第3話「飾りつけ」
──殺風景にもほどがあんだろ!
5×5m程度の空間で、
こんな風景しかなかったら発狂するぞ?
一日と持たない自信があるぞ!
つーか、この冒険者もよくこんな部屋にポツンとある宝箱開けようと思ったな?!
いかにも怪しいじゃん……。
普通、もっと警戒しない?
ミミックだと思わなかったにしても、どうみても不自然じゃん!
「あ、でもそういうダンジョンなのかな?」
こう、なんていうかこう──宝箱が不自然にあってもおかしくないような?
……うーん、考えてもわからん。
なにより、ここから動けないからわからん。
くっそ、なんで足がないかなー。
魔物なら魔物で足くらいあってもよくね?
というか生物としておかしくね?!
まぁ、足があったらあったで怖いけどな!
……なんだよ、足があって走って襲って来る宝箱とか。
──こわっ、自分で言ってて夢に見そうだわ!
「だとすると、結局『待ち』一択なんだろうけどなー」
それじゃ暇だなー。
やることないなー。
誰か来ないかなー。
…………。
……。
「──ちょっと飾り付けでもするか」
じーっとしてたら気が狂いそう。
そして、この殺風景な部屋に耐えられない。
とはいっても現状、この部屋にあるのはマイボディのほか、転がっている松明とかだけ。
……あ、これいいじゃん!
「松明あるだけでも、なんかそれっぽいな」
多分、冒険者さんが照明として持ち込んだものなんだろうけど、結構長く燃焼するタイプらしい。
獣脂が染み込んでいるのか、持ち手の木の部分はそのままで、先端部分に巻かれた布のようなものがしぶとく燃えている。
「とりあえずこれを飾ってみようかな?」
壁がいいかな?
それとも部屋のど真ん中?
って、
そもそも、手がないから飾りつけもできねーよ。
「く、もうちょい……いや、もうちょいもなにもないんだけど、頑張れば動くかも──……って動くかー!」
くっそー!
飾りつけどころじゃねーわ!
一歩たりとも動かねーわ!
「あ、でも、舌が伸びるぞ」
頑張ってたら舌が出た。
しかも結構長い。
「ほほう。出る出る、でーる」
ミミックなだけあって消化器官とか口周りはしっかりしているみたいだな。
……そう言えば、どこにあるか知らんけど目もあるし。
「──ならこれで、こうして……こう」
もうちょい!
もうちょい伸びるかー。
ぐぐーと舌を伸ばすと結構どころか、思った以上に伸びる。
なのでその舌を器用に動かして松明を掴むと、部屋の壁にそっと立てかけてみる。
……おー。やればできるもんだな。
できれば松明用の置き台座も欲しかったけど、そんな小洒落たものはないので、これで我慢。
だけど、これだけでも全然違うなー。
「あー……、やっぱ火ッていいよねー」
パチパチと燃える火を見てるだけで落ち着くわー。
人間って火を見ると安心できるようにできてるよね……人間じゃないけど。
しかし、改めて見ると殺風景な部屋だわ。
こんなんで騙されて入ってくる奴いるかなー?
宝箱以外に何もない部屋だし、
他にあると言えば、壁際の松明と散らばる装備と、ちぎれた右手と両足──そして、大量の血痕。
…………。
……。
「いや、無理だろ!!」
何やってんだよ!
今気づいたよ!
むしろ、なんで今まで気づかなかったんだよ!
「こんな部屋入ってくる奴いるかよ」
血だらけで、死体が転がってる部屋とか怪しいどころじゃないぞ?!
オマケにその前に宝箱って、100%ミミックじゃん!
仮にミミックがいなくても、絶対この宝箱が怪しい、ってなるじゃん!
「ぐぉぉー……まずいまずいまずい!」
そんなに人がすぐに来るとは思えないけど、これは片づけないとマズイー!
松明飾って悦に入ってる場合じゃなかったわ!
「と、とりあえず、端に避けとくか?」
なんかこう──暗がりだし目立たないよね。
…………いや、目立つな!
どう見ても、手と足が転がってる段階で目立つわ!
くそっ。じゃあどうする?
「あ、でもこれ甘いかも──……ん? うまい?」
舌で死体の欠片をズルズル引きずっているうちに、血がしたたりなんか美味しい。
肉もまだまだ新鮮だし──これいけるかも。
「もぐもぐ……。あ、いけるいける!」
全然いける!
まだまだ新鮮だわー。
そりゃ仕留めたてだしね。
当たり前だけど、鮮度抜群だったわ。そもそもお残しはダメだし、のこりも食べちゃおう。
「んー。デリ~~~シャス! この弾力がたまらんー」
もーぐもぐもぐ。
あー、ミミックやっててよかったー。
「あとはこの足と血痕をなんとかしないとな。とりあえず、舐めとくか」
長い舌を伸ばして、血痕をなるべく丁寧になめとりつつ、時々残った足を齧る。
……しかし、あれだな。
血の味のする地面って、
なんか、みじめな気分になるね…………美味しんだけどさ。
屈辱の味ってや────……ん?
ピィ~ン♪
その瞬間、奇妙な感覚が脳裏を駆け抜けた。
これは五感のひとつ触覚だろうか?
腕も足もないのに触覚というのも変な気分だが、その分、宝箱全体が敏感になっているのか、接地している部分がわずかな振動を捕えた。
「これは…………足音?」
間違いない。
この断続的に地面を叩くような感触は足音だ。それも…………ふ、複数?!
「げ、うげげげ!」
な、何ちゅうタイミングで!
まだ血痕残ってるぞ?
人間か何か知らんけど、こんな現場見られたらマズイのは言うまでもない。
そもそも、こちとらミミックさんは待ち伏せしてナンボ!
──その待ち伏せがばれたらどうしようもないのだ!
「ぐぉぉぉ! しかもこっちにくる! なんで?──もっと遠回りしてこいよ!」
「(お兄ぃ! みてあれ!)」
「(あぁ、明かりが見えるな。……誰かいるみたいだ)」
……じーざす!!
これのせいかー!!
そりゃそうだわ!
真っ暗なダンジョン(?)の中でこんな不自然な明かりがついてたら誰でも不審に感じるわな!!
それでなくても誰かいると思うし──……くっ! どうする?
「今消すか?……いや、それだと余計に怪しいな」
近づく人影に気づいて明かりを消すとか不自然にもほどがある。
少なくとも、二名の人間はすでに明かりに気づいてこっちにまっすぐ向かってきている。ならばできることは──……。
「で、できるだけ痕跡を消すこと!」
いけ!
私の舌よ!!
地面をべろんべろんと舐めて、血を消しされー!!
……あ、結構甘い。
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