第18話「強襲」
ィィーーーーーーン……!
ィィィーーーーーンン……!
「ん? なんだこれ?」
ミユちゃんにあーだこーだとダメ出しされながらも、部屋の死体を片づけて清掃をすませ、
再度、錬金部屋を配置していたのだが、突如足元から振動が伝わってくる。
『え?……うわ! な、なになに? 何これ?』
おや?
ミユちゃんもなにか感じたらしい。
ということは気のせいではないか?
しかし、足音の察知には特に──……んー?
ログからの「錬金部屋」の再配置をパパッと済ませると、今度こそ、その違和感に集中しようとしたまさにその瞬間だ。
ピィーーーーーン♪
「うわ!」
突如、地面に接した部分から振動を感知する足音センサーが脳裏に響く。
「こ、これは──……うげげ!」
な、なんてこった、
一直線にこっちに向かって来る奴がいるぞ?!
しかも、迷いのない動きだ。
ここに何かあると確信した者のそれに違いない。
「くそっ」
なぜかは知らないが、複数の気配が急速に接近中だ。この動き……こーれは、やな予感がするぞ。
「え〜っと──武器武器、武器は、っと」
念のため、体内ストレージを確認。
ドロップした装備と飛び道具を確認し、装填っ!
そして、攪乱用の死体を腹の中でシェイクしてー。
『ちょ! その音やめて!』
「うっさい、今緊急事態!」
『緊急も何も──あーあー、アタシの死体もそうやってバラバラに……』
あれは不可抗力!
今は緊急事態なの──いいから黙って!
『なーによ、珍しく慌てちゃ%&%’&$%’──』
う!
これは──……ミユちゃんバグセンサー?!
意識のある人間が近くに来るとバグるミユちゃんなのだが、
こうなるってことは、かなり至近距離に人間がいるということ。
「ちぃ! なんでこんなに、はえーんだよ!」
いつもならもっと余裕があるってのに……!
ハッキリ言って、ミユちゃんバグセンサーなんかより足音感知のほうが精度もいいし、範囲も広いのだが、ひとつだけ欠点がある。
それは音と振動を感知するということ。
そう、いかんせん、足音の感知。
つまり、何が妨害元があったり、障害物があったりすると多少の音なら減衰するし、伝わるまでにタイムラグもでる。
「そして、今このセンサーの微妙な狂いは、おそらくタイムラグのほうか?!」
ってことは、
足元を伝わる音よりも、かなり早い速度でなにかが一直線に────……ドッカーーーーーーン!!
「うわー!」
『──&%’&(’)』
ザザッ!
ついにミユちゃんの姿が掻き消える。
それと同時に部屋中に立ち込める、濛々たる土埃!
「げほげほっ!」
な、なんだぁ?
「ぬぅー……面妖な! ダンジョンに部屋とな?」
「おやおや。これはこれは──噂の宝物庫とやらですかな?」
「いんや、ハズレだねー。ここは墓場……っていうか、遺品のコレクションだよ」
ッ!?
い、いつの間に──!
入口の方に注視していたのに、なんと一瞬のうちに高速移動した3人組のパーティが土埃の向こう出現したのだ!
(……あれ? 3人?)
「私」の探知には3人の気配と出てるけど、2人しか見えないぞ?
……あ。いた。
なんかデッカイおっさんの頭にチッコイのが張り付いてるわ。
っていうか、こいつ等まさかノーモーションで柱をぶち抜いてきたのか?!
それはさすがに予想外──っていうか想定外!!
(ま、まずい……!)
距離と違和感のイニシアチブが失われた。
……こ、こうなったら!
「…………」
しーん。
「ふ〜む。見たところ何もいませんね。しかし、どうやらここがその現場で間違いなさそうです。いやはや、酷い死臭だ」
「死臭ー? んん? 特に匂わないけどー」
うむ。
匂いは基本消えてるはず。ステータスから使う『清掃』は優秀なのだ。完全ではないけどある程度の脱臭もできる。ポイント使うけどね。
「否ッ。ここだ──ここで間違いない。感じる、感じるぞー。無念の怨嗟の気配を」
いや。
多分それはミユちゃんだと思う。
「あはは。ゲージさん、さすがにそれは嘘でしょうに。拙僧くらいの修行を積まねば──……ふむ、ひーふーみー、13といったところですかな」
うお。
せ、正解……!
まさか、食べた人間の数を正確に言い当てるとは──。
「まー。遺品の数を見たらだいたいわかるよねー。っていうか敵はどこ? ボス部屋? 宝物庫なわけないしー」
「ふーむ。不在といったところか? しかし、おかしいな──さっきボルツは二体いると言わなんだか?」
げっ!
バレてるの!?
ミミックは基本、気配遮断能力が生まれつき優れているから、じっとしていたらまず気づかないのに──……!
「えぇ。間違いなくここですよ。遠くには他の気配もありましたが、もっとも強力で禍々しい気配はここにあります。──実際この遺品の数です。……そして、亡霊のほうですが、どうやら、こっちはかなり弱小なためか、生者に関与できるほどではない様子。おそらく生まれて間もないのでしょう」
げげー。
それも正解!
ミユちゃんはまだまだLv1で、生まれたて(?)です。
「ふむ。ならば、その亡者は犠牲者のものよの──それは捨て置け。……すると、ここにその気配の者が潜んでおるのだな?」
「十中八九」
うげー!
もうバレてるしー!
「僕、あの箱怪しいと思う……」
ドッキーン!
(こ、このくそガキゃ……一発で当ててんじゃねーよ)
つーか正解だよ!
「ふむ。あそこの他に隠れられるところなし──か」
「えぇ、アクティブ仏僧ソナーでも、あのあたりでした」
……アクティブ仏僧ソナー?!
──なにそれ?! かっこいい!
さっきの、バキーンっていう、探知みたいな奴かな?
(つーか、こいつ等か。ミユちゃんが言ってたCランク以上の捜索隊ってのは……)
いや、参ったな。
コイツら強いぞ。
ハッキリ言って、ジナちゃん達の比じゃねーわ。
これは、どうしたものか……。
「……しかるに──あの箱、ミミックでは?」
おっふ。
バレたー。




