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太陽系興亡史  作者: 双頭龍
第3章目的のためには教育だ
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第17話

 はい、お久しぶりです。一ヶ月ぶりの投稿と相成りました。その間の投稿もせず筆者は何をしていたのか? はい、CIV6です正確に言えば、忙しい中ゲームをするための環境作りをしていましたとさ。いやー面白いですよCIV6。なんたって蛮族が強い。ただ最初なのでなにやら良く落ちるんですがね。まあオートセーブありますから問題ないですが、いきなり奇襲先制首都水爆攻撃を受けたときはびっくりしましたね、緊急退避勧告といわれた後にCIV6自体がダウンしたのは面白かったですが。退避しろってゲームからかい。後PSVRとBF1が有りますがまたそのうちにでも感想をと思っています。


 「えーっと、シュラク君でしたね。硝石はどのようにして産出されるか知っていますか?」

 硝石自体も見たことが無いんですが、ましてやどのように産出されるかなんて知らないですよ、先生。


 「いえ、判りません、でも農地で作れるんでしょうか? なにか鉱物の様な物だと思っていたのですが」

 

 「そうですね。農地で作るというよりは地面で作るというのが正確でしょうか。もちろん乾燥地帯であれば自然に地面に析出していることも有ります。動物、とくに海鳥の排泄物等の堆積物である物にも硝石が含まれることがあります。しかしそれらはここが産出地では当然有りません、前者は乾燥地帯に多く、また後者は海上の島に多いようです。となると距離的に取りに行くのも大変ですし、金銭的にも取りに行くのは不可能でしょう。最初はエルザ先生に融通して貰っていたのですが、頼りっぱなしというもの少々どうかと思いましてね。それで少々図書館で生徒達が調べた結果、硝石を作ることが出来るということが判りましてね。それで試しに作ってみようと相談していたら、コウジ先生やエルザ先生にも助けて貰いまして、硝石の生産にこぎつけたわけです」

 説明を受けながら、コール先生が農地の真ん中にポツンと立っている白い外壁の建物に続く道を農業科の準備室の敷地から出て歩いていく。


 「地面が硝石を作るとはどういうことでしょうか? 硝石とは自然に、勝手に出来るものなのでしょうか?」

 

 「いい着眼点ですね。もちろん何もせずに地面を放置しているだけでは硝石は取れません。この問題の鍵は、ずばり微生物の活用にあります」


 微生物だって? ちっちゃな生物という意味だろうか? 


 「微生物ですか?」

 

 「はい、微生物です。微生物の説明からしたほうがよさそうですね。微生物とは肉眼では見ることの出来ない生物のことです。生物の定義は少々厄介なので避けますが、生命とは我々の眼に留まる生き物だけではありません。我々の周りにも数多くのごく小さな生命である微生物が浮遊し、生命活動をしています、我々と同じようにね。信じられないという顔をしていますね。まあこの生物の教科は来年度からの予定ですし、今年度の農業科など一部生徒以外が分からないのも無理は無い話ですが。しかし、ふむ、何かしらこの分野に対する知識の習得を考えないといけないかもしれませんね。おっと失礼、話を戻して、わかりやすい例をあげましょうか。例えば生肉を放置しておくとしましょう。どうなると思いますか?」


 なにやら不吉な補講の足音が聞こえた気がするが、まあ後で図書館に駆け込もう。

 と、それは横に置いとくとして、肉を放置か。

 放置すると最初は動物に食われたりして、次に虫がわいて、ぐじゅぐじゅに溶けて、最後には無くなるらしいけど、と戦場に出たことのある父達が言っていたから知っているだけで実際に見たことは無いが、それのことかな?

 

 「最後には無くなるとだけは聴いたことがあります」

 

 「ふむ、間違ってはいませんね。正確には色々な細菌といわれる微生物が働くことによって肉の成分である物質を分解することになります。だから最後には肉は無くなるのです。これを腐敗といいます。もし一切の生命がいない環境を用意したら、当然肉の中にもですよ、肉はいくら放置してもそのままでしょう。まあ絶対にありえませんがね。このように微生物といわれる生物は何かを腐敗させることもあれば、同時に人間にとって有益なことをすることもあります。例えばチーズ等の乳製品やワインやビール等の酒類。高級な食品としても知られているチーズですが、何故液体である牛やヤギの乳が固体になるか、そして味が変わるか、加えて長期保存が出来るか、というのには微生物が係わっていると考えています。ワインやビールといった酒類も同じです。何故味が変わるのか、長期保存が出来るのか、アルコールが出来るのかも同じです。これらは人にとって益になるでしょう。そういった微生物を活用するのも私は農業の重要な役割であると考えます。まあ酪農も農家の仕事ですしね、さほど差はありませんよ。目に見えるか、目に見えないかの違いです」

 な、なるほど。理解できたような、理解できなかったような。ま、まあ乳がチーズになるぐらいだから何かが硝石になってもいいの、か?


