第2話「ミミック転生」
いやーびっくりした。
心の底からビックリしました。
……だって自我が芽生えたらミミックですよミミック。
知ってます? ミミックって。
あの某RPGで出てくるようなモンスターですよ。
宝箱に偽装していて、知らずに開けると襲い掛かってくるあのイヤ~~~なモンスターです。
あ、自分のことがイヤとか言うと、ちょっと中二病っぽいというかとかメタ発言っぽいというか……そういうの、ないです?
…………ないですか。そうですか。
──ま、まぁ、それはさておき、
さっき自我を得て気づいたのは自らの五感と、自らの存在です。
最初はよくわかっていなかったのですが、記憶の整理というか、情報の更新というか、
とにかく頭のなかでようやく「私」というものがどういうものかわかりましてね。
なのに、最初はレッツウォーキング!
……とか、ふざけたこといいましてね。へへ、すみません。
しかし、こうしてミミックとして生まれた(?)からには立派なミミックライフを送るべきじゃないかなと、そう思うわけですよ。
だけど改めて考えると、
ミミックライフってなんだ? と思い、さっき一人で吹き出してしまいました。
……だって、ミミックって動けないんですよ?
それに人生も何もあったもんじゃないでしょう?
まぁ、そもそも人じゃないんですけどねー。
──あ、そうそう!!
人と言えば、ずっと言い忘れてたんですけど、ほら!
さっき、自我が目覚めたじゃないですか! そして、味覚とかを感じたわけなんですけどね、どうやらその原因というのがこれなわけでして──。
こ れ
《冒険者の死骸──右足》
……いやー!
すごくないですこれ!
多分、『鑑定能力』というか、洋ゲーでいうところのフォーカス機能だと思うんですけどね、こう──動けない代わりに、視界に入ったものの情報が分かるんですよ!
それで目の前に転がっていたこのおみ足をチェックしたら上記の表示が出たわけです。
あと、周りにも色々落ちてますね。
「え~っと、どれどれー」
大量の血痕に、《錆びた短剣》《獣脂の松明》《冒険者の左足》《冒険者の右手》──……ほうほう。
どうやら、おみ足とおて手の持ち主さんは冒険者さんだったようですねー。
イメージ的には宝箱をあけた瞬間、バクッ! とイっちゃった感じかな? それで箱からはみ出していた両足と片手だけが、こう──ブシュッ! って感じ?
やー……。可愛そうに。
行方不明の身体はきっと「私」の胃袋の中──……いや、胃袋あるのか知りませんけどね。
しかし、美味かったわー。
冒険者ってあんなに美味しいんですねー。
なんというか、こう──得も言われぬ甘美な味……もう一回食べたいなー、ジュルリ。
…………はっ!
いかんいかん。食欲に負けるところでした。
そもそも、ミミックである以上動けないんですから、滅多にありつけないと思うんですよねー。
そんなにパクパク食べてたら、もっと前に自我が目覚めてたでしょうしね。
つまり、滅多にありつけない御馳走だと思いましょう。
それまでは空腹に耐えつつ、ひたすら冒険者を待つ──と…………ぐーぎゅるる。
「……いや、無理ゲーかよ!」
なに? なんなの?
なんか、いきなり腹減ってきたぞ?
さっき食べたばかりじゃないの?!
しかも、ミミックの身体に比して結構な量をさー!
わかる?
私、ふつー(?)の宝箱なのよ?!
そんな、棺桶か!! ってサイズじゃなくて、こう──……おじいさんが持って帰った「小さなつづら」とおばあさんが持って帰った「大きなつづら」の中間くらいなサイズなわけ!
──それがアンタ、バクバク食べといてさー。
もうお腹すくとかどーなってんの?
常に空腹でいろってこと? そういうこと?
「……くっそー。そうなると自我が芽生えるってのはいいことばかりじゃないなー」
この空腹を常に抱えて生きるとか、それもう地獄じゃん!
いや、空腹だから……あれだ。地獄手前の餓鬼じゃん!
「しかし、この空腹があるから、常に人を食べようとする衝動があるわけかー」
実際、なかったらミミックとして成立しないよな。この食人衝動。
自我がない頃もこうした空腹を抱えていたから、宝箱をあけた冒険者をパクッ! といったんだろうし──。
それに、空腹は最大のスパイスといいますかね。食べたときはメッチャ美味かったのは認める。
あの得も言われぬ甘美な──ジュルリ。
はっ!
また……!
どうも、この身体はすーぐ空腹に支配されてしまう。
それではいかん。次なる獲物が来るのに備えてできることをしなければ。
あと、単純に暇……。
だからできることとして、この部屋の観察くらいなんだけど──……ん-?
壁
天井
入口
「…………いや、そんだけかよ!」
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