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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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12/948

#12

そんなミックスを見たジャズは、俯(うつむ)くとそっと傍(そば)にいたニコを抱(だ)きしめた。


そして、彼女は下を向いたままミックスへ声をかける。


「知りたい? あたしが抱(かか)えていること……本当に知りたい?」


訊(たず)ねられたミックスは、ニコを抱いたまま毛布(もうふ)に包(くる)まっている彼女へぐっと近(ちか)づく。


お互(たが)いの吐(は)いた息(いき)がかかるような距離(きょり)。


今すぐ唇(くちびる)でも重(かさ)ねそうなミックスの勢(いきお)いに、顎(あご)を上げたジャズはビクッとその身を震(ふる)わせて顔を赤くしてしまう。


「なんだか尋問(じんもん)している気分(きぶん)だよ。普通(ふつう)なら軍人(ぐんじん)みたいなジャズがしそうなことなのに」


「ふふふ、そうだね。あんたの言う通(とお)りだ」


その言葉を交(かわ)わした二人は互いに笑い合った。


笑い合った後――。


ジャズはミックスへ話を始めた。


前に説明した会いに来た友人とは、彼に銃(じゅう)を向けた二人の少女であることを。


ミックスがどうして友人と戦っていたのかを訊ねると、ジャズの表情(ひょうじょう)がわかりやすく曇(くも)る。


「あの子らは、この国と戦争(せんそう)するための火種(ひだね)を作りに来たんだよ」


ジャズがいうに――。


二人の少女――ヘルキャット·シェクターとアリア·ブリッツは、彼女と同じ国の生まれであり、共(とも)に軍で過(す)ごした戦友(せんゆう)なのだという。


ジャズの生まれた国の名はストリング帝国(ていこく)。


この世界で唯一(ゆいいつ)バイオニクス共和国(きょうわこく)から独立(どくりつ)した国であった。


今から七年前――。


バイオニクス共和国(きょうわこく)とストリング帝国のと間(あいだ)では、アフタークロエと呼ばれる戦争が行(おこな)われていた。


現在(げんざい)では両国(りょうこく)の間(あいだ)で和平(わへい)協定(きょうてい)が結(むす)ばれ、今日も世界は平和(へいわ)そのものだった。


だが、事実上(じじつじょう)戦争に破(やぶ)れたストリング帝国内では、その和平協定に反対(はんたい)している強硬派(きょうこうは)と慎重派(しんちょうは)に分かれている状況(じょうきょう)だそうだ。


「あの子らは和平に反対の派閥(はばつ)に入った。昔からあたしは賛成(さんせい)派で……。そこからあまり話さなくなったってさ……」


ニコの身体を覆(おお)う豊(ゆた)かな毛(け)を抱きしめながら、ジャズは寂(さび)しそうに言葉を続ける。


ジャズは、ここで二人との友情(ゆうじょう)が切れてしまうことを恐(おそ)れ、彼女たちに会いに行った。


たとえ考え方、主義(しゅぎ)主張(しゅちょう)が違(ちが)くとも、しっかりと話し合えば昔のような関係(かんけい)に戻(もど)れると思っていた。


ジャズは二人へ前もって行くことを知らせていたのだが、彼女たちはそのメッセージを確認(かくにん)していなかったのだろう。


軍から支給(しきゅう)されているインストガンの持ったヘルキャットとアリアが、自分たちの部屋を飛び出していくところをジャズは目撃(もくげき)してしまったのだ。


ストリング帝国の軍服(ぐんぷく)に身を包(つつ)み、武装(ぶそう)して出て行った二人を見たジャズは嫌(いや)な予感(よかん)がし、すぐにそのことを上の人間に報告(ほうこく)した。


上の人間はすぐに動いてくれたが、慎重派であるジャズの上司(じょうし)が何をいおうが、強硬派のいう訓練(くんれん)という言葉によって、ジャズの勘違(かんちが)いということにされてしまう。


しかし、ジャズの上司は見抜(みぬ)いていた。


ヘルキャットとアリアの二人を共和国へと送(おく)ったのは、再(ふたた)び戦争の火種を作るためだと。


すぐにでも彼女たちを止めないと、再(ふたた)び戦争が始まってしまう。


それを聞いたジャズは、まず何よりも彼女たちのことを心配(しんぱい)していた。


それは二人が目的(もくてき)を達成(たっせい)し、戦争の火種を作ったとしても、共和国内部でテロ行為(こうい)を行(おこ)えばまず命(いのち)を落とすと思ったからだった。


「そしてあたしは、ノピア将軍(しょうぐん)のいうことも聞かずに、こうやって共和国に来ちゃったんだ」


自嘲(じちょう)気味(ぎみ)に笑うジャズ。


そんな彼女に抱かれているニコが悲(かな)しそうに鳴いていた。


「バカだよね……。上の言う通りにしていれば何か解決(かいけつ)策(さく)があったかもしれないのに……。あたしって本当にバカだよ……」


「どうして……」


「えッ……?」


そんなジャズの話を聞いていたミックスが、突然声を張(は)り上げる。


「どうしてそんな大事なことを、今まで黙(だま)ってたんだよ!」


普段(ふだん)は大人しいミックスが怒鳴(どな)ったことで、ジャズは驚(おどろ)いてしまっていた。


申(もう)し訳(わけ)なさそうに彼のことを見ては、ニコを抱く手に力が入ってしまっている。


ギューと抱きしめられたニコは、彼女の腕(うで)の中で苦(くる)しそうにもがいていた。


「だって……あんたは関係(かんけい)ないじゃん……。それに……あたしがストリング帝国の人間だって知ったら……」


「知ったらジャズのことを見捨(みす)てると思ったのか!? こっちはご飯作ってあげてプレゼントまでしたのに……。俺のことを見くびらないでよ!」


「ミックス……うぅ……」


すると、ジャズが突然泣き出してしまった。


そんな彼女を見たミックスは言い過ぎたと思って大慌て。


なんとかジャズに泣き止んでもらおうと、必死(ひっし)になって言葉をかけ始める。


「ただいま帰りましたよ。食材(しょくざい)がほとんど売ってなかったので、今夜はハンバーガーで我慢(がまん)してください」


そこへアミノが戻ってきた。


彼女は泣いているジャズと慌てているミックスを見て絶句(ぜっく)している。


「アミノ先生……こ、これはですね……」


「どんな理由(りゆう)があっても……女の子を泣かすのは最低(さいてい)ですよ!」


それからミックスは、怒(いか)り狂(くる)ったアミノに長々(ながなが)と説教(せっきょう)されるのだった。


正座(せいざ)しながらミックスは思う。


「でもまあ、こんなもんだよね……ハハハ……」


「ちゃんと聞いていますかッ!? ミックスくんッ!」


「は、はいぃぃぃッ! すみませんでしたぁぁぁッ!」

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