12
マリアの力に司祭は大喜びだ。
「これだけの力があるのであれば、病も治せるのではないですか? やってみましょう!」
さすがに今日は帰って頂いて明日取り組みましょうかと言われて素直に頷くマリア。
マリアは頑張った。ブラックウルフにより重体になっていた人々、約30人を全て治してみせたのである。
「じゃあ、これは何て書いてある? 読めますか?」
「これはジョリー街に居る......こ、恋人」
「はい、良いですね。次に行きましょうか......これは?」
「あぁ......愛してい...ます?」
じわじわと顔に熱が集中していくクリスティ。そんな彼女の様子に口元が緩むゼーロン。実に楽しそうな2人である。
クリスティは、どんどん文字を覚えた。恋の力も手伝って、それはもうメキメキと。
今日1日で恋文に限ってなら辿々しくも書けるし読めるようにもなった。急成長である。
コンコンと扉をノックされて窓を見る。もう夕方近くになっていた。
「あ、ごめん。楽しくて時間が経っている事に気付けなかった。後は明日にまわそう」
「そんな事は、私も楽しかったから」
話しながら扉を開ければ出来立ての料理が美味しそうな香りを運んでくる。
「結構、ボリュームあるね。どうする? 2人で食べちゃう?」
言外に、もっと一緒に居たいと忍ばせる。
「本当だね。ゼーロンさんが良いなら、一緒に食べたい」
「じゃあ一緒に食べようか」
微笑み合って部屋に戻った。
マリアは鼻歌まじりに宿へと戻る。私って凄いじゃん。やれば出来る子だったんだ。
大銀貨5枚入った袋を嬉しくて振り回しながら歩いていると転んだ。
ズシャァアと派手に音を立てて。これは膝から血が出てるかもなと思いながら立ち上がり土を払い落とす。大銀貨が散らばってしまっているのを見て慌てて拾い集めた。
「全くもう」
プリプリと怒るマリア。転んだのは自分のせいなのだが。
宿に着き部屋に入って早速、膝の確認をする。怪我等無い。擦り傷1つ見当たらない。私って意外と丈夫なのねと1人頷くマリア。そう言えば転んだ時も全然痛く無かったなと思い出す。
コンコンとノックを受けて扉を開けた。出来立ての料理を見て喜ぶ、今日は温かい料理が食べられると。
「美味しい!」
クラムチャウダーは具沢山で満足感があるし、大きなハンバーグは肉汁がたっぷり出て来て凄く美味しい。
昨日の柔らかなパンとは違って固めのハードパンだ。噛み締めて食べると小麦の香りがして食べ応えも充分である。
クラムチャウダーに浸しながら食べるのも美味しい。
全て食べ終わり満足するマリア。
お腹を満たした後は、やはりお風呂に入りたいと思い立つ。
念入りにお湯が出る方か確認して蛇口を捻った。今日は暖かい風呂に浸かるのが目標である。
湯船にお湯が溜まっていく様子を見続ける。見ていないと溢れさせそうだからだ。
マリアは司祭から褒められまくった今日を思い起こす。何だかんだ駄目な子を脱却出来そうだと満足気に1人頷いた。
これなら近い内に、あの勇者ゼーロンにすら凄い奴だと認めさせる事が出来るんじゃない? と笑う。
ビシャッとお湯が掛かった事で現実に戻って来る。溢れさせている事に気付いて慌てて止めた。
服を脱ぎ捨てて浴室へと戻って来る。手早く洗ってしまい湯船に浸かった。
「やっと......極楽だぁ」
実に久しぶりに全身お風呂に浸かれたマリア。デビルベアーの血を飲んでからというもの何だか良い事が起き始めていると感じる。
少しだけポジティブ思考になったのかもしれない。
お風呂から上がってベッドに潜り込む。
「良い日だった」
ニコニコと笑顔で眠りについた。
「じゃあ、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
ヒラヒラと手を振って別れる2人。
扉をパタンと閉める。
「どうしよう。結婚までいったら」
1人呟き嬉しくて顔が崩れるゼーロン。
勇者も恋する、ただの青年なのだ。クリスティにメロメロである。
夢見心地のままに風呂の準備をして、ベッドを整えた。ふと向き合って座れる様に動かしたテーブルとソファが目に入る。
「頭も良い上に素直な良い子だったな」
嬉しくて笑いが漏れる。どストライクの可愛い子。
もしかしたら、このまま付き合いが始まって正式な恋人になるかもしれない。
知らず鼻歌が出てくる。
風呂の湯を止めて体を洗い、ゆっくりと湯舟に浸かった。
「結婚かぁ。子供も欲しいな」
妄想ばかりが先走る。
自分は1人っ子で親の愛情は一身に受けていたと思う。だが両親が家を空けている時間は正直寂しかった。
やはり2人は居るだろう。子供が3歳になるまではクリスティに家に居て貰いたい。その分、自分が頑張れば良いのだから問題は無い。
赤ちゃん、可愛いだろうなぁ。一杯抱っこしたい。
この日は長風呂になり、のぼせたゼーロン。




