↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
PR
14/948

#14

学校へと向かうミックス。


アミノの住むアパートからの登校(とうこう)に違和感(いわかん)を覚(おぼ)えながらも、普段(ふだん)とは違(ちが)う道に新鮮(しんせん)さを感じていた。


「うっぷ……。ダメだ、まだ吐(は)き気(け)が止まらない」


ミックスは朝からジャズの作った料理(りょうり)――凄(すさ)まじい刺激物(しげきぶつ)を胃(い)に入れたためか、すこぶる調子(ちょうし)が悪(わる)そうだった。


そんな身体(からだ)を奮(ふる)い起こし、学校までバスでいくか歩いていくを考え、彼は後者(こうしゃ)を選択(せんたく)。


それは、まだ時間に余裕があったことと、手持(ても)ちの金銭(きんせん)を少しで節約(せつやく)しようという考えからだった。


本当は調子が悪いので、バスを使いたいのが正直(しょうじき)なところだったが、ミックスは自分の体よりもお金を大事(だいじ)にするタイプのようだ。


「銀行(ぎんこう)のカードも、再発行(さいはっこう)するまではまだまだ先だしね……」


そんな独(ひと)り言(ごと)を呟(つぶや)きながらミックスが歩いていると、彼の後(うし)ろからひとりの女子学生(がくせい)が走ってきていた。


「せんぱ~い! ミックスせんぱ~い! おはようございま~す!」


「やあ……。おはようウェディング」


ウェディングと呼ばれたロングヘアの女子学生は、挨拶(あいさつ)を返してもらうとニッコリと微笑(ほほえ)んだ。


しかし、すぐにミックスの顔色(かおいろ)が悪いことに気が付いて慌(あわ)て出す。


「どうしたんですかせんぱいッ!? お顔(かお)が青空(あおぞら)のようになっていますよッ!?」


「その例(たと)えだと俺の顔が清々(すがすが)しい感じに聞こえるよね……」


「病院(びょういん)へ! 早く病院へ行きましょうッ!」


「俺のツッコミは無視(むし)かい……」


ウェディングは、ミックスの身体を心配(しんぱい)しているせいか、彼の言葉など耳(みみ)に入っていないようだった。


大声を張(は)り上げながらその場でひとり右往左往(うおうさおう)している。


ミックスは、そんな彼女を見てため息(いき)をついていた。


「それよりも大丈夫(だいじょうぶ)なの? ウェディングの学校は他校(たこう)の生徒と話すのは、校則(こうそく)で禁止(きんし)されているんだろ?」


ウェディングが籍(せき)をおく学校は、このバイオニクス共和国(きょうわこく)の中でも優秀(ゆうしゅう)な者しか入れないエリート校である。


さらに幼稚園(ようちえん)から大学までエスカレーター式(しき)であり、将来的には国の重要なポジションが約束されている学校だ。


彼女は現在(げんざい)その学校の中学生で、いわば勝ち組である。


ミックスが通(かよ)っている戦災孤児(せんさいこじ)のための学校と比(くら)べると、授業(じゅぎょう)内容(ないよう)も将来性も雲泥(うんでい)の差(さ)だ。


「ミックスせんぱいが気にすることではないですよ。それに……私のプライベートを邪魔(じゃま)するならば、たとえこの国だろうと潰(つぶ)します」


「笑顔で怖(こわ)いこというなよ……」


「冗談(じょうだん)ですよ、冗談」


「本気(ほんき)にしか聞こえなかったよ……。はぁ、やっぱハザードクラスに選(えら)ばれるような奴(やつ)は冗談も普通(ふつう)じゃないね」


「ひど~いッ! ミックスせんぱい酷(ひど)いです!」


頬(ほお)を膨(ふく)らませてプンプン怒(おこ)ってみせるウェディング。


だが、ミックスが笑いながら謝(あや)ると、彼女はすぐに機嫌(きげん)を直(なお)した。


ちなみに、先ほどミックスがいったハザードクラスとは――。


バイオニクス共和国から最(もっと)も優秀(ゆうしゅう)な人間と認定(にんてい)されている世界最高(さいこう)クラスの能力(のうりょく)を持つ者のことである。


その数(かず)は現在五人と非常(ひじょう)に少(すく)なく、その一人一人が一国を滅(ほろ)ぼせるほどの力(ちから)があるとされている。


ウェディングはハザードクラスの中で最年少(さいねんしょう)であり、|舞う宝石《ダンシング·ダイヤモンド》というコードネームを与(あた)えられた、国からの最(もっと)も期待(きたい)されている学生だ。


ミックスとはあることがきっかけで知り合い、それ以来彼のことを慕(した)っている。


それからバスが来てもウェディングは乗らずに、ミックスと共に歩き出した。


「いいの? さっきのバスに乗るつもりだったんだろ?」


「いいんです。今日はなんだか歩きたい気分なんです」


ミックスは、そういったウェディングを見ながら小首(こくび)を傾(かし)げると、歩(ほ)を進めた。


彼女は、そんな彼の横(よこ)に並(なら)び、ニコニコと笑みを浮(う)かべる。


「月(つき)が綺麗(きれい)ですね、せんぱい」


「あのさ、ウェディング。いま朝なんだけど……。それともそれ、冗談のつもり?」


「せんぱいはソウセキを知らないんですか?」


そんな会話(かいわ)をしながら歩く二人の後ろから――。


ゆっくりと一人の影(かげ)が追いかけていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。