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「聖女様! ささっ此方へどうぞ」
いそいそと案内する司祭に連れられて奥へと進む。
部屋に入ると何とも言えない匂いが充満していた。
ベッドに力無く横たわる人々。マリアでも可哀想だと思う有り様である。
「もしかしたら聖女様なら治せるかもしれません。宜しくお願いします」
深々と頭を下げられて、フンスと気合いを入れ1つのベッドに近寄る。
「あ、あの.......やってみます」
どうか、ここに居る人を1人でも助ける事が出来ますように。全力でヒールを掛ける。
しばらく延々と掛け続けていると顔色が良くなって来た。司祭は、その様子を見て涙ぐむ。ここに居る人達は死を待つだけとなっていて無力感に苛まれていたのだ。
思わず聖女を遣わせてくれた神様に祈りを捧げてしまう。
やはり膨大な魔力による力業でやってのけたマリア。
さすがは熊の力ねと嬉しくなる。
この調子で1人また1人と治していく。怪我の時よりも時間が掛かるし何だか疲労感がとてつもない。半ば、やけくそ気味に没頭する。ここで出来なかったなんて格好悪いだろうと。
「おお! 流石は聖女様です」
しかしながら、いかに膨大な魔力であっても無限ではない。7、8人を治療した所で魔力は尽きかけていた。
「聖女様もう充分に頑張って頂きました。後は明日にして下さい。足もふらついていて、このままお任せするなんて出来ません」
手を司祭に握られて、そう言われてしまえば確かに自分はまだ街に滞在するのだったと思い出す。
「あ、そ、そうですね。あ、明日にします」
「これだけ尽力して頂いた事心から感謝致します」
またも深々と頭を下げられ慌てるマリア。
「え、いや、こ、これも仕事ですから」
「それでも私共の力では到底及ばない物でした。本当に有難うございます」
何度も頭を下げられながら教会を後にする。また貰えた大銀貨5枚を振り回しながら宿屋へと戻った。
しっかりと宿代を追加分支払う。
ドヤ顔を決められた主人は首を傾げつつも愛想良くお金を受け取った。
部屋に入りボフンとベッドにダイブする。
「凄い、私って凄い」
フフフと笑いが漏れ出る。病ですら治してしまった事実に舞い上がるマリア。
ギルドから出て森に向かったゼーロン。
デビルベアーは街に近い森に出没していたという話しから手を叩いて大きな音を出しながら歩き回る。
耳が良い為、物音にした方向に向けて突進してくる性質を使って誘き出そうとしているのだ。
暫くそうしているとガサガサッと明らかに何かが此方に向かって来る音が聞こえてくる。
「来たな」
スッと剣を構えて待ち望む。
ガァァアアッと此方を威嚇しながら立ち上がったそれは想像以上に大きい個体だ。
「デカイけど、それだけだね」
タッと走り出し一撃で首を切り落としてしまった。
「これ運ぶのかぁ」
これも依頼を請負った自分の仕事だと割り切り重いデビルベアーの死体をズルズルと引き摺って行く。
街の入口から近い事もあって関所に着くと2人居た門番さんの内1人が駆け寄って来た。
「さすがは勇者様ですね。お手伝い致します」
「有り難い、助かります」
2人でズルズル引き摺ってギルドに向かう。
「もう退治されたのですか?」
驚いて出て来た、いかつい男。
「あぁ、私も手伝いましょう。まさか1日で終わらせてしまうなんて、有難うございます」
「いえいえ、これも勇者の務めでしょうから」
無償ではやらないけどねと内心で付け足す。
「この大きさでしたら直接解体屋に持って行った方が良いと思いますので、此方にお願いします」
指を指された方向へ向かう。
「これはまたデカイなぁ」
解体屋のおっちゃんは運び込まれたデビルベアーのサイズに驚いた。
これまで見た事の無い大きさに俄然やる気に満ちる。
ギルドに戻って来た、いかつい男とゼーロン。
「いやぁ本当に有難うございます。此方が報酬です」
デビルベアーは基本的に数人掛かりで倒すのが通常だ。稀に見るサイズである事も考慮される。
しかも今回はギルドからの正式な依頼という事もあって金貨3枚が支払われる事に。
「また何かありましたら、お声がけください」
「まだ数日いらっしゃるのですか? 滞在して下さるのであれば、また依頼が発生するかもしれませんので! その時に!」
ニコニコと笑顔で手を振りつつギルドから出るゼーロン。久しぶりに金貨来たなと胸が弾む。手堅くギルドで貯金に回した。ギルドカードがあればギルドに預ける事が出来るのである。
クリスティとのデートの時に良いレストランに行こうかなと考えて口元が緩む。そこで告白しようと決意した。
クリスティも自分に好意を抱いているようだしと考えて街を見渡す。
ディナーよりは次の日の仕事の事も考えてランチの方が良いだろう。ドレスを贈ろう、それから似合う靴も。
自ら選んで貰うよりは直接店に一緒に行って似合う物を店員に見繕って貰う方が良いかもしれない。




