13
朝、マリアは気持ちよく起きた。
何だか今日も良い日になりそうだなとフフフと笑いが漏れる。
「あ、病気の人、な、治せると良いなぁ」
上機嫌のままに部屋を出て食堂に向かう。美味しそうな香りに包まれて更に気分は上向いた。
にんにくがガツンと効いたチキンのソテーに葉野菜のサラダを取り、サイコロステーキも取り、ポテトサラダも取り、サンドイッチも取り、白パンも取り、大きなハードパンも取って、スープはコーンスープを並々と汲んだ。
こぼれおちそうに見えるものの上手い事運んでみせるマリア。席に着いて周りからの視線に気付く。
え? 私? 何で見られてるの?
軽くパニックになりながら目の前に置かれた大量の食べ物を次々と平らげていったマリア。
細身で可愛い系のシスター服を着た女。
とても食べ切れる量ではないだろうと思われていたが綺麗に平らげてしまった。宿泊客達は心底驚いた。あんなに細い体の何処に消えていったのだろう。
ゼーロンは少し離れた席から異常な食欲のマリアを遠巻きに観察していた。
あれはどういう事なのだろう。特に気にしていなかったが、そう言えば食は細い方だった筈。やはり魔力汚染が始まっているのだろうか? それにしては目が爛々としている事と異常な食欲の他には何の変化も無さそうである。
はてな? と首を傾げながら美味しい料理を味わって食べた。今日は生憎クリスティは仕事なので、ゆっくり観光でもしようと思っている。ギルドに寄って高額依頼が出ていないか見るのでも良い。
綺麗なイヤリングだ。赤い宝石がキラキラと光を反射させている。
クリスティに贈りたいが、さすがに重いだろうか。しかし、自分の色を纏わせたいと思ってしまう。
それにあの綺麗な金髪にも似合うと思うのだ。
うーんと唸っていると老齢の紳士がやって来た。
「勇者様では?」
「はい、そうですが......」
「レディへのプレゼントですかな?」
「えぇ、まぁ」
少し決まりが悪い思いをしながら会話をするゼーロン。
「ふむ......勇者様も1人の男という訳ですな。この街の人ですかな?」
何で、こんな踏み込んでくる? 記者か何かか?
「さぁ、どうでしょうね?」
笑って誤魔化すゼーロン。
「あぁ、これは失礼を。私、店長でして」
さっと優雅な、お辞儀をされる。
「店長さんでしたか。此方こそ、おかしな態度を」
軽く頭を下げ合う2人。
「それで、恋人に贈るのですかな?」
「まだ恋人にはなっていなくて......」
「成る程、お相手様からも好意を感じているのなら贈り物は喜ばしいものかと思われます」
「余り高い物だと嫌がられませんか?」
「失礼ですが、ご年齢を伺っても?」
2人共21歳だと告げると、店長はふむふむと頷いた。
「ブレスレットか髪留め等でも宜しいかと少しお待ち下さい。幾つか奥から持って参りましょう」
そう言って離れる店長を見送る。
ゼーロンは店長に対応して貰えて幸運だと内心喜んだ。
トレイを持って戻って来た店長。
「これなんてどうでしょうか」
1つ1つ丁寧に説明してくれる。何処の山で採れた物を使ったのか。魔力を込める事が出来て魔法を使えない物でも魔力が切れるまでは魔法を行使出来る物だとか。
既に保護魔法が込められていて使い捨てになってしまうが一度だけ、どんな攻撃も防いでくれる代物。
浄化の魔法が込められていて、どんな毒物も効かなくなる物。
ゼーロンはお揃いのブレスレットにする事に決めた。
金色の少し太めのC型のバングルで小さな宝石が幾つか埋め込まれた物にする。自分には緑の宝石が埋め込まれた物を。クリスティには赤い宝石が埋め込まれた物にした。
魔力が込められていて魔法を使えない者でも使える物にしたのである。
クリスティの身を案じたのだ。
ゼーロンは本来、魔剣士である。剣に魔法を纏わせて戦うのが得意なのだ。滅多に無いが魔力切れをおこした時の予備とするのも良いだろう。
それにクリスティは平民だから魔法は使えないだろうと踏んでの事である。
このブレスレットの魔力が切れたら自分がまた補充すれば良い。
「喜んでくれると良いのですが」
「嬉しいと思いますぞ。ここは治安が良い街です。アクセサリーを着けていても狙われる事等、滅多にありませんから。安心して下さい」
購入してから今度はギルドに向かった。
「お! 勇者様! 良い所へ」
いかつい男に声を掛けられ近付く。
「ブラックウルフとは違いますが、また大きな魔物が出まして。お手を煩わせてしまいますが倒して頂きたい」
「構いませんよ。お力になれる様に頑張ります」
にこやかに対応するゼーロン。
「有り難いです! 今回はこのデビルベアーなので宜しくお願いします」
「依頼承りました」
善は急げと森へ向かうゼーロン。
ストック切れました。ゆっくり更新になります。
面白いなと思ったら
ポチッと押して頂けると嬉しいです。




