第8話「ミユちゃん」
本日、1話目です。
あと18時頃に投稿します!
『しくしくしく……』
さめざめと泣く赤髪の美少女。
革の胸あてに冒険者の衣装と、ミユちゃんで間違いないのだが、活発そうな印象は失せて──どころか、ちょっと透けている。
なんなら、膝を抱えたミユちゃん越しに地面が見えるほどだ。
これってあれだよなー。
「え~っと、ミユちゃん?」
『しくしくしく……』
うわーお、無視されたー。
それとも、あれか?
この世界では『しくしくしく』が「HELLO♪」みたいな感じだったりする?
……しないか。しないね。
『ううう、おうちに帰りたい……』
えー。
喋れるやん……。
しかも、結構グサッとくることをピンポイントで言うなー。
「そのー。「私」の声は聞こえるかなー?」
『…………。……し、しくしくしく』
ガン無視やん。
そんで一瞬、間があったから絶対聞こえてるよね?
「まぁいいや。そのー……悪いんだけど、君がいるとさ。ほら、なんか不自然じゃん?」
『…………しくしくしくしくしくしくしく』
ちっ。
コイツわざとやってやがるな。
しかし、どーすんだよ、これ。
せっかく部屋をレイアウトしたのに、半透明のミユちゃんが宝箱の傍にいたら違和感どころの話じゃねーよ。
なんだよ、ミユちゃん付きミミックとか。
誰も騙されてくれねーよ。
「とにかくさー。どっか行ってくれないかなー」
『……どこにもいけないよー』
えー。
「なんでー?」
『体が……身体がないの、私の身体がどこにもないのー』
あー。
まー。
うーん。
……ちょ、ちょっとだけなら残ってるよ?
美味しいからゆっくり食べようと思って──……。
『体が、身体無くて寒いの! 寒くて、痛くて痛くて痛くてぇぇえええ!』
──うわぉ!!
こっち、むいたミユちゃんの顔、こっわ!!
ホラー映画張りに顔面が真っ青で、眼窩の部分が真っ黒──そんで血だらけ!!
……でも、咀嚼したから、しょうがないじゃん。よく噛んで食べろっていうしさー。
あ、美味しかったよ。
『痛いよー。痛いよー。お兄ぃ、お兄ぃぃい……助けてよー』
「あー。うん。……なんかゴメン」
お兄ちゃんはもう食べた。
だって、『建築』を頑張ってるとお腹すいてさー。
うん。
ゴメン。
……あ、骨ならあるけどいる?
「つーか君、あれだよね? ゴーストってやつ?」
『ご、ごーすと……? わからない。気が付いたらここにいたの──』
そりゃまぁーね。
マジでいつの間にかいたもん。びっくりしたわ。
ってか、これあれか?
冒険者食べると、全部ゴースト化するとかいうクソゲー仕様か?!
いやだぞ、この部屋いっぱいのゴーストとか!
とくにお兄ちゃんのほうは、なんかメッチャ怒ってたからやだ!
『ねぇ、お兄は?……お兄はどこ──お兄ぃに会いたい』
「えー……」
食べちゃったよ。
もう、一日二日早く言ってくれないからー。その時なら半分くらいは残ってた思うけど。
「あ。ほ、骨ならあるけど」
『ほ、骨? ど、どうして?』
いや、食べたから!!
お兄ちゃんも美味しかったよ!! でも、ボカぁ、ミユちゃんが一番だよ。
「んー。見る? ストレージに入ってるけど……」
『お兄ぃ! お兄に会う!』
や、会うつーか、
ある意味再会っつーか。
……お腹の中で会わなかった?
まぁ、いいや。
「はい。多分、全部そろって────……えぇ?」
ぺっ。
ストレージから取り出したのは、ゆっくりとお腹のなかで消化したお兄ちゃん。
彼の場合はほら、完全体だったからほぼ丸飲みしたのん。
そしたら、おかげで見事な骨格標本になったよ──なったんだけど……。
『お兄! お兄ぃぃ!』
まるっとした白骨にしがみつくミユちゃん。
しかし、そのミユちゃんは当然骨には縋りつけずスカッ! と、掠るのみ。
いや、それどころか──おや? お兄ちゃんの様子が……。
──ウギギギギ……!
「わーお、動いた」
こりゃービックリ。
お兄ちゃん大復活…………じゃないな、これ。
『お、お兄ぃ? お兄?! ど、どこいくのお兄ぃぃいいいい!』
あー。
こりゃあれだわ。……スキル『凝視』
《スケルトンLv1》
「やっぱり……。完全にモンスター化してるわ」
どういう理屈かは知らない。
ただ、「私」の中で消化されたお兄ちゃんは、完全な骨になり、そのままモンスター化してしまったらしい。
Lvがついているのがその証拠だ。
だって、冒険者連中は、凝視してもLv見えないもん。
ついでに言えば、
《ミユちゃんLv1》
うん。
ミユちゃんはミユちゃんという存在になってしまったらしい。
ゴーストって出ないところをみるに、この凝視というスキルは「私」の認識によるところが多いのかもしれない。
しかし、参ったな。
快適(?)なミミックライフに、妙な隣人ができてしまったよ……。
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