 話しながら歩いていると白い建物の前まで到着してしまった。


 「ここが農業実験所微生物研究所です。と、いってもここの施設が完全に機能するのはまだまだ先の事でしょうけどね」

  

 「ここで微生物を利用して硝石を作っているのですか?」

 

 「ええ、そうです。こちらからどうぞ」

 建物の扉から中に入れると思いきや、なにやら何も無い部屋につれてこられた。

 

 「ここで服と履物を着替えてください。中に外からの微生物を入れるわけにも、ましてやその逆も非常に危険ですからね。着替え終わったらお互いに確認事項を確認しあいましょう。それがこの建物の最も重要な規則ですのでね」

 うん? どういう意味があるのだろうか? 外の微生物を持ち込まないようにというのは理解出来そうなきもするが、その逆も危険なのだろうか?

 

 「微生物とはそんなに危険な物なのですか?」

 服を脱ぎ、用意されている白衣に着替え、さらにその上に白いワシャワシャした服を着る。確かこれは人工樹脂といわれている布だったような。化学の実験で液体から繊維を作った時、完成品を見せて貰ったときの布地に似ている気がする。その上からこれもまた人工繊維で出来たと思われるブーツを履き、さらに靴の間に何も入らないように覆いを被せる。 


 「この中で扱っている微生物は多岐にわたります。というのも来年度からは生物学、医学、薬学部も新設され、その分野の研究もしなければならないことから、病原性を持った微生物の保存も、ここだけの話ですが、しています。これは病原性をもった微生物が原因である病気や疫病に対する治療法や有用な薬の研究のためです。更に悪いことに……」

 え、病原性のある微生物の保存しているの? しかも更に悪いことにって、まだなにかあるの? もしかして、僕、いきなり生命の危機?

 

 「更に悪いことに、なんですか?」

 唾を飲み込み、恐る恐る聞いてみる。


 「この奥には、人間あるいは動物に生死に関わる程度の重篤な病気を起こし、容易に人間の間で直接、または間接的に感染を起こし、更に有効な治療法・予防法はエルザ先生しか知らない、多数存在する病原体の中でも毒性や感染性が最強クラスである微生物や、微生物より更に小さなウイルスといわれるものが保存されています。まあそっちのほうには行きませんけどね」


 ……うん、脅かされただけのようだ。

 

 「あまり驚いていませんね」

 

 「ま、まあ既に驚いた後ですし」


 硝石プラント室の前まきて、部屋に入りなにやら作業を始めるコール先生。


 「まあ良いでしょう。硝石の生産には自然界にいる微生物をエルザ先生が硝石製造能力を改良した菌である目の前の土の中にいる硝酸菌と、その反応の前段階である亜硝酸菌を使用します。ともに自然界には存在しない菌ですので硝石を外に持ち出す際は十分に注意しなくてはなりません。もしこの反応を我々が手を加えずにしたとしたら5年は掛かるところをこの改良された細菌は2ヶ月で、更には産出量も10倍近く産出します。そのおかげで硝石には困らないでしょう、たぶん」


 部屋に入ってきたときにはじめた作業を終え、スコップ片手になにやら別の作業を始めるコール先生を横目に周りを見渡し、色々な機器があるなあと思いながら質問する。

 「たぶん、ですか?」


 「まあ大規模に生産したことが無いものですからね。この規模の微生物プラントでの実績ならありますけどね、大規模にするとなると色々と問題は出てくることになるかと思います」

 

 「例えば?」

 

