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食べ終わった2人は立ち上がり食器を片付ける。
振り返ると黙々と山盛りの料理を食べ続けるマリアが目に入った。
「うわっ」
「何かありましたか?」
ゼーロンの見ている方向に視線を向ける。そこには可愛らしい女性がいた。細過ぎる様にも見える体型ではあるが大きな目に小振りな鼻。髪はフワフワとした薄い茶髪、毛先にいくにつれて金色になるグラデーションが美しい。過保護欲を刺激するタイプだ。
「忘れていた。ちょっと待っていて下さい」
そう告げた後その女性の元へ向かうゼーロン。どういう関係なのだろうか。
「お荷物さん。この街に10日は滞在するからそのつもりで」
それだけ言うとふいっと居なくなった。
あー成る程、美女と離れがたいのだなと内心でニヤニヤするマリア。
「お待たせしました」
「あの、どういう関係なのですか?」
「あぁ、今回の旅の目的は魔王の封印が取れたとか何とかで退治するか封印するかしないといけないんだよ。そこに教会が次期聖女をねじ込んできたって訳で。正直、1人で向かった方が早く終わると思いますがね」
僕の意見等、悲しい事にまるごと無視でしたよと力無く笑うゼーロン。
「そうなのですね」
次期聖女という肩書きを聞いたせいかクリスティの気分は沈む。やはり私では、この方に釣り合わない。しかし、既に恋してしまっている今離れがたいのだ。
「それじゃあ、僕の借りている部屋で勉強しましょうか」
手を差し出され思わず握ってしまうクリスティ。ゼーロンは嬉しそうに笑って歩き出す。
「貴女を残して街を出る事を考えるだけで何だか腹が立ちますよ」
「え?」
「Sランクの冒険者は他にも居ますよ? それに次期聖女ではなくて他にも居るSランクの冒険者達と数人でパーティーを組んで戦う方が合理的です」
教会に配慮したんだか何だか知りませんけどねと締め括られた言葉に成る程と頷く。
「ゼーロンさんの話を聞いて、確かにと思いました。どうして次期聖女という戦力にはならない人を選んだのでしょうね? 癒しの力は戦いに向かないのに」
「正直に言ってしまえば良い迷惑ですよ......レディこちらへ」
部屋の前に着いて扉を開け恭しくエスコートするゼーロン。
「お嬢様扱いですね。何だかムズムズします」
恥じらいつつ笑うクリスティ。
1人部屋の為ソファは1つしかない。
ベッドの近くまでソファやテーブルを動かして向かい合わせに座れるようにした。
「ふぅ、じゃあ始めましょうか」
ニコリと笑みをたたえてペンを取る。
真面目に2人は取り組む。手紙のやり取りで仲を深める為に。
周囲が驚く量を見事食べ切ったマリア。いやぁ美味しかったなぁと腹を撫でて一息つく。水を飲んで立ち上がり、ちゃんと食器を返した。
ここでマリアは、はたと思い出す個室風呂付きの部屋は一泊大銀貨3枚であることを。どうする手持ちが足りない。10日も滞在する事になっている今この街の教会に行かざるおえない。
なんてことだ。頭を抱える。苦手意識のある癒しの力、ヒールを使うしかないだろう。
はぁと深い溜め息を溢してトボトボと教会へと出向く。
「おや! なんと! 次期聖女様!」
スタタターと小走りで駆け寄ってくる司祭に面食らうマリア。
「あっあ......お、おはようございます」
「おはようございます。今日は良い日だ。何せ次期聖女様が来られたのですから。して、何用でございましょう?」
「い、い、癒しの力を使うので......ろ、路銀を頂きたいです」
司祭は腕を突き上げて喜んだ。
「ぉお! 次期聖女様に癒しの力を使って頂けるとは! なんと! 有り難いことですか」
ささっ、どうぞこちらへと案内されるままに着いていく。鼻をつく、すえた匂いで眉間に皺がよりそうになり慌てて表情を作った。こんな所で悪い印象を抱かれたら貰えるお金が減るかもしれない。
見るからに死にそうな人達が沢山居た。
「な、何で、こっこんなに人が......」
無意識に溢れた言葉を司祭が拾って返事を返す。
「ブラックウルフのせいです。どうやら昨日、討伐されたようですが。見境なく森に入って来た人々を襲っていました。討伐されて本当に良かった」
次期聖女様の腕の見せ所ですよ! と肩を軽く叩かれて愛想笑いを浮かべるマリア。
渋々ではあったが1人の女性に近付いてヒールを掛ける。一発それも時間を掛けずに出来てしまった。
「.......? あれ?」
自分がやった事だと分かってはいるが、どうして一発で出来てしまったのだと心底驚く。
「おー! さすがは次期聖女様です! 次の方もお願いします」
司祭からの熱烈な視線を受けコクコクと頷き次々と治していくマリア。
凄い、私って凄いと内心で自分を褒め称える。
デビルベアーの血を飲んだ事により内部保有の魔力量が格段に増えたのである。下手くそなヒールでも異常な量の魔力量によって補われた結果だ。




