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とうとう、来てしまった……この日が。
今日は、レベッカの屋敷で開かれるお茶会の日だ。アイリーンは体裁を守る為に、出席する事にしたものの、やはり帰りたい。
「ユリウスったら、唇にクリームついてるわ。私が取ってあげる」
レベッカは、ユリウスの唇についたクリームを、ハンカチで拭っている。いつもなら、ユリウスも満更ではない様子だが、今日は何処か元気がない様に見えた。
「あ、ああ」
心ここに在らず、といった様に見える。
幼馴染であり愛しのレベッカがいるというのに、どうしたというのか……?アイリーンは、不思議そうな顔で2人を眺めていた。
もしかしたら食べ過ぎて、お腹でも壊したのかも知れない。何しろ、先程からレベッカは屋敷のシェフの自慢をしながら「これは、ユリウスの為に作らせたのよ」とか「これ、絶対にユリウスの好みだわ」とか言いながら、ユリウスに次から次に食べさせていた。
流石に食べさせ過ぎでは?と引いたが、極力関わりたくないので見ない事にした。
それにしても、今日はまた錚々たる顔触れだ。アイリーンは、お茶会の出席者達を改めて見る。
公爵令息に侯爵令息、伯爵令息に……なんで男性ばかりなのだろうか。女性は主催者であるレベッカとアイリーンだけしかいない。
そう言えば、違和感があったけど……アイリーンはテーブルに並べられた、沢山のお菓子をまじまじと見遣る。
明らかに出席者に対して、数が多過ぎる……。これは多分、女性陣は皆、急遽欠席した事を物語っている。
レベッカって……友達、いないのね。
多分、建前の付き合いはあっても、嫌われているのだろう。まあ、これじゃあ、当たり前だが。
アイリーンはレベッカに、哀れみの目を向けた。まあ、かく言う自分も普段は引き篭もりをしているので、友人と呼べる人はほぼいないに等しい。
にしても、これなら私も欠席でよかったのでは?とため息が出る。
「遅くなって、すまない」
お茶会が始まり暫く経った頃、そう声が聞こえた。アイリーンや他の者達も声の方向へと振り返る。
「まあ、パトリス、遅いわ」
レベッカは、立ち上がるとパトリスの元へと駆け寄る。無論、ユリウスを引っ張りながら。
「すまない、野暮用があってさ」
レベッカ、ユリウス、パトリスの3人はそのまま雑談を始めた。アイリーンはげんなりした顔をして、早く終わらないかな、この無意味な時間……と思った。
パトリス。この国の第2王子であり、ユリウスの幼馴染でかなり仲が良いらしい。アイリーンは、聞いただけなので実際には知らない。無論レベッカとは従兄妹であり、仲も良い。
これ、私いる必要ありますか?と聞きたい。寧ろ、他の出席者も必要ありませんよね?と言いたい。
「ねぇ、アイリーン嬢。あの噂は本当なんですか?」
不意に、近くに座る男性に声を掛けられた。確か、彼は侯爵令息の……名前は忘れた。
「噂、ですか……」
「私はあの日、生憎舞踏会には参加出来なかったのですが、レベッカ嬢とユリウス殿が人目を憚る事なくいちゃついていた、とか」
その通りです。何も弁解の余地もない程、いちゃついてましたよ。なんて、流石に言えない。
「あー……まあ、その、どうでしょうね」
アイリーンは、笑顔を引きつらせながら曖昧に答えた。
「アイリーン嬢っ!」
「へっ⁈」
侯爵令息は、急にアイリーンの手を握ると距離を縮めた、物理的に。
ち、近い‼︎アイリーンは、思わず後ろに仰け反る。
「実は私は、以前社交界で何度か貴女をお見かけしているのです。その時から私はずっと、貴女をお慕いしておりました」
急な告白に、アイリーンは呆然とした。驚き過ぎて動けない。
「愛らしい笑顔に、愛らしい瞳、愛らしい髪に、愛らしい唇」
愛らしい髪?って何だろう……とアイリーンは呆然とする中思った。
「一目見て、私は貴女に心奪われ、虜になってしまいました。もし、ユリウス殿と婚約破棄されるのであれば、是非私の婚約者になって頂きたいのです」




