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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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11/948

#11

その後――。


外へと出たミックスへアミノから連絡(れんらく)があり、ジャズの治療(ちりょう)が終わったことが告(つ)げられた。


そして、部屋へと戻(もど)ったミックスのことを、アミノは凄(すさ)まじい形相(ぎょうそう)で待っていた。


「ミックスくん。授業中(じゅぎょうちゅう)にジャガーくんがいっていた女の子とは、この少女のことですね?」


「いやだなぁ先生……。そんな怖(こわ)い顔しちゃって……」


「では、この子いったい何者(なにもの)なのか。それとどうしてこんな酷(ひど)いケガを負(お)っているのか。全部事情(じじょう)を話してもらいましょうか」


両腕(りょううで)を組んで仁王(におう)立ちをしているアミノ。


明(あき)らかに怒(おこ)っている彼女を見たミックスは冷(ひ)や汗(あせ)が止まらず、思わずジャズのほうへと目を向ける。


ジャズはアミノの持つジャージへと着替(きがえ)えており、ろくに干(ほ)してなさそうなぺったんこの布団(ふとん)で眠(ねむ)っている。


そんな彼女の横(よこ)では、ニコも寄(よ)り添(そ)うように寝ていた。


いい気なもんだと思いながら、ミックスは冷や汗を掻(か)いている顔でにこやかに笑う。


「いや~実(じつ)はその子は俺(おれ)の妹(いもうと)で寮(りょう)に遊(あそ)びに来てたんですよ」


「ほう、妹さんですか。それにしては彼女のほうが大人(おとな)びて見えますね」


「そうそう、そうなんです! ほら、俺たちくらいの年頃(としごろ)って女の子のほうが早く大人になるっていうじゃないですか」


「それじゃ、この酷い火傷(やけど)はなんですか?」


「そ、それはですね……。一緒(いっしょ)に料理(りょうり)を作っていたらサラダ油(あぶら)で火が付いちゃって……」


ミックスがそう答(こた)えると、アミノはプルプルと身体(からだ)を震(ふる)わせた。


そんな彼女の顔を覗(のぞ)き込(こ)むと、その目には涙(なみだ)がたまっている。


「せ、先生……?」


「うわぁぁぁん! なんでそんな嘘(うそ)をつくんですか!? やっぱりミックスくんは先生のことが嫌(きら)いなんですね!? 信頼(しんらい)してくれないんですね!?」


ダムにためられた水が勢(いきお)いよく放(はな)たれたときのように――。


アミノの目からは洪水(こうずい)のように涙が流(なが)れ出し、その場で泣き喚(わめ)き出してしまった。


「うわあ、泣かないでッ! 嫌いじゃないから! 俺先生のこと大好きだから! もう神(かみ)さまよりも信頼してますってッ!」


大慌(あわ)てで彼女が泣き止むように言葉をかけたミックスだったが、もう穴(あな)の開いてしまったダムの水が止まることはなかった。


喚く声と慰めようとする声がうるさかったのか、ジャズがウトウトと身体を起(お)こす。


ニコも彼女と同じように目を覚(さ)ましていた。


そしてジャズは目覚(めざ)めてすぐに、ミックスへと冷(つめ)たい視線(しせん)を向けた。


「いくら年上(としうえ)だからって、女を泣かすなんて最低(さいてい)……」


「その元凶(げんきょう)になっている奴(やつ)がなに俺を軽蔑(けいべつ)してるんだよッ!」


ジャズへ食って掛(か)かったミックスのことを、ニコも彼女と同じように冷たい視線で見ていた。


その後もミックスはごめんなさいとアミノに謝(あやま)り続け、なんとか泣き止んだ。


そしてミックスは、落ち着いたアミノに向かってそっと手を挙(あ)げる。


「先生、訊(き)きたいことがあるんですけど」


ミックスはアミノへ――。


彼女が事情(じじょう)を知りたい理由(りゆう)は、学校の理事会(りじかい)や、国の治安(ちあん)を維持(いじ)する組織(そしき)――監視員(バックミンスター)へ報告(ほうこく)するためだからなのかと訊(たず)ねた。


訊ねられたアミノはコクッと頷(うなづ)いた。


先ほど見たニュースで、街中でボヤ騒(さわ)ぎがあった知った。


そんなときに火傷をした少女を抱(かか)えた生徒(せいと)がうちに来たのだ。


どう考えても二人が事件(じけん)と関(かか)わっているとしか思えないと――。


アミノは声を張(は)って言う。


「ミックスくんたちがどんな事件に巻(ま)き込(こ)まれているのかはわかりませんが。あなたが先生の生徒である以上、放(ほう)っておくわけにはいきません。私には監視員(バックミンスター)で働(はたら)いている友人もいますし、必(かなら)ず力(ちから)になれます」


顔を背(そ)けるミックスにアミノは近(ちか)づくと、じっと彼の目を見て言葉を続けた。


「ミックスくんは、何か危険(きけん)なことに首(くび)を突(つ)っ込もうとしているのでしょう? そんなこと……あなたの態度(たいど)を見ればわかりますよ」


「アミノ先生に隠(かく)しごとはできないか……」


ミックスは真(ま)っ直(す)ぐ見つめてくるアミノの目を見返した。


そして、自分の思っていることを口にする。


「でも、ごめんなさい。俺、先生を巻き込みたくないんです。それと、この子は絶対(ぜったい)に悪(わる)い人間じゃありません。それだけは信(しん)じてください」


彼の言葉を聞いたアミノは、すっと背を向けるとそのまま玄関(げんかん)のほうへと歩き出した。


そんな彼女へミックスが声をかけると――。


「ミックスくんらしい言葉です。……ですが、そんなことで先生は誤魔化(ごまか)されませんよ。とりあえず、続きは何か食べながら話しましょう。二人もそこの羊ちゃんもお腹(なか)が空(す)いているでしょう? ちょっと買い出しに行ってきますから部屋で待っていてください」


そういって外へと出かけていった。


静(しず)まり返った部屋で、ジャズがミックスへ声をかける。


「あの人、良(い)い人だね。それにあんたのこと、ずいぶんと信頼しているみたい」


「ああ、嬉(うれ)しいことにそうなんだよね……」


ミックスは、微笑(ほほえ)みながらいってきた彼女へ、笑顔(えがお)を向けてそう答(こた)えた。

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