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第5話 エルフの里 Ⅱ

元エルフの里 アールヴーー現在はルクシリア王国の支配下にあるその地で、一人の男が苛立ちを露わにしていた。


「いったい何をしているのだ!」

「いつまで経っても戻ってこないではないか!」


男の怒声が室内に響き渡る。


机の上に積み重なった書類を男は乱暴にはらいのけると、苛立たしげに頭を掻いた。


「魔族共を捕えるだけの簡単な仕事だぞ!」

「あいつらは、それすらもまともにこなせんのか!」


すでに予定している期日は過ぎている。

隠しきれない焦りが男に見える。


「くそ...!あのお方からこの地を任されていうのに...!」

「部下は使えぬものばかりではないか!」


この地を任された以上、成果を示さなければならない。

ましてや、あのお方の命に背くような事態になれば、どのような処罰が待っているか分からない。


「おいおい、そうカリカリするなよ。」


すると、部屋の中に一人の男が入ってきた。


「あ、あなたは...!」


純白の鎧を身につけたその騎士は、部屋に入るとソファーに腰をかける。

テーブルに置いてあった酒のボトルをコップに注ぎながらこちを開いた。


「報告期日まではまだ時間がある。」

「だから、あんたも落ち着いて一杯どうだ?」


「し、しかし...。」


陽気な騎士とは裏腹に心配そうな表情を浮かべる。


「万が一のことがあれば俺が出向いて対処してやる。」

「それにあの方もそこまで鬼ではなさ。」


その言葉に少し安堵した表情を浮かべた男。


「まあ、腕の一本は覚悟しておいた方がいいかもな。」


騎士が笑いながら物騒なことを口にすると安堵した表情が一気に青ざめる。


そんな男をよそに、騎士は酒を片手に部屋の窓から空を眺めた。


「何か、面白い子来そうだ。」


酒を一口した後、男の表情には不穏な笑みが浮かべられていた。


=======================


ステラたちエルフの邂逅から1週間。


レウスは、現在王国が支配しているエルフの里へと訪れていた。

ステラと立てた作戦通り、単独でエルフの里に侵入を試みている。


「次のやつ前にでろ。」


里に入るための門では検問が行われていた。

一人、また一人と呼ばれる中、レウスの順番になった。


「お前、冒険者か?」


レウスは外套を被り、腰に剣を携え、冒険者のような格好をしていた。


「はい。」


「じゃあ、ギルドカードを見せろ。」


そういうと、門番の兵士が手を差し出すが一向に渡される気配がない。


「おい、聞こえないのか!」


すると、レウスは口を開いた。


「それが、来る途中で魔物に襲われてしまって荷物を全て落としてしまいまして。」

「そこにギルドカードも...。」


レウスのその言葉で門番の兵士は鼻で笑った。


「冒険者が魔物から逃げた挙句、荷物まで落とすなんて情けない奴だな。」

「まあ、いい。里の中には出張の冒険者ギルドがあるからそこで再発行してもあれ。」


すると、門が開き里の中に通された。


ーーなんだ、やけにあっさり入れてくれたな。


何はともあれ里の中には侵入できた。


里に入るとそこには木の上にいくつもの家屋が並んでいる。

かつてエルフたちが住んでいた残りだろう。


逆に地上には人族が占領してから立てたと思われる建物がいくつも並んでいた。


そして、里の中には王国の兵士たちに加え、魔物狩りに来ているであろう冒険者たちの姿がほとんどだった。

残りは、商人や飲食関係の人たちが少数といった感じだ。


ーーそういうことか。


恐らくだが、ここは人族にとっては前哨基地。

だが、魔封じの結界とここには魔族と魔物のしかいないためか、警備自体はかなり薄いのだろう。


「まずは情報だな。」


そう言うと、レウスはある場所を探し踏み出した。


そして、目的の場所に付き扉を開く。

そこには昼間だというのに、多くの冒険者で賑わっていた。


「エールを一つ。」


レウスはカウンターに着くと他の客同様、酒を注文した。


そう、ここは酒場だ。


勇者時代の頃に学んだうちの一つだ。


情報が欲しいときは酒場が一番。

世界中を回っている冒険者たちは酒の肴に、自分たちの持っている武勇伝や情報を持ちよる。


直接話を聞くこともあったが、今は極力目立ちたくない。

聞き身を立てていれば何かしら情報が入ってくるはずだ。


すると早速。


少し離れたところで三人組の男の冒険者たちが話をしていた。


「なあ、聞いたか?」

「魔族狩りに出かけた騎士団の兵士たちが、1週間も経ってまだ帰ってきてないんだと。」


ーー魔族狩り...俺が仕留めた奴らのことか?


「お高く止まった騎士団の連中のことなんか知るかよ。」

「そこら辺でのたれ死んでんじゃねーのか?」


「それはないだろう。」

「携帯用とはいえ、魔封じの魔道具を持ってんだろ?」

「魔族、それもエルフたちみたいな貧相でガリガリの奴らになんか負けないだろう。」


一人の男が鼻で笑った。


「それはどうかねぇ?」

「あいつら魔道具のおかげで、魔法も使えない魔族たちを狩って遊んでるだけだから対して強くもねえだろ。」

「だから、途中で魔物にでも襲われたんどろきっと。」


すると、もう一人の男が話を変えた。


「魔物といえば、最近森の様子がおかしくないか?」

「あんなにいた魔物の姿がここ数日ほとんど見かけなくなっちまった。」


「確かになぁ。」

「俺も今朝方森の方に狩りに出かけたってのにほとんど収穫がなかったわ。」


「お前もか?」

「てことは、ここにいる冒険者の連中も同じ感じか。」


その瞬間、先ほど鼻で笑っていた男が持っている酒瓶を机に叩きつけた。


「不公平じゃねえか!」

「騎士団の連中が魔族狩りを独占しているせいで、俺ら冒険者は危険な思いをして魔物狩りをしているのによう!」

「魔物が少なくなれば収入も減るしよう!」


「しょうがねえだろう。」

「第一、魔族狩りは国が管理して騎士団が派遣されてやってんだ。」

「俺たち冒険者には魔族狩り許されてねぇんだよ。」


「それが不公平だっていってんだよ!」

「アイツらばかりいい思いしやがってよぉ!」

「知ってるか?帝国じゃあ冒険者も魔族狩りを許可されていて、数匹捕まえただけで数ヶ月遊んで暮らせる金になったらしいぜ!」


その言葉に他の男たちも驚きの表情を見せた。

だが、一瞬でその表情も消えた。


「でも、ここじゃあ無断で魔族を捉えれば国から裁かれて、最悪処刑だしな。」

「帝国に行くだけの金もコネもねぇし。」


一斉に落ち込んだ表情を見せた。


ーーどうやら国の連中と冒険者の間では確執があるようだな。


「そういえば、捉えた魔族たちってどうしてるんだろうな。」


ーーまだ生き残りがいるのか!?


その言葉に一番の反応を見せるレウス。


「さあなぁ。ここじゃあ、捉えられた魔族たちは中央の大樹の上にある騎士団の屋敷に連れて行かれるみたいだけど。」


「物好きの貴族にでも売られるんじゃねえか?」


「俺はなしだなあ。」

「なんというか、嫌悪感みたいなの感じちまって。」


「俺は結構ありかも。魔族の中でもエルフの連中なら。」


「「マジかよぉ」」


二人揃って怪訝そうな表情を浮かべる。


すると。


「毎度あり。」


レウスは酒を飲み干すと店を出た。


目的の魔封じの場所は特定できなかったが必要な情報は聞けたし、胸糞悪い話に付き合うのはもうごめんだ。


そんなことを思いながら先ほど冒険者たちが話していた、大樹の上にある屋敷へと視線を向ける。


「行ってみるか。」


話の中で出てきたエルフたちの生き残りがいるかもしれい、何より俺の感があそこに何かを感じている。


レウスは屋敷に侵入するため、夜が吹けるまで身を隠すことにした。


そして、里に侵入してから数時間。

日は完全に沈み、夜の帳が里を包み込んでいた。


月は雲に隠れ、その光すら地上には届かない。

人目を避けて動くには、これ以上ない好都合な夜だった。


早速レウスは屋敷のそばまで近寄ることができた。


「やけに警備が薄いな。」


恐らくだが里の中同様、人族しかいない前線基地で警戒することが少ないせいだろう。


レウスは倉庫と思われる部屋の窓から中に侵入した。

そっと部屋の扉を開けて外の様子を伺うが、そこには誰の気配も感じなかった。


部屋を出てから慎重に屋敷内を探索していた、その時。


「きゃぁぁああ!」


女性の叫び声のようなものが聞こえて、焦ったレウスは近くの部屋の中へ隠れた。


その後も悲鳴が何度か聞こえたが屋敷の中の兵士たちが集まる様子はなかった。


不思議に思ったレウスは部屋の窓から外の兵士の様子を覗いてみた。

外の兵士たちにも声が聞こえている様子だったが、慌てる様子どころかどこか緩んだ笑みのような表情をしている。


何か嫌な予感を感じ、身を隠していた部屋を出ると悲鳴が聞こえた方角えと足を運んだ。


そして、声の聞こえた部屋の前まで来るとそこで。


「やめて!来ないで!」


悲鳴と共に女性の抵抗する声が聞こえた。


レウスは辺りを見渡し、誰の気配もないことを確認して、そっと扉のドアを開けて中を覗き込んだ。


そして、部屋の中には耐え難い光景が視界に飛び込んできた。


そこには何人かのエルフの女性の姿があった。


エルフたちは両手を拘束され、兵士たちの慰み物として扱われていたのだ。


抵抗していたエルフは殴りつけられ、複数人の兵士に抑え込まれ無理やり犯されていた。

他は抵抗を諦め、物のように兵士たちのものを受け入れるしかなかった。


その目にはすでに光はなく、生きる意味すら失っているような瞳だった。


レウスは言葉を失った。


再び己の底からドス黒い感情が湧き上がっていくるのを感じた。


そして、気づくと扉の取手に手をかけていた。

レウスは音もなく扉を開くとゆっくりと中に入った。


兵士たちは行為に夢中でレウスの存在には気づいていない。


レウスが中へ足を踏み入れると、扉はゆっくりと閉じていった。

お忙しい中お時間を割いていただきありがとうございます!


いかがでしたでしょうか?


もし面白いと思っていただけたらブックマークとページ下部にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎の評価をお願いします。


作者のやる気につながります!

読者の方が満足できるお話を書けるように頑張ります。

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