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性悪勇者と困ったさん  作者: もちごめ


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6

鞄の中を漁り、干し肉と固いビスケットを見つけたマリア。

美味しそうな香りを嗅ぎながら塩っ辛い干し肉をかじる。


固いし塩っ辛いし喉が渇く。街を出る時に水を補給するのを忘れていた為に水分を取れない。


「あ、あ、あのすみません」


「あ?」


「あ、み、水を貰えませんか?」


ゼーロンはじっとマリアを見つめる。


「さっき川横切ったよね? まだ暗くなり始めだ。今水汲みに行けば、道中もさ飲めるでしょ。何で直ぐ人に頼る選択肢を取るの」


軽蔑を含んだ視線を受けて俯く。


「だから! 今水汲みに行かないと次の街までの道中、困るのはお荷物さんだよ?」


というか正直、自分が使っている物をマリアに使われたくない気持ちが大きいのだ。


ようやっと立ち上がるマリア。


「甘ったれが」


ボソリと溢れた小さな呟きはマリアにも届いてビクリと肩を揺らした。


涙が出てくるが水が無いのは困る。川まで急いだ。


しかし、そこはさすがの鈍臭いマリアである。見事に道に迷った。


「あ、あ、あれ? え?」


泣きながら彷徨い歩くも、辺りはどんどん暗くなってきた。


パキッガサガサガサッ

明らかに何かがこちらに向かって来ている音に動きを止めるマリア。


デビルベアーだ。大きな体に真っ赤な体毛の熊の魔物である。


「ひぎゃぁぁああ」


叫び声を上げて慌てて走り出すマリア。どう走ってきたのか分からないが焚き火が目に付いた。きっと戻ってこれたと安堵しつつ、あの勇者は助けてくれるだろうかと不安も抱く。

しかし、あそこを目指す他無いのだ。自分が助かるためには勇者に頑張って貰うしかない。


荒い息遣いが直ぐ側まで迫ってきていて必死で足を動かし続ける。もう少しだ。


テントから出てきた勇者と目が合う。

明らかに面倒そうに顔を歪ませた。


手を軽く揺らすとブンッと大きな剣が突然現れた。それを手に取り、こちらに向かって走り出す。


マリアを通り過ぎた瞬間、耳が壊れると思う程の咆哮だ。デビルベアーが死んだのだろう。


ようやっと足を止めて後ろを振り向く。一太刀で殺してしまったのか。腹部に大きな傷が付いて血が噴き出している。


勇者は背を向けているが離れていても彼が怒っている雰囲気を感じ取ったマリア。


慌てて弁明を話し出す。


「も、も、申し訳ありません。あ、あ、道に迷っていたら、く、熊が。ごめんなさい、!ごめんなさい」


頭を深く下げたまま謝罪を繰り返す。


「最悪だよ。次の街まで風呂に入れないのに」


思いの外、側から声が返ってきて肩を震わせる。顔を上げる事が出来ずに数分経った。


そっと顔を上げて周りを確認する。既にテントに戻ったらしい。勇者の姿は見えなかった。


水を汲む事も出来ずに全力疾走したマリア。喉がカラカラである。

何か飲みたい。さすがにゼーロンの造ったスープに手を出すのは、はばかられる。怒られるのは必須だ。

死んでいるデビルベアーが目に付いた。血を飲むしかない。


恐る恐る近付いて革袋に少しだけ血をいれる。試しに少しだけ飲んでみると、何だか美味しい。仄かに甘みを感じる。

持っていた小刀で新たに傷口をつけると革袋がパンパンになる程入れた。

満足そうに頷いて焚き火の側に戻る。


魔物の血には魔力が宿る。だから美味しく感じるのだ。


ゼーロンが立てたテントをそっと覗く。


「何?」


「あ、いえ、あの、私も入れて貰えませんか?」


「あのさぁ......そのデカイ鞄には野営のセットが入ってるよね? 自分の使いなよ」


「ひ、ひ、1人では、出来ません」


ゼーロンは上を見上げてから大きな溜め息を溢してマリアに視線を戻す。


「自分1人で準備出来るようにならないと困るんじゃないの? 何で、まだ明るかった時点で周りをウロウロとついて回るだけだったの? 何で野営のセットを持っているのに自分でやろうと思わなかったの?」


「え? あ、いえ、あの......」


だんまりのまま数分経った。ゼーロンはまた大きな溜め息を溢す。


「僕のテントには入れない。まずは1人でどうにかしなよ。夜は冷えるから頑張ってねー」


舌打ちが聞こえて思わず固まるマリア。


数分経った後ようやっと動きだす。何かこんな感じだったなとゼーロンのやり方を思い出しながら頑張って立てる。


風が吹くたびに大きく揺れて不安が残るものの背に腹は代えられない。大人しく中に眠る為の準備を進めて目を閉じた。


ゼーロンは苛立ちながらもチラリと外の様子を見る。グラグラと揺れながらも何とかテントの素養を見せている不完全な出来を眺めた。


「ま、頑張ったみたいだね」


今よりも、ちょっと強い風が吹けば潰れるだろうがそれも経験だ。もしそれで怪我をしても自業自得である。

あまり関わりたくないゼーロンは鼻を鳴らして布団に潜り込み眠りに落ちた。

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