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太陽系興亡史  作者: 双頭龍
第3章目的のためには教育だ
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第16話

 「というわけで聞いてきてほしいんだよ」 

 カウルさんが説明してくれるのだが、どうも僕が聞きに行く必要性が感じられない。任されたのはカウルさんであって僕ではない。てか、面倒くさいから丸投げされたような気が。


 「いやいや、これもシュラクの将来の為なんだよ」

 絶対うそだ、この人自分で聞きに行くのが面倒くさいだけなんだ、絶対。


 「カウルさんが直接聞きに行けば良いじゃないですか」


 「いやいや俺が聞きに行くよりシュラクが行ったほうが良い結果になるよ、本当なんだって、そんな顔しないで、聞きに行っといでって。シュラクは情報の収集と分析に才能有るから、それを伸ばそうという、何というか親心? だよ。あんまり褒めて伸ばすのは苦手なんだけど、このカウルさんが言うんだから間違いないよ」

 えー、本当かな~? 僕、才能有るかな。なんか普通に乗せられてる感じがする。でも興味は有るだよなー。しょうがない、乗せられるか。


 「しょうがないですね調べてきますよ」

 

 「シュラク情報幕僚、さすが」

 茶化されとこう。



 さて、誰に聞きに行くか。やっぱりサエルさんか? ここはエキエルという手もあるか。うーん銃床を木で作ってたから、ドリャノさんにも話を聞きに行かないといけないか。まてよ、火器の力の元である火薬のことも考えておかないといけないか。火薬か化学実験好きな生徒達に聞きに行かないといけないよな。たしかエレミヤさんと親しかったからエレミヤさん経由で聞けばいいか。少なくとも千丁の小火器と一回撃つごとに必要になる発射薬である大量の火薬を比較的速やかに、さらに情報の流出を防ぐ形で生産するには、か。案外難しいんじゃないかな。これ。

  


 


 でサエルさんに聞きに来た。千丁の小火器可及的速やかに、かつ極秘裏に作ることは出来ますか? と。

 「それは今やれっていわれりゃあ、やるけどよ。千丁もってなると結構大変だぞ。後装式、金属薬莢も無理だろうし、ましてやライフリングを刻めるかどうかも、削りだしだと不安があるな。それどころか今の一点一点個別に生産するんじゃ、数を揃えるのは時間がかかりすぎる。やはりここは分業方式を組むか? いやしかし、まだ小火器自体が実験段階だ。ライン組んで、その結果、撃った時に撃てませんじゃ、武器としてはふざけるなってことにもなるし」

 サエルさんが悩んでいる。ん? ラインって何だ?


 「ところでラインって何ですか?」


 「ああ、ラインってのは同一の生産物を大量に生産するときのやり方だ。各職人にお前はこれを、そっちのお前はこれってきめるんだよ。例えば防具を今回みたいに急いで大量にって頼まれたとしよう。普段なら一人一人がばらばらに頭とか、胸当とか、脛当、等々を好きに作っててもかまわないんだけど、やっぱり時間がかかるんだよな。じゃあどうするかっていうと、お前頭、俺胸、みたいに作る部分を決めて分業する。だから分業方式といってる。結構急いでるときは何処の鍛冶やでもしてるのさ。これを見て食堂にも使えるなあ、といった奴もいるがな」


 へー、そんな方法があるんだ。でもなんでそれが撃てなくなることにつながるんだろう? てか食堂でどうやって使うんだろう?

 「なんでラインを組むと撃てなくなるんですか? 食堂で使えるってどういうことですか?」

 

 「ライン生産の欠点か。分業化の欠点は何個か有るんだが、一見効率的に見えるけど、作業によっては非効率的になる。例えばさっきの例で言うと、どう考えても脛当とか作ってる奴は、胸当作ってる奴より生産量が多くなるだろう。でも専門的になると割り当てた作業以外の作業が出来なくなる、俺ら鍛冶屋に防具の内に敷く皮の加工を手伝えといわれても無理な話だからな。そのほかにもラインの一つの職人が怪我でもしたりしてみろ、脛当だけが無い防具を着なきゃならん兵士は可哀想だぞ。まあ他にも、途中で発注された量を増減されたら大変だし、失敗したりしたら責任の所在が不鮮明になりがちだし、って不思議な顔してるが、これ本当にあった話なんだぞ、全部。話がそれたな。それで撃てなくなるってのは、まだ実験段階だからな、設計図の通りに各分業生産者が生産したとしても、一点一点入念に検査して納品しなければ、使ってる途中で撃てなくなることも発生しかねないし、第一生産が悪かったのか、設計が悪かったのかわかったもんじゃない。今なら俺達が付きっ切りで生産工程を傍で見てるから責任が持てるが、外の鍛冶屋に注文を出すとなると、な。あと食堂はエレミヤが言った事だ。奴に聞けばいいと思うぞ」

