちと同じ布団で寝たはずなのだが。


「まさかジャズの奴(やつ)ッ!?」


慌(あわ)てて飛び起きたミックスが玄関(げんかん)に走ると、台所(だいどころ)から声をかけられる。


「おっ、やっと起きたか。待ってなさい。今、朝ご飯出すから」


「なんだ……ちゃんとここにいたのかよ……」


「むっ、なによ。あたしが台所にいちゃまずかったの?」


「そんなこといってないだろ。なんでそうすぐに怒るかね」


「別(べつ)に怒ってなんかないじゃん」


「その態度(たいど)がすでに怒ってるっていうんだよ」


二人が早速(さっそく)言い合っていると、寝ていたアミノとニコも目を覚ます。


ジャズは勝手(かって)に台所を借りことと、冷蔵庫(れいぞうこ)にあった食材(しょくざい)を使ったことを謝(あやま)ると、アミノは彼女へ笑顔(えがお)を返した。


「それにしてもまさか朝食の用意(ようい)をしてくれるとは。ジャズちゃんは将来(しょうらい)良いお嫁(よめ)さんになりそうですね」


「そんな!? やめてくださいよアミノさんッ! あたし、料理(りょうり)とかぜんぜん自信(じしん)ないんですから!」


ジャズはアミノに褒(ほ)められると、謙遜(けんそん)しながらも嬉(うれ)しそうにしていた。


そして、先ほどミックスと言い合っていたのも忘れ、皆(みな)へ出来立(できた)ての料理を振舞(ふるま)う。


「何度(なんど)も言いますけど、ぜんぜん自信とかありませんが……」


照(て)れながらいうジャズ。


ミックスは、彼女は意外(いがい)にも家庭的(かていてき)タイプなのかもしれないと思っていたが、出された料理を見て言葉を失(うしな)った。


「ね、ねえジャズちゃん。こ、これは……?」


「え~と、とりあえず冷蔵庫に入っていたものを全部煮(に)てみました」


同じく料理を見て驚愕(きょうがく)していたアミノが訊(たず)ねると、ジャズは声を大にして答(こた)えた。


スープ皿(さら)へと小分(こわ)けにされた液体(えきたい)には、アミノが昨夜残していた酒(さけ)のつまみが浮(う)いている。


塩辛(しおから)、枝豆(えだまめ)、冷奴(ひややっこ)、チーズ、カラスミ――。


さらにはドライフルーツなども放(ほう)り込(こ)んであり、その液体は凄(すさ)まじい色(いろ)と悪臭(あくしゅう)を放(はな)っていた。


まるでおとぎ話に出てくる魔女(まじょ)が、グツグツ煮込んで作った魔術(まじゅつ)的な料理に見える。


「あっ! そうでした! 先生はちょっと今日の授業(じゅぎょう)で用意(ようい)しなきゃいけないものがあったのです! せっかくだけどご飯はみんなで食べてくださいね」


急(きゅう)に立ち上がったアミノは、慌てて洗面所(せんめんじょ)へ行くと、そそくさと身支度(みじたく)を済(す)ませてそのまま家を出て行ってしまった。


そんな彼女のことを、やはり教師(きょうし)は大変だなと見ていたジャズが、ミックスとニコのほうへ振(ふ)り向く。


「あれ? あんたもニコも食べないの?」


「いや~……これはさすがに……なあ、ニコ……」


ミックスに振られたニコは、その顔を真っ青にしながらもスープ皿へと手に伸(の)ばしていた。


そして、涙(なみだ)を流(なが)しながらその魔術的な料理を飲み込み始める。


そんな勇敢(ゆうかん)な仔羊(こひつじ)の姿を見たミックスは、ニコのことを内心(ないしん)で称(たた)えていた。


「ニコ……お前は雌(めす)なのに本物(ほんもの)の勇者(ゆうしゃ)だよ。今日のお前の行動(こうどう)を俺(おれ)はけして忘れない……」


「何ブツブツ言ってんのよ。ほらミックス、あんたも早く食べな」


「……はい。いただかせてもらいます……うっぷ!」


「アミノさんの分(ぶん)もあるから、まだまだおかわりオッケーだよ」


朝から内臓(ないぞう)を痛(いた)めつけることとなったミックスは、なんとかジャズの料理をすべて食べきり、重(おも)い足取(あしど)りで学校へと向かう。


「朝から女の子に手料理を作ってもらうなんて、本当は夢(ゆめ)のようなシュチュエーションのはずなのに……。でもまあ、こんなもんだよね……ハハハ……」


そしてブツブツと呟(つぶや)きながら、いつもの乾(かわ)いた笑みを浮かべるのであった。

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