第17話「Bランクパーティ(※)」
「あう゛う゛う゛う゛ー……」
暗闇のダンジョンをさまようゾンビが一匹。
フラフラとした足取りでどこを目指すでもなかったが、生者の気配を感じたのか猛然とダッシュ!
それでもだいぶ遅いのだが、筋肉のタガが外れ、脳のリミッターすら取り払ったゾンビというのは存外早いのだ。
そして、当然ながら怪力で──……なおかつ彼女はゾンビに成りたて。
筋肉の半分は溶けていたが本家本元のゾンビよりは新鮮なため、かなり強力な攻撃力をもっていた。
「ぐるぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛!」
しかし、今回は……というか、彼女にとっての初戦は相手が悪すぎた。
前方に立ちふさがっていたのは、まさに、むくつけき男たち。それも、彼女の新鮮ゾンビパワーを遥かに凌駕しそうなほど筋骨隆々で、とにかくその拳が──パァァァン!!
「ぬ! 固いな」
「いや、一撃でやってるじゃないですかー」
筋肉マッチョAが自らの拳の感触に首をかしげると、
その背後から錫杖を構えた筋肉マッチョBがヘラヘラと笑う。
職業的には、Aが格闘家。
そしてBがモンク──……というか破戒僧だろうか? 格闘家は言わずと知れた近接のプロで、破戒僧は近接と回復を使いこなすオールラウンダーらしい。
「あー! さっきのゾンビってまさか、行方不明の子じゃー」
「ぬぅ?……ゾンビぞ?」
高い声を出すのは、ひょこひょことマッチョAの肩によじ登ってきた身の丈1m20程度の小さな子供……に見えるホビットの少女だった。
彼女も2人とお揃いの格闘家衣装を着ているが、どう見ても格闘家にはみえない。実際、胴着の黒帯に差した小さな杖からして、おそらく魔法使いか何かだろう。
「だって、ほら──腐ってないし、そもそもここってゾンビって出たっけ?」
「あぁ、確かにアンデッドの話はあまり聞きませんね。……スケルトンの目撃例があるくらいでしょうか?」
マッチョBが開いているのかわからない目でつぶれた死体を検分するも、破壊が酷く、すぐにそれを諦めて小さく手をあわせる。……ちょっと雑だけど。
「──ふむ。しかるにこれは、ゾンビに成りたてと言った感じですな。妙な匂いですが、腐敗臭はありませんね」
「ねー。言ったでしょー。この子、ぜったい行方不明の子だってー」
ぴょんぴょんとマッチョAの肩で跳ねるホビットが実に可愛らしい。
「しかし、モンスターぞ? 人間がモンスター化するなど、いやアンデッドならありうるのか?」
「えぇ、残念ですが、アンデッド化はよくある現象です。……もっとも、新鮮なゾンビというのは初めて見ましたが」
そりゃそうだ、
ゾンビは腐った死体がなんらかの影響で起き上がったもので、死んですぐゾンビ化するなどありえない。
もしそんなのがあり得るなら戦場はゾンビだらけになるだろう。
「ふーむ。すると新種……いや、しかし、マールは行方不明の子といったな?」
「そそ。もっとも、ゲージが粉々にするから、わっかんなくっちゃったけどねー」
ゲージことマッチョAがマールと呼ばれた少女に頭を下げる。
「すまん」
「まぁまぁ、これで少し依頼内容に近づいたのではないですか?」
ふむ。
そう言う見方もできるか。
「ボルツはどう見る?……新エリアとやらが関係すると思うか?」
「あーあれですか?……あれは多分嘘ですよ」
なに?
ボルツことマッチョBの何気ない一言にゲージが驚く。
「嘘、だと? ギルドの正式依頼ぞ?」
「あはは。ゲージさんは相変わらず人がいい。……考えてもみてください。こんなショボいダンジョンの新エリアの調査に、わざわざよその街から冒険者を呼びますか?」
「それは確かに不可解だが──この街のCランクが行方不明と言うではないか。……それだけ脅威がある新エリアということだろう?」
でなければ、なんだというんだ?
「Cランクが行方不明になる新エリアねー。……では、お聞きしますが、どこの誰がそのCランクすら行方不明になる新エリアの存在を知ったので? また……な~んで、帰ってこないCランクがその新エリアに関わっていると?」
「あ」
「あー……たしかに」
まぁ、
論の穴をつくなら、もともと誰かしらが新エリアを発見し──そして、ギルドの報告して、Cランクに調査に行かせたというなら、まぁわからなくもない。
だが、新エリアの調査と銘打つのが少し腑に落ちない。
なぜなら、帰ってこないのだから、新エリアが原因とは言えない。
そして、一番の問題は、
その新エリアとやらがどこかすらわかっていないということ──正直、これだけで相当怪しい。
「ね? つまりはそう言うことです。職員もあわよくば行方不明者を探して──……というか遺体か遺品回収を頼みたいみたいでしたが。拙僧としては、実はそれが本当の目的なのではないかと思っていますよ」
「ふーむ。遺体の回収か。……それならば、是非もなし」
冒険者の互助はいうまでもない。
もっとも、ダンジョンの中は法が届かないので、どこまでそれが通用するのかは別の話だが──。
「いえいえ、それはそれです。……それよりも依頼の根幹は、なんだと思います?」
「ぬ?…………そうか、なぜ遺体が回収できないのか、か」
そして、
「あー。その遺体を誰が作ったか、ってことねー」
つまり、行方不明者を作り出す原因だ。
「そういうことです。まー、しかして、こうして手掛かりがでてきたということは──」
「……近いって、ことだね」
マールと呼ばれたホビットの少女が表情を硬くして、マッチョAことゲージの頭の後ろにしがみついて杖を構える。
「後方はオッケ!」
「はは、たのみますよ──それでは、失礼して」
ムンッ!
ボルツと呼ばれた破戒僧は、纏っていた法衣をブワサッ! 広げると、腰に差していた装飾過多の短剣を抜き出した。
……否、それは装飾ではない──文言だ。東方のある地域で唱えられる呪文のようなものがびっしりと堀入れられた呪物に近い短刀なのだ。
それを逆手に持ち、大上段に構えると──いつもの糸目をクワッ! と見開きッ、
身体を腰ごと落とし込む形で、その短剣を一気に地面に突き立てた……!!
バッキーーーーーーーーン!!
キーーーーーーーーーーン!
キーーーーーーーーーーンン……!
「──見えた!! 9時の方向、亡霊1、そして得体の知れない気配が1!」
「心得た! 皆の衆、援護を頼むぞ!」
「はーい、支援魔法いっくよー!」
そうしてこうして、淡い光に包まれた3人が猛然とダッシュするのであった。
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