 一気に言いながら、どうしようかと悩んでいるサエルさん。


 「よし、撃鉄に連動している板バネと撃鉄本体、銃床、負い紐、負い紐の留め具、銃剣を外部に発注して銃身と薬室、引き金をここで生産するか。あとは弾と火薬だな。弾も外注するか。前装式雷管付き紙薬莢で生産しておいて、すぐに後装式金属薬莢に出来るように作るしかないか。火薬もの話も聞きたいと言ってたな」

 もう決めたのか、決断速いなあ。

 

 「あ、はい」

 

 「それならエレミヤに聞きに行くといい。俺はすぐに炉の話をしにコリンの所に行ってくる」

 忙しそうに鍛冶場を出て行くサエルさんであった。

 

 



 「で、火薬の事を聞きに来た、と」

 エレミヤさんの所にやってきたのであるが、匂いが凄い。後ろの火の上に置かれているガラス瓶からなにやら物凄い臭いがする。

 この部屋が簡易型の化学実験室である。それほど大きくない部屋に、中に何かの液体や固体が入ったガラス瓶が大量に置かれている棚が壁の周りを占領している。中央の机に色々なガラスで出来た実験のための道具が火で温められたり、螺旋状の管の中の色のついた液体が周りの水で覆われ、冷やされたりしている。

 一番の驚きはアルコールランプという液体が入ったガラス容器の中に芯があり、その先から火が出ている、物である。この化学実験室には学校中の大半のガラスが集められているといわれるほど、ガラスが多い。本当にガラスだらけである。


 「ええ、火薬と食堂の事です」

 

 「火薬から説明させて貰うよ。火薬は知ってると思うけど、一般的に不安定な固体や液体で、その一部に熱や衝撃を加えることで急速に化学反応を起こし多量のガスや熱を発生させ、局部的に高圧高温を出現させることによって他の部分でも化学反応を起こすものであるよ。比較的安定なものを爆薬、不安定なものを火薬と分類することもあるけど、一般的にどちらも酸素と結びつく反応をする、これが火薬の反応の元だね。大半がニトロ基を持つのが特徴でもある。ニトロ基とはNO2が結びついているって事なんだけど、当然例外もあるからね」

 

 「何故ニトロ基を持つんです?」

 

 「NとOの結合に大きなエネルギーを持っているからだと書いてあるよ。見たことも試したことも無いから詳しくは分からないけど、大体試し方も分からないしね。でその火薬が一発撃つのに大体3gかかるとしてこれを一人100発携帯すると、それだけで300g、それが千人分だとすると。300×1000で300kgになる。これだけの火薬を有煙火薬で作るとなると硝石75~80、木炭10~20、硫黄15~20の割合で混合させるから。大体硝石が225kg、木炭30kg、硫黄45kgが必要になる。当たり前だけど原材料を集めるのが最も困難だ。例えば硝石。これ薬として使ってるぐらいだから手に入らなくは無いけど高価。次に木炭、生産方法を伝えたばっかりでこれもそれほど高価では無いけど、かといって安くは無い。最後の硫黄だけど、黄銅鉱で一緒に産出されるているけど集めるのが大変、その他にも火山の火口付近から持ってくるかしないといけない。やっぱり高価。どれも安価な物じゃあないね」

 当然これだけしか弾を使わないなんていうことは無いから、生産量はもっと多くなる。そしてその値段もと、なる。


 「それに問題はまだあるよ。煙さ一斉に撃ったら、たぶん前が見えないほどの煙が発生するよ」

 それは嫌だな。飛び道具使っているときに視界が遮られるのはごめんこうむりたいものだ。でも有煙って事は無煙もあるんだよね?


