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「も、もうお止め下さい。明日にしましょう」
やる気に任せて癒しの力を使いまくり、また足元がふらつき始めていたのだ。司祭が慌てて止めに入らなければ倒れていた事だろう。
「ぁ、あ、す......すみません」
ハッとして謝るマリア。
「謝る必要はありませんよ? 聖女様の体調が心配でお止めしたのですから」
「ぁ.....はぁ、すみません。ぁ、ぃぇ...ぁ、有難うございます」
「いえいえ此方こそ有り難い限りです」
ニコニコと和やかな司祭様の雰囲気に萎縮していたマリアも肩の力が抜ける。
「あ、明日も来ます」
「はい、お待ちしております」
暫く歩いて、また大銀貨5枚入った袋を見て何となく掲げてみる。引ったくられた。
「あ! ちょっ、え?」
スタタターとあっと言う間に居なくなった泥棒。
金を盗まれ呆然と立ち尽くすマリア。
金が盗まれる所を偶然見てしまったゼーロン。ここの街、治安が良い筈なのにどういう事だと驚く。何となく窓から外を見ていた所マリアの不幸な場面が目に入ったのである。
そのまま立ち尽くしていたが、大銀貨がまだ4枚宿に置いてある事を思い出して歩き出したマリア。大丈夫、今日泊まる分はあるのだからと自分を励まし一泊大銀貨3枚だから充分に間に合う事に安堵した。
何だかお荷物さんは運が無さそうだと少しだけ同情したゼーロン。しかし、関わりたく無い為そっと窓から離れる。
今は明日の段取りを考える事の方が重要なのだ。
トボトボと少し肩を落として宿屋へと戻って来たマリア。部屋から大銀貨3枚を持ち出し、しっかりと追加分を支払う。
何故掲げてしまったのだと自分の愚かさを呪いながら、湯船に浸かった。
「わ、私は......全くもう」
ぶくぶくと沈み込んで自己嫌悪にひたる。
嫌な気分のまま上がり、ベッドへと向かった。ダイブしようとした所でノックが聞こえて止まる。
カチャリと扉を開けて見れば、とても美味しそうなサンドイッチが見えた。
「ご、豪華だ」
惜しげも無く肉や野菜、玉子等が挟ままれている具沢山なサンドイッチで落ち込んでいた気持ちは吹っ飛ぶ。
「な、なんか...いっ一杯ある」
食堂で沢山食べるシスター服の女は宿の中で有名になって来ていたのである。それはコックの耳にも届いていた。美味しそうに沢山食べると聞いて特別に気を利かせてくれたのである。
いそいそと中へ運びベッドに腰掛けてムシャムシャと食べた。
「ぉお! 美味しい」
あっと言う間に平らげ満足気に腹をポンと叩く。
「はぁ幸せ」
ふと、お金を入れている袋に目が行く。そうだった後大銀貨1枚しか無かったと思い出す。明日も頑張って稼ぐぞと気合いを入れて立ち上がった拍子に膝に乗せたままだった皿を落とす。
無情にも響く割れる音。あーと頭を抱えるマリア。
「どっどうして......あ、謝らないと」
怪我をしない様に気を付けて割れた皿を拾い集め、受付の場所に向かう。
「ぁっ、ぁ...すっすみません」
「はいはい、どうされましたー?」
「こっこれ......ごめんなさい、割ってしまって」
勢いのままに頭を下げて謝罪するマリア。
「怪我はごさいませんか?」
「ぇ?......ぁっ、ぁの無いです」
「それは何よりです。そうですねーお皿1枚、大銀貨1枚程の価格で仕入れておりますので頂ければ幸いでございます」
今日でも明日でも頂ければ問題ございませんと、にこやかに告げられコクコク頷くマリア。
「あ、あの、今持ってきます」
部屋へと小走りで戻り袋を引っ掴んで受付へと戻って来た。
「こちらを」
「はい確かに有難うございます」
ペコペコと頭を下げつつ部屋に戻る。
「よっ良かった、お...怒られなかった」
胸を撫で下ろすと安心したせいか急に眠くなって来たマリア。ヨロヨロとベッドに向かい潜り込む。
今朝見つけた手紙を何度も見て口元が緩むゼーロン。
「明日が楽しみだ」
夕食のサンドイッチはボリュームがあって満足出来る物だったし、美味しかった。
今日買ったスーツを取り出して鏡の前で自分に当てて見る。
「髪型、どうしよう。やっぱり前髪は上げてオールバックか? いや流すだけにしたら良いかな......」
スーツは汚さない様にまた仕舞う。そうして鏡の前に戻って来て延々と髪型を変えて見た。
ようやっと前髪は軽く上げて流す事に決まった。
「お店も良さそうな具合だったし......明日は完璧にしないとな」
いよいよ告白するのだと胸が高鳴る。色良い返事が貰えると良いが。
窓を見ればもう外は暗闇の中だ。電気を消して幸せな思いのままにベッドに横たわり目を閉じる。良い夢が見れそうだと口角は自然と上がった。
きっと2人は結ばれる。可愛い、あの子と恋人かぁ。