 「技術的なことになりますけど、微生物を使う方法にはいくつかの方法があります。例えば家の水の当たらないところの土、そうですねお勧めは空気が通っていて、更には湿り気が無いところの土でしょう。ここの土を地面から10cmほど掻き集め、水に混ぜ、その水を乾燥させることによって硝酸カルシウムを取り出し、濃縮した後、そこにカリウム類を入れることによって化学反応を起こし、硝酸カリウムすなわち硝石とすることが出来ます。微生物の観点からこの反応を見ると空気中のまたは土壌中のアンモニアを亜硝酸菌が受け取り亜硝酸を産出し、硝酸菌がその亜硝酸を受け取り硝酸イオン、主に硝酸カルシウムとして産出します。これがコウジ先生の国では古土法といわれる硝石の生産方法だそうですが欠点は言うまでも無く土の入手量でしょう、また一回採取した所から再度採取するにはおよそ速くても10年、遅ければ20年程の年月が必要なことも大きな欠点となるでしょう。次の硝石丘法はこの欠点を克服するものとして考えられたそうです、硝石が混入されている土を集めにくいのであれば自分で作れば良いじゃないかと。この方法は葉や草を乾燥させ、その束に黒土や腐り水を混ぜ腐敗尿や糞堆の汚水を足して乾燥させ、数カ月おきに混ぜて糞尿を腐らせたものを追加して4、5年で表層の土を先ほどの方法と同じで精製して硝石が完成です。この方法の欠点は言うまでも無く乾燥と温度の維持が困難なこと、湿度が高かったり低温になると亜硝酸菌、硝酸菌ともに働かなくなりますからね、腐敗糞尿の取り扱いが極めて困難なことです。取り扱いに失敗すると硝石を作っているのか疫病を発生させているのかわからなくなりますからね。最後が培養法、硝石丘法と同様に古土法の改良型ですが、大きく異なっている部分は腐敗糞尿を使用しない点にあるとのことです。腐敗糞尿の代わりに蚕という虫の糞と亜硝酸を多く含んだ植物を加えるのが特徴でしょう。この方法は考えれば当然です。乾いた土、乾いた草、乾いた蚕の糞を用いて土に空気を良く通すようにして、硝化細菌によるアンモニアの硝化反応を促進しているのであり、この乾いた土に人糞尿をかけることは,空気を良く通すという条件を壊して、アンモニアの硝化反応を低下させるものであるからです。空気を通さない状態を作ると脱窒素細菌といわれる細菌類が硝酸を窒素に分解させる一因にもなりますからね。まあどっちにしろ蚕もいなければ亜硝酸植物も有りませんから、そこを補うのに細菌そのものに手を加えることにした、とコウジ先生とエルザ先生は言っていましたけどね。この硝化細菌が働くときはエネルギーを生み出します。プラントの方に手をかざすと判ると思いますが暖かいでしょう。これも問題の一つですね当然暖かすぎると菌たちも生き物ですから働いてくれません。空気の取り入れも重要な要素です、これを多くすることは労力の要る作業になるでしょう。つまりまとめると課題は乾燥の維持、温度の管理、空気の管理、土壌の管理となるでしょうね」

 手を止めずにスコップで土を集めながら話続けるコール先生であるが僕の頭は現在フル回転中だ。化学的な知識が無ければ言っていることがまったく分からないところだった。なるほど、つまりアンモニアを亜硝酸菌と硝酸菌を利用して硝石にしているのか。

 しかし大規模生産の問題点は小さくないように見えるが大丈夫なのだろうか?


 「さてこれ位の土からなら頼まれている量の硝石が出来るでしょう。もちろん硝石が出来るのを待っている必要はありませんよ。精製後の硝石の保存場所まで行きましょう」

 そう言うとスコップで集めた土を部屋の隅においてある装置の中にいれスイッチを押してこっちに向かってくる。


 「さて、この部屋から出るときはこの小部屋で薬液を浴び、乾燥後、その後トレイの中の溶液に靴底を2分以上つける決まりですので、小部屋の中で浸かってください、出て行くときはそちらの扉から。さて入りますよ」

 小部屋の中に入るとプラント側の扉が閉まり、薬液が浴びせられる。なにか鼻につく匂いである。薬液を浴びた後は紫色の光とともに強力な風が服についた薬液を飛ばしていく。


 「先生これは何ですか?」

 風に負けないように叫ぶ。


 「光と風でこの部屋の中にいる微生物を外に出さないようにしているのです」

 先生も風の音にに負けずに声を張り上げる。

  

 風と紫色の光が止み、静かになった小部屋の中で溶液を入れたトレイを持ってきてくれたコール先生と一緒に靴底をその中に浸す。


 「ここまで徹底する必要があるのですか?」

 

 「有ります。この菌は自然界に無い菌です。もしこの菌が外に出ることになったらどのようなことがおきるか想像がつきません。もちろん想定は出来ますが、想定外のことも起こりうるでしょう。何しろ相手は生き物ですからね」

 ふーんそういうものなのか。難しいんだな。

 

 その後保存小屋に寄り硝石の袋を貰い、運搬上の諸注意を受けてオントス寮長の元に向かった。



 

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