 「有煙火薬ってことは無煙火薬もあるんですよね?」


 「ああ、無煙火薬、といっても完全に煙が出ないわけじゃあないけど、なら基本3種類あって、ニトロセルロースのみを元にするのか、そこにニトログリセリンを混ぜ元とするのか、さらにその他も混ぜて元にするのかと。例えばニトロセルロースと元とする火薬を作ろうとする。まずニトロセルローストの生成方法から説明すると、植物の細胞、って細胞から説明しないとだめだな、細胞ってのは生き物の基本単位だよ、の基本構造物であるセルロースを化学薬品で植物からとる。次に硝酸と硫酸を混ぜた混酸で処理して、残っている酸を洗浄、脱水、安定化させるための溶剤を加えて完成だ。ただしここで酸の洗浄、繊維の不均一化、硝化の不均一化、不純物の混入などを起こせば、自然発火を起こし爆発、または不発になるかの二者択一だよ。まえ製造したときに爆発させてわかったけど、非常に繊細な作業を何日も続けないと完璧なものを作れない。硝酸、硫酸も必要だし。原料である植物は綿か、紙を作る時に使っている精製された木質が必要だし、それを60~70%ほどの硫酸に45℃で3時間、または70℃で10分~30分でセルロースになる。硫酸はどうするのか、硝酸は硝石を利用すれば良いけど、作るのにやっぱり硫酸がいる。アンモニアの酸化法を使用することも出来るけど、そうするとアンモニアを用意しなければならなくなるし、触媒の白金を用意しなければならなくなるし、と。考えていると、どんどん深みにはまっていく気がするよ。まったく」

 なるほど一つ生産物を作ろうとするとそれに対してさらに必要な生産物が出てくるのか。

 あはは、大変だなー。


 「ふむ、笑ってないで手伝って貰おうか」

 うぐ、笑うんじゃなかった。

 

 「その代わりに食堂の話をしてあげよう。たいそうな話じゃないからそのつもりで。食堂も分業化できるかなと思っただけなんだけどね。注文をとる係、作る係、運ぶ係、洗う係とどんどん分業化していくと、質量ともに良くならないかなと考えてたんだよ。まあ、問題も多そうだけどね」

 

 「なんかマネジメントに似てませんか? 軍事学でも取り上げられてましたよね」

 

 「うん。確かに似ているし、当てはめてもいいんだけど、先に火薬の算段を付けようね」  

 ちっ、話をそらせなかったか。

 

 「それで、何を手伝えばいいんですか?」 

 

 「まず硝石の確保のために、コール先生の元に、エルザ先生は……、シュラクじゃ……、だめだな、こりゃあ、まあしょうがない、俺が行くか。次はオントス寮長の元に火薬生産実験の許可を、最後に校長の元に承認を貰いに行ってほしい」

 エルザ先生はあんまり話したことの無い先生である。何でも天文学を中心に教えているらしい、神官の子供達が主な生徒だそうだ。コール先生は元神官で主に農業を教えている。何故コール先生が硝石を持っているのか分からないが。後は許可関係だろうか、書類をものすごい速さでエレミヤさんが記入して行っている。

 「よし出来た、これをコール先生。こっちがオントス寮長、で、こっちが校長だ。よろしく頼むよ。さてエルザ先生の元に行ってくるかな。てかこの時間起きてるだろうか?」

 書類を手渡し、エレミヤさんが不穏なことを口ずさみながら部屋を後にした。

  




 「それで貰いに来たのですね。硝石を」

 コール先生のいる農業科の準備室にやってきて書類を手渡し、周りの農機具をきょろきょろと見ていると声をかけられた。

 

 「はい。しかし何で農業科に硝石を貰いにくるんでしょうか」

 ついでだから疑問をぶつけてみた。

 

 「いい質問ですね。ずばり硝石の化学組成である、硝酸カリウムを肥料として使用するからですね。他にも硝石自体の生産も可能ですし、実際にしています。まあ論より証拠、見ていきますか?」

 肥料か、たしか植物の栄養だったよな。でも硝石の生産だって? 硝石って農地で作れるのか? 見たいかって? 見てもいいのか?


 「見てもいいのですか?」

 

 「かまいませんよ。こちらです」

 コール先生は準備室から出て歩き出した。



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