表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
性悪勇者と困ったさん  作者: もちごめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/14

8

クジラ屋の前に着いて早速、中へ入る。


「いらっしゃい......え? 勇者様?」


「はい、勇者です」


優しそうな微笑みをたたえて返事をする。


そうして個室風呂付きの部屋へと案内されていると少年が駆け寄ってきた。


「勇者様! お願い助けて! お金ならこれ全部あげるから父ちゃんを助けて」


結構な量の銅貨が入った袋を差し出して泣きそうである。ゼーロンは腰を落として少年と向き合う。


「その依頼頼まれた。君がくれた対価に見合う仕事をしよう。何があったの?」


「と、父ちゃんと森に行って、それで大きい狼が出て、それで、父ちゃんが逃げろって叫んで、俺だけ......逃げてきた」


「森だな。どっち?」


一緒に宿を出る。


マリアも一応宿から出るが話す2人の背中を見つめていた。声を掛ける事すら出来ずに。


「あっち」


指を指された方へ真っ直ぐに駆け出すゼーロン。


「うわぁ」


まるで風の様に凄いスピードで走る姿は、正に勇者。少年は勇者を憧れの眼差しで見送った。


気配を探りながら森の中を駆け回る。

少し進んだ所でスコップを振り回す少年の父親らしき人物を見つけた。

確かに大きなサイズの個体である。真っ黒な体毛は光を受けて艶々だ。高く売れそうだなと頭の片隅で考えながら、剣を片手に狼に斬りかかる。


一刀両断。頭と胴体を切離し倒してしまった。木に吊るして血抜きをしておく。


父親らしき人物はペタリと座り込んでしまうものの、何度もお礼を述べている。


「ありがとうございます。ありがとうございます。この、ご恩は一生忘れません」


「いえ、礼には及びません。そもそも、これは貴方の息子さんからの救出依頼でしたし対価も頂いたのでね」


「ありがとうございます」


「立てますか?」


手を差し出すゼーロン。


「申し訳ない。腰が抜けてしまって」


危なげなく肩を貸して父親を息子の元へと連れて行く。泣きながら抱き合う2人を見届けてゼーロンは、また森へと戻った。


木に吊るしておいた物を下ろして抱える。頭も拾って街に戻る。


ギルドに入って受付へ。


「これの買取りをお願いします」


「かしこまりました。良い毛並みですね。少々お待ち下さい」


受付の女性が奥に消えて、厳つい男性が出てくるとカウンターに駆け寄って来た。


「おお! これはブラックウルフ! 丁度良く討伐依頼が出てた物だ。凄い。傷は? 綺麗に切り落とされてる」


1人でブツブツ呟いて毛並みを確認していたが、受付の女性が戻ってくると肩を叩かれた。ハッとして顔を上げる。


「あ! これは失礼した......勇者様! いやはや、お恥ずかしい所を。こちらの個体、大きさから考えると討伐依頼が出ていたブラックウルフと見えます。大銀貨5枚の買取りとさせて頂きます」


「分かりました」


大銀貨を受け取って宿に向かう。

良い稼ぎになったなと考えつつ中に入るとマリアが所在なさげに立っていた。何だコイツと思ったが声は掛けずに宿屋の主人に話しかけた。


「申し訳ありませんが部屋へ案内して欲しい」


「勿論でございます。こちらへどうぞ」


すると当然の様に着いてきたマリアを見て主人が声を掛けて来た。


「あ! てっきり1人部屋かと...2人部屋へ、ご案内致します」


「いや! 1人部屋です。ちょっと待ってて下さい」


主人から離れてマリアを見つめる。


「僕は1人で、ゆっくり休みたいんだよ。そもそもの話、部屋は別々だと話していたと思っていたけど......頭大丈夫?」


「ぁ、ぃぇ、あの......すみません。わ、忘れてました」


「はい! じゃあ受付に行きなよ」


ゆっくりと後ろを向いてトボトボと戻るマリア。


「すみません。中断させて」


「いえいえ、良いのですか? 別々で」


「問題無いです。元々、部屋は別にしようと話していたので。あの人が、それを忘れていたみたいですね」


はぁ成る程と納得したらしい主人の案内で部屋に着いた。


部屋に入ると早速荷物を下ろし風呂に湯を張っておく。


汚い体でソファやベッドに腰掛けるのは憚られ湯が溜まるまで立つ事に。





「あのー、それで部屋を借りられるのですよね?」


只々、入口付近に立っているだけのマリアに思わず声を掛ける主人。


「あ、あ、あ、はい」


声を掛けられてから、やっとカウンターまで近寄ってきた。

大丈夫か、この人。と思ったが態度には出さずに接客を続ける主人。


「どういった部屋をご希望で?」


「あ、えー......お、お風呂......あの」


「ん? 勇者様と同様の物に致しますか?」


「あ、はい」


ぶんぶんと頭を振って頷くマリアに引きながらも部屋へと案内する。


「こちらへどうぞ」


先程の勇者の態度を思い出し部屋は離した方が得策だろうと考え、反対側へと連れて行く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