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ある日、アイリーンの元にお茶会の招待状が届いた。差出人は、まさかの……。
「レベッカ、様」
差出人の名を見た瞬間、手が勝手に招待状をゴミ箱へ入れようとしていた。あり得ない。何が愉しくて、レベッカの屋敷で開かれるお茶会に出席しなければならないのか。そして、当然ユリウスも出席するのは目に見えている。故に、疲労しに行くようなものだ。
取り敢えず、出席するようにしておいて、当日に体調が優れないと言って、欠席する事にしようか……。
いや、だめだ。それはまずいかも知れない。貴族の間では、お茶会などの社交の場を欠席するのに、大体は体調不良が使われ、特に令嬢達がよくその手を使っている。その殆どが、建前であり、嘘だと誰もが知っている。仮に本当に体調不良だとしても、そう見られる事がない故に、皆無理してでも参加する。
貴族って本当に面倒だと、こういう時に実感する。
もし、私がお茶会を欠席したら、様々な憶測付きの噂が飛び交うだろう。そうでなくとも、まだ先日の舞踏会の噂が飛び交っているのに……拍車をかけたくない。
波風立てるのは好ましくない。
アイリーンは、悩みながらも招待状の返事を書き、侍女に手渡した。
アイリーンはため息を吐き、本を開いた。ユリウスと婚約する前は、平和だったなぁとぼんやりと思う。両親は女である自分には余り関心がないが、別に蔑ろにされている訳ではない。
アイリーンには、兄が1人いる。今は他国に留学しており、暫く会っていないが……。兄は優秀で見た目もいい。公爵家の長子で、何れ兄が、この公爵家を継ぐ故、両親は兄をとても可愛がっている。
その事に関して、アイリーンは特に不満はない。どの家も、跡継ぎを特別扱いする事は別段珍しい事ではないからだ。
アイリーンがまだ幼い頃から、両親はよく兄だけを連れて出かけて行った。それ故、アイリーンは屋敷の中で1人で過ごす時間が多く、気付けば本ばかり読んでいた。
だが両親は兎も角、兄は優しい人で、妹であるアイリーンの事を可愛がってくれた。
「兄様、暫く会ってないなぁ」
きっと驚くだろう。アイリーンが婚約したと知ったら。祝福はしてはくれそうだが、アイリーンの方が複雑だ。何しろ、相手はユリウスだ。全然嬉しくない。寧ろ婚約破棄したいくらいなのに。そんな人を大切な兄に紹介などしたくない。
ユリウスじゃなくて……もっと素敵な人なら……。脳裏にある人が浮かび上がる。
「なんでシェルト様が⁈」
アイリーンは思わず立ち上がり、テーブルにぶつかった。テーブルの上にあるお茶が溢れ、小さな悲鳴を上げると、すぐ様焦った侍女が飛んできて片してくれる。
最近おかしい。シェルトの事ばかり考えてしまう。シェルトの事を考えると、ドキドキして落ち着かない。
「私、やっぱり何かの病なのかしら……」
今までない感覚に、アイリーンは戸惑い困惑していた。最近では、自分は何か重い病にでもかかってしまったのでは⁈と思う事も暫しある。
「はぁ……もう、読書はいいや。寝よう」
「アイリーン様?お昼寝ですか?」
侍女は不思議そうな顔で、アイリーンを見遣る。それもそうだろう。今はまだ、太陽も真上にあり、真昼間だ。普通、こんな時間に寝る者などいない。いるとすれば赤子や病人、怠け者くらいだろう。
アイリーンは、私は何かの病なんです……と思いながらベッドに横になると、眠りについた。暫くして、寝息が聞こえてくる。侍女はその様子に、困ったように笑うとお辞儀をして部屋を後にする。
それから、数日後。アイリーンは、レベッカの屋敷で開かれるお茶会に出席をした